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持ち家政策が人間を猛獣化した

建築家・隈研吾氏と「バブル」と「公共投資」について議論する(上)

  • 竹森 俊平

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2009年5月20日(水)

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 今回の世界的な経済危機の背景に不動産のバブルがあったように、1990年代の日本の「失われた10年」につながる経済危機の背景にも不動産のバブルがあった。そう考えるなら、「建築」は経済危機と最も密接な関係を持つビジネスと言えるだろう。両者の関わりは2つの異なった局面で強化される。

 第1はバブルが進行し、民間の建築需要が「上げ潮」となる局面である。第2は、バブルが弾け、経済危機が深刻化する状態で、ケインズ的総需要拡大政策の後押しを受けて、官製による建築需要が「上げ潮」となる局面である。

 経済危機との関わりが強くなる局面では、芸術としての「建築」もステージの中央に立つことになる。実際、今回の対談で、筆者が強い印象を受けた話がある。

 バブル崩壊後のケインズ的建設需要が盛り上がる局面で、「ハコモノ」の花形供給者に祭り上げられた磯崎新、黒川紀章といった日本を代表する建築家に、その後、国内からの依頼が激減したという話である(※編集部注:明日掲載予定のシリーズの2回目で詳しく触れます)。

 政治家自身は、かつてケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』で提案したような「穴を掘ってそれをまた埋める」といった公共事業でも、ともかく雇用がつくれさえすれば満足なのだろうが、さすがにそれでは議会を通らないので、有名な建築家のネームバリューを「ハコモノ」につける必要性が生じてくるというわけである。

 「小泉改革」始動以来の「無駄な公共事業」への批判の高まりの中で、磯崎、黒川両氏も「共犯者」として槍玉に挙げられ、日本の市場からの締め出しを受けたのだろうが、どう考えてもこの問題の責任は、依頼者である国と地方自治体にある。両氏は政治家の身勝手な行動の「被害者」にしかすぎない。黒川紀章氏が死を前にして都知事選に立候補した行動は、それを考えて解釈すると何か痛ましく感じられる。

 公的な建造物の建設について、地域の素材、歴史を十分に取り込み、「地域からの文化の発信」を重視した行動を貫かれている点で、隈氏は、磯崎、黒川両氏の世代と一線を画しておられる。地域との真の意味での結びつきの弱さが、両氏の「悲劇」を生んだと認識されておられるのかもしれない。

 さらに、近年の低金利を背景にした都心での高層建築のラッシュについても、そのビジネスモデルとしての脆弱性を堂々と批判しておられる。「不動産バブル」というテーマを語るに最もふさわしい対談相手として、ご登場をいただいた。

*   *   *   *   *

(写真:大槻純一、以下同)

隈 研吾(くま・けんご)

1954年生まれ。79年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所設立。現在、東京大学教授。主な作品に「亀老山展望台」(公共建築賞優秀賞、「JCDデザイン賞'95」文化・公共施設部門最優秀賞受賞)、「森舞台/宮城県登米町伝統芸能伝承館」(日本建築学会賞受賞)、「馬頭町広重美術館」(村野藤吾賞、林野庁長官賞受賞)、「サントリー東京新社屋」「長崎県立美術館」「サントリー美術館」「ティファニー銀座」。著書に『反オブジェクト』(筑摩書房)『新・建築入門』(ちくま新書)『負ける建築』(岩波書店)『新・都市論TOKYO』(集英社新書)『自然な建築』(岩波新書)など。


竹森 隈さんの著書『負ける建築』を読んで、建築規制であるゾーニング法(注:その場所で建設できる建物の種別とボリュームとをあらかじめ設定し、制限する法制度のこと)という概念に衝撃を受けました。ここにこそ住宅バブルの原点があると感じたのです。

 つまり、この法律のおかげで供給が限定されるようになったからこそ、住宅の資産価値が保証されることになった。普通は需要が増えれば、供給も増えて価格が下がり、住宅投資は儲からなくなる。ところが、供給が限定されているので資産価値が生じる。

供給を制限しビルを資産に変えた

 アメリカの場合、摩天楼が上へ上へと伸びていく中で、あえて建築の供給の制限を導入した。それで収入を保証し、同時にビルを資産の対象に変えた。そう書かれておられますが、なるほどこれがすべての始まりだと思ったのです。こういう動きはアメリカでは1910年代、第1次大戦の前に起きたのですね。

