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地方へ人を「分散」させる政策を

島根県知事 溝口善兵衛氏と国際金融と地方経済について議論する(下)

  • 竹森 俊平

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2009年6月4日(木)

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竹森 今回の日本の不況の原因を巡る国内の議論では、構造改革が足りなかったからだ、いや