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政府は「景気後退保険」をつくれ

  • ロバート・シラー

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2009年1月23日(金)

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 IMF(国際通貨基金)のオリビエ・ブランシャール調査局長ら数人のエコノミストは最近、「各国政府は『景気後退保険』を提供すべきだ」との論文を発表した。

 企業や個人がこの「景気後退保険」に加入し、定期的に保険料を払い、例えばGDP(国内総生産)成長率など、何らかの経済指標が一定水準以下になった場合に保険金を受け取る、というものだ。こうした保険があれば、企業や個人は現行の経済環境下における「過度の不確実性」に対処しやすくなるとブランシャール氏らは主張している。

 景気後退保険は実際、不確実性のリスクを減らすことで、景気のさらなる悪化を和らげる効果をもたらすかもしれない。結局のところ、目下直面している問題の本質は、経済活動の「マヒ状態」にあるからだ。先行きが見えにくい不確実な状況が、人々の支出を伴う決断をストップさせている。つまり、企業は生産活動の拡大をためらい、消費者は商品を買い控えている、というわけだ。

保険による「景気変動リスク」緩和が経済効果をもたらす

 つまり不確実性のリスクを減らせば、人々の支出意欲の減退という根本的な問題に対処できる。この保険によって、政府の景気刺激策の効果が増大する可能性があり、景気刺激策以上の経済効果が生み出される可能性すらある。

 さらに景気後退保険なら、財政政策と違い、政府の財政負担をなくす可能性もある。人々の支出に対する意欲を刺激することができれば、結果として景気後退の影響を心配する必要がなくなり、保険の対象となる景気後退のリスクそのものが予防できるからだ。

 政府なら、「規模の経済」を最大限に発揮する形で景気後退保険を提供できる。その点が、民間の保険会社ではなく、国の事業としてこの保険を推進すべき理由の1つだ。

 ブランシャール氏らは、「金融機関が、景気後退保険の購入を企業や個人に対する融資の条件に含めればよい」と言う。なぜなら、そうすることによって「信用市場の機能が向上し、信用市場の機能低下という、危機の根底にある深刻な問題により適切に対処できる」からだという。

GDPの変動や経済危機に市場の視点を導入

 さらに興味深い主張は、「景気後退保険を融資の条件とすることで、将来のGDPの変動や深刻な経済危機到来の可能性について、市場原理に基づいた視点が創出される」としている点だ。ただし、景気に関連する「市場」がどのように形成されるかまでは述べていない。

 実際、失業保険、年金保険、障害保険といった政府によるその他の景気後退に関連する保険について、市場は存在しない。その代わり、政府が単に保険料を設定して、強制的に徴収しているだけだ。

 ブランシャール氏らは、政府が景気後退保険を作って市場を創出せよ、とまで言っているわけではない。恐らく、政府が入札方式で保険料を決めることにより、市場価格が形成され得ると考えているのだろう。

 ただし市場で決める保険料は、政府が入札にかける保険金の額によって変動する。いくらまで政府が保険金を払うかという点は、入札という直接的な取引の場面だけでなく、潜在的な景気後退リスクを保険が軽減できるという間接的な場面でも、価格に影響を及ぼすためである。

 そういった意味で政府は、新しいリスク管理保険を創設するのに適した立場にあり、民間の保険会社が追随するうえでの手本ともなり得る。だが、IMFに対する代案として、民間の保険会社が提供する景気後退保険だってあり得るだろう。

米アシューラ・グループが目指す民間失業保険

 そうした保険は失業時における信用保険の形で小規模ながらも既に存在している。米アシューラ・グループ(本社:ニューヨーク)はこの4年間、誰でも加入できる、公の失業保険を補完する形の民間失業保険の確立に取り組んできた。アシューラの保険は米政府の失業保険制度を基準に審査を行うため、同社は審査業務にまで手を広げる必要はない。

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