 そうです。1910年代はまず形態規制だけで、斜線制限や高さ制限といったものから規制が始まりました。

 ニューヨークの場合、1910年代は敷地の4分の1の部分までならば、ビルはほぼ無限大に高くしてもよかったのです。エンパイアステートビルやクライスラービルができた大恐慌前後の時代には、まだこの4分の1規制が生きていました。実際にはそんなに細いビルを無限大に高くしていったとしても、階段とエレベーターで中身がなくなってしまいますから、自動的に床面積の限界は出てきます。その後出てくるのが、容積率という考え方です。

 敷地面積の500%、あるいは600%などと容積率を決め、それ以上の面積になる床を作ってはいけないという制限です。

コメント9件コメント/レビュー

単純に持家政策だけではバブルは発生しないと思います。また、城壁をもつ都市として発展した欧州の都市と、開拓地である米国、そもそも城壁都市という概念に乏しい日本という文化的背景の相異も考慮する必要があるのではないでしょうか。 人口の過剰流入とともに持家政策を浸透させることでバブルが発生したかのような論調ですが、日本、米国、そして欧州やドバイといった今回バブルがはじけた場所の共通点として「本人が居住するわけではない」住宅の購入が盛んになったことがあげられます。要するに転売狙いの投資購入です。思い返せばバブルん末期頃「数億円の超高級マンションが即刻完売、でも実際の居住者はなく夜も明かりはまばら」といったニュースを日本でも他の国でも見たと思います。投資用需要の急増によって、実際の居住用需要を上回る住宅供給、および実需と供給のミスマッチが生じていなければ、住宅・不動産価格の値崩れは発生しない、もしくは起きても実需に吸収され緩やかなものになるだろうと思われます。サブプライム問題も、将来の価格上昇と転売を狙って家を購入するというスタイルが大きな原因ではないでしょうか。(2009/05/21)

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単純に持家政策だけではバブルは発生しないと思います。また、城壁をもつ都市として発展した欧州の都市と、開拓地である米国、そもそも城壁都市という概念に乏しい日本という文化的背景の相異も考慮する必要があるのではないでしょうか。 人口の過剰流入とともに持家政策を浸透させることでバブルが発生したかのような論調ですが、日本、米国、そして欧州やドバイといった今回バブルがはじけた場所の共通点として「本人が居住するわけではない」住宅の購入が盛んになったことがあげられます。要するに転売狙いの投資購入です。思い返せばバブルん末期頃「数億円の超高級マンションが即刻完売、でも実際の居住者はなく夜も明かりはまばら」といったニュースを日本でも他の国でも見たと思います。投資用需要の急増によって、実際の居住用需要を上回る住宅供給、および実需と供給のミスマッチが生じていなければ、住宅・不動産価格の値崩れは発生しない、もしくは起きても実需に吸収され緩やかなものになるだろうと思われます。サブプライム問題も、将来の価格上昇と転売を狙って家を購入するというスタイルが大きな原因ではないでしょうか。(2009/05/21)

何度読んでも何がいいたいのかわからない。人が何か財産を手にすれば猛獣化するのは当たり前ではないか。都市はある程度コントロールしなければ人々が生きていく環境整備を効率よく出来ないではないか。土地バブルは東京一極集中という国土計画上の政策が前提に合ったことが大きな原因であったことは自明ではないか。しかもそういう集中が経済学的に望ましいとされる効率性や合理性を生み出し、日本がこんんな短期間で豊かな国になったのではないか。我々が得たものの評価無しに語っても意味がない。もちろん、バブル崩壊後により土地神話が終わったにもかかわらず、未だに持ち家政策で経済をコントロールしようとしている国はアフォーだが、他の方が言うように、あまりにも断片的で我田引水な議論だと思う。だから何なの?(2009/05/21)

赤信号みんなで渡れば怖くない。日本人の特徴を良く表していると思います。株も住宅も、良く解らない個人が買いだしたときは危険といいます。貸家も競争にさらされる前に身軽にしておきたいと思います。溜め込まずに使用するべきなのは、本当のお金持ちの方だと思うのですが、消費意欲がないのは、過去の経験がそうさせるのかもしれません。ゆとりがあるぐらい生活ができれば後はそんなに使うことはないですしね。(2009/05/20)

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