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下落しないドルは米国凋落の予兆?

2009年2月24日(火)

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 ソ連の崩壊をかつて予言したことで知られるフランスの人口・人類学者エマニュエル・トッド氏は、『帝国以後』(藤原書店、原書は2002年9月刊)の中で、米国に投資してきた欧州、日本、その他の国の投資家たちが「早晩身ぐるみ剥がされることは間違いない」と指摘、「前代未聞の規模の証券パニックに続いてドルの崩壊が起こる」と警告していた。

 確かに「前代未聞の証券パニック」は実際その後発生し、多くの海外投資家は損害を受けた。トッド氏は、「人類史上最大の金融詐欺」を米国が行ったと批判している。ただし、それに続く「ドルの崩壊」は起きていない。むしろ現実に起きたことはドルの上昇である。

現在も高値圏に位置するドル

 米連邦準備理事会(FRB)が発表している貿易額に依拠した広範囲の名目ドルインデックスは、昨年8月に上昇を始め、現在も近年の高値圏に位置している。

FRB:名目ドル・インデックス

 昨年来の動きの背景を整理してみると、

 (1) 米国での資金運用で傷を負った投資家が、海外へ投資していた資金を本国に回帰させた

 (2) ドル建て証券化商品に大規模に投資してきた海外金融機関(特に欧州系)は、それらの損切り売却に困難を感じているため、巨額の短期ドル調達を継続している

 (3) 欧州や日本など海外経済の悪化が進み、相対的に米国経済の悪さが目立たなくなった

 (4) FRBによる米国債の大規模買い入れ(結果的にドル安を招き得る)の可能性がいったん低下したといった点などが考えられる。

 一方、トッド氏は別の観点から、下落しないドルに関し、(『環 vol.36 2009年冬号』(藤原書店)のインタビューで、次のような示唆に富む発言を行っている。

大丈夫だという信仰だけ

 「いまやアメリカ合衆国の国力で残っているものといったら、(アメリカが中心だと信じる)周りの諸国の信じたいという欲求だけ」

 「その意味では、このような文脈の中では、オバマの大統領立候補は、物事の進行を遅らせる役割を果たすかも知れません」

 トッド氏が言う「アメリカの経済覇権継続を信じたい」という「信仰」は、欧州などライバル経済の「敵失」も作用して当面持続されそうだ。

 今後のポイントは、バラク・オバマ政権が金融システム危機の克服に加え、雇用、税収を生み出す新産業の育成を実現できるかにある。それに失敗すれば、「信仰」に動揺が現れてくるだろう。

 外貨準備や決済通貨がドルからユーロへ一挙にシフトする確率は低いと思われるが、頼りにならない通貨が多いという状況もまた国際金融システムの不安定性につながりやすい。

 なお、トッド氏は、「長期的には欧州経済を楽観視している。欧州は米国と異なって技術力を持っているため、エネルギー資源を持つロシアと融合すれば『1つの安定性の極』になり得る」という趣旨の発言をしている。

金融システムの改革案には失望

 ティモシー・ガイトナー米財務長官が2月10日に発表した金融安定化策は、市場の失望を浴びてしまった。ガイトナー氏およびそのチームが当初策定していた不良債権処理方法は、仕組みが複雑で、費用が膨らんで納税者負担が大きくなる恐れがあることが発表の数日前に判明し、急遽方針を変えざるをえなくなった。ガイトナー長官は、後で大幅な修正を余儀なくされる具体案を無理に発表するよりも、曖昧な状態で会見に臨んで非難を受ける方がよいと判断したようだ(ワシントン・ポスト)。

「加藤出の日銀ウォッチ どこへ行く為替相場」のバックナンバー

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「下落しないドルは米国凋落の予兆?」の著者

加藤 出

加藤 出(かとう・いずる)

東短リサーチ社長

1965年生まれ。88年4月東京短資入社。2013年より現職。国内外の短期金融市場の現場の視線から金融政策を分析している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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