「データで斬る経済危機」

データで斬る経済危機

2009年3月5日(木)

米国の “過剰消費体質”は変わる?

上昇する貯蓄率と減少する貿易収支赤字が与える影響

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 世界的な経済危機の引き金となったサブプライムローン問題。この問題の根底には「米国の過剰消費体質があった」という話をしばしば耳にします。今回は、米国の過剰消費体質とは具体的にどんなものか、その体質は是正されるのか、また、是正されることによって、世界経済はどのような影響を受けるのかについて考えてみます。

クレジットカード保有「1人8.6枚」、残高5000ドル

 まず、米国人の消費行動の特徴を改めて、見てみましょう。

 米国の消費者は、驚くほど借金に頼った消費をしています。その象徴がクレジットカードです。米国では、商品やサービスの購入に際して、クレジットカードが重要な役割を持っています。米国人はクレジットカードを使って借金をしながら消費していると言っても過言ではありません。

 クレジットカードと一言で言っても、米国と日本とでは違いがあります。米国のクレジットカードとは、クレジットカードで購入した金額のうち、(一括払いもできますが)ある一定の金額を払えばよいという仕組みのものを指します。これは、日本の「リボルビング払い」を想像してみれば分かりやすいでしょう。一方、翌月一括払いで支払うカードは、米国ではクレジットカードの特別版である「チャージカード」といい、クレジットカードとは別のものを指します。

 米商務省センサス局の2006年の統計によると、何らかのクレジットカードを持っているのは1億7000万人。また、米国内で保有されているカードの枚数は合計14億8800万枚です。1人当たり8.6枚、20歳以上人口で割った場合は、1人当たり6.9枚のカードを保有しているということになります。また、カード保有者1人当たりで見たクレジット残高は5123.5ドル(約50万円)です。

 一方、日本の場合は、日本クレジット産業協会調べによると、2008年3月末で発行済みクレジットカードは3億859万枚。これを20歳以上の人口で割ると、1人当たりの保有枚数は3枚程度です。また、日本のクレジットカード会社によるアンケート調査()によれば、カード保有者の9割を超える人が1回払いで支払っています。

 このように、米国人が保有するクレジットカードの枚数やクレジット残高は、日本と比べるとかなり多いと言えます。

 ※三菱UFJニコス(2006年5月)「第14回クレジットカードについての消費者調査」

稼いだ以上のお金を消費に回す米国家計

 次に米国の家計部門の消費と貯蓄の動きを貯蓄率から見てみましょう。

 貯蓄率とは、家計部門が受け取る可処分所得に占める貯蓄の割合を見たものです。図1を見れば分かるように、米国家計の貯蓄率は、1980年代以降一貫して下がり続け、今回の金融危機の直前である2005〜06年にはほとんど「ゼロ」となっています。

 貯蓄とは可処分所得から消費を引いたものです。貯蓄率がゼロであるということは、貯蓄がゼロということであり、可処分所得と消費がほぼ等しいことです。可処分所得と消費との割合を「消費性向」と呼びますが、貯蓄率がゼロとは、消費性向が100%ということ。簡単に言えば、稼いだ所得をすべて使ってしまうということです。

 しかも、この統計は全家計の平均です。家計の中には貯蓄率がプラスの世帯も多いはずです。かなりの家計は、貯蓄率がマイナス(消費性向が100%以上)、つまり、稼いだ金額よりも消費する金額の方が多い状態であることになります。

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著者プロフィール

岡田 恵子(おかだ・けいこ)

法政大学大学院政策創造研究科教授。1990年京都大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。横浜市役所、内閣府、連合総合生活開発研究所などを経て2008年7月より現職。著書に『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』(日経BP社)がある。


このコラムについて

データで斬る経済危機

 2008年秋の“リーマンショック”を境に、世界経済は激変を続けています。「100年に1度」「世界恐慌の再来」「新自由主義の終焉」――。様々な言葉で語られるこの経済危機。ともすれば、情緒や感情だけで語られることもあります。

 新たな資本主義の姿を模索するには、これまでにない発想が必要なのも確かですが、まずは足元で何が起きているのかを、しっかりととらえておく必要があるでしょう。危機をチャンスに変える力は、危機の本質を見極め、その先を考える冷静な判断力があってこそ発揮されるはずです。

 このコラムでは、6人の執筆者が最新の経済指標を深く読み解き、経済危機の真実の姿を明らかにしていきます。数字を丹念に追うことで、これからの日本、そして世界経済の姿を読み解くヒントが見えてきます。

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