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医療にも“ビジネスクラス”の導入を

河北総合病院理事長・河北博文氏と日本医療のこれからを探る(下)

  • 竹森 俊平

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2009年5月28日(木)

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 (前編から読む)

竹森 これまで国民皆保険制度のなかったアメリカにそれを導入するのが、オバマ大統領は医療保険改革のようです。

 河北先生は、これまでアメリカに国民皆保険制度がなかったことについてはどうお考えでしょうか。

河北 アメリカでは約5000万人弱の人が無保険者であると言われています。これはもちろん大きな社会問題ではあります。ただし、5000万人すべてが保険料を払えなくて無保険であるということではなく、自分の意思で保険料を払わずに無保険になっている人たちもたくさんいます。それから無保険であっても、必要な医療を受けていないかというと、実はそうではない。

 まず、救急医療に関しては、アメリカでは憲法で保障されていますから、本当に救急医療が必要であればすべての人が受けられます。

竹森 ERと呼ばれる救急医療ですね。

河北 そうです。また、アメリカではチャリティーケアや治験がものすごく進んでいます。そういったものに乗れば、給料をもらいながら通常の診療と同等か、それ以上の診療が受けられる仕組みもあります。ですから5000万人の人が無保険者であるから、医療を受けられないといった短絡的な話ではないと私は思います。

(写真:菅野勝男、以下同)

河北 博文(かわきた・ひろぶみ)

医療法人財団河北総合病院理事長。1977年慶應義塾大学医学部卒業。83年シカゴ大学大学院ビジネススクール修了。84年慶大博士(病理学)。老人保健審議会委員、医療保険審議会委員、規制改革委員会委員などを歴任。財団法人日本医療機能評価機構評議員・理事・専務理事、東京都病院協会会長。2006年渋沢栄一賞受賞。



企業が医療を“提供”してきたアメリカ

竹森 最近、金融危機の深刻化で米ゼネラル・モーターズ(GM)の経営危機があぶり出されてきましたが、GM危機の一つの原因は、企業単位の医療保険方式といわれています。この制度が企業にとっての予想外の費用増加を生んだというのです。確かに、この制度では退職者が増えれば、どんどん企業の医療費負担が膨れ上がる。GMの車1台当たりの生産費のうち、20万円が保険コストと言われるほどです。保険制度をやめる企業も出てきているようですが、これからもそういう例が出てくると思いますか。

河北 出てくると思います。私はアメリカ政府が、ある程度の皆保険制度に近いものをつくっていくことは必要だと思います。それに近いものをつくろうとしたのが、ジョンソン大統領です。ジョンソンは1965年にメディケア、メディケイドを導入した時の大統領だと思います。

 これは高齢者と、かなり低所得の人たちを対象にした公的保険制度です。この公的保険制度が導入されたことによって、アメリカの需要と国民医療費は急激に伸びました。単価も総額も伸びた。医療費があまりにも伸びてしまうと困るので、いわゆる管理医療というものが導入されるようになりました。

竹森 マネージドケアという、アメリカに独特な仕組みですね。

河北 さらに、マネージドケアをマネジメントしなければならないと導入されるのが、HMOのような保険の仕組みです。ただ、アメリカはやはり自由市場経済が中心ですから、各企業が自分たちの選択で、企業の従業員、職員向けに保険を提供するようになりました。これは日本の組合管掌健康保険に相当するものです。

 アメリカではかなり高い医療を企業がしっかりと提供してきました。我が国の国民負担率というのは、国民所得に対して37~38%ぐらいですが実は国際規格では非常に低いのです。アメリカの方が1%くらい日本よりも低いと言われますが、企業が提供してきた医療保険の部分を上乗せすると、おそらく6%以上は日本よりも高くなることになるでしょう。

竹森 アメリカの企業が提供する保険を、公的な保険に換算して日本と比べると、ということですね。

河北 そうです。民間ベースであり強制加入ではないのですが、労使の関係上、かなり強制的なものにならざるを得ません。これを、日本の組合管掌健康保険に相当するとして計算すれば、アメリカの国民負担率はおそらく44~45%になります。日本の38%という数字は、私はまだまだ低いと考えます。

 ヨーロッパの国々の国民負担率は、おそらく軒並み45~46%、高いところだと国民所得に対して北欧のように70%や75%という国もあります。直接税はそれほど税率が高くなくても、間接税が猛烈に高いです。

竹森 確かにヨーロッパの消費税は高いですね、20%くらいでしょう。

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