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金融危機と景気後退に苦しむ日本の金融機関

貸し渋りや金融システム不安懸念は払拭されたか

  • 村田 啓子

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2009年4月23日(木)

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 4月9日、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が2009年3月期の連結純利益予想を1800億円の利益から3900億円の損失へと下方修正しました。既に2008年4~12月期決算で三菱UFJFG、みずほFGの連結純利益が赤字となっていましたが、それに続く動きです。

 世界金融危機を招いたサブプライム問題の発端当初は日本の金融機関への影響は限定的と見られていました。しかし、その後の世界経済の後退と日本の実体経済への深刻な影響とも相まって、金融機関も厳しい状況に直面しています。

サブプライム関連商品保有による損失は大きくなかった

 なぜ当初日本への影響は限定的と見られていたかを数字で確認してみましょう。欧米における今回の危機における金融機関の損失額は、国際通貨基金(IMF)による推計(2009年1月)では米国で2兆2000億ドル、また、英国の中央銀行であるイングランド銀行による推計では英国で1226億ポンド(約2454億ドル)、ユーロ圏で7846億ユーロ(約1兆754億ドル)と推計されています(注1)。

 これら推計では、日本における損失額は公表していませんが、金融庁が2007年11月以降銀行等に対しサブプライム関連商品保有額等についてヒアリングを行い、その結果を公表しています(図1)。

(備考)金融庁資料より作成。「サブプライム関連商品」は、サブプライムローンを原資とするABS及びABSを原資産に含むCDOなどの金融商品。「証券化商品」にはCLD、CDO、RMBS、CMBSなどが含まれる。「大手行」には農林中金、シティバンク銀行等が含まれる。実質業務純利益の2007年9月は2007年3月期の数値。

 同資料によると、サブプライム関連商品保有額は、2007年9月時点で1.4兆円、12月時点で1.5兆円となっています。また、損失額を見ると、2008年12月における評価損失と実現損失を合計しても1兆円程度であり、証券化商品全体でも3.2兆円となっています。これらの数字はIMFやイングランド銀行の推計と単純比較はできないものの、欧米の損失額に比べればかなり小さいと言える金額です。

 また、実現損益は徐々に増加し2008年12月には0.9兆円まで増加していますが、同時に保有額は徐々に縮小し、2008年12月には0.6兆円に低下しました。これは、調査を開始した2007年9月における1.4兆円と比べ半分以下です。

組成・転売モデルを用いなかったことが幸い

 日本の銀行等はサブプライム関連証券化商品の価格下落等により損失を被ったことは事実ですが、その規模は欧米に比べ小さく、かつその処理も着実に進めつつあり、金融機関の収益や経営努力により吸収可能な範囲内にとどまっていると言えるでしょう。

 なお、米欧の金融機関と比べ日本の金融機関の損失が限定的となった背景として、米欧の金融機関が証券化商品の組成・転売の段階で多額の損失を発生させたのに対し、日本の金融機関は、サブプライム関連証券化商品を組成・転売するビジネスモデルは用いず、専ら投資家としての役割を担うにとどまっていたことを挙げることができます(日本銀行「金融システムレポート」2008年6月。組成・転売モデルについては、「サブプライム問題を経済学で考えると」をご参照ください)。

(注1) IMFは4月21日に「国際金融安定化報告(Global Financial Stability Report)」(2009年4月)を公表しました。本報告では欧州及び日本についても推計しており、2009年4月時点における損失額は米国が2.7兆ドルに増加したほか、欧州(ユーロ及び英国)が1.2兆ドル、日本は0.15兆ドル(うち証券化商品関連は170億ドル)と欧米に比べかなり小さくなっています。

コメント1件コメント/レビュー

とても勉強になりました。やはり日本の金融機関のダメージは株価低落によるバランスシート毀損によるものなのですね。貸出先の企業も同様な財務毀損を起こしたので、「失われた10年」と同じ財務デフレとなっている。銀行は、貸し渋りというより、貸すに貸せない状態に陥っている。こういうときには、日銀や政府の金融政策が必要だと思います。「経済対策」などという政局まみれの国会に惑わされることなく機動的な金融政策を展開してもらいたいものです。また、強欲市場原理主義者からの企業防衛のために、株持ち合いが復活したことも構造的な要因になっています。会社法や司法の法理をよく整備して、日本の市場の民主化を進めると同時に安全性を高めることも大事ではないでしょうか(2009/04/23)

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とても勉強になりました。やはり日本の金融機関のダメージは株価低落によるバランスシート毀損によるものなのですね。貸出先の企業も同様な財務毀損を起こしたので、「失われた10年」と同じ財務デフレとなっている。銀行は、貸し渋りというより、貸すに貸せない状態に陥っている。こういうときには、日銀や政府の金融政策が必要だと思います。「経済対策」などという政局まみれの国会に惑わされることなく機動的な金融政策を展開してもらいたいものです。また、強欲市場原理主義者からの企業防衛のために、株持ち合いが復活したことも構造的な要因になっています。会社法や司法の法理をよく整備して、日本の市場の民主化を進めると同時に安全性を高めることも大事ではないでしょうか(2009/04/23)

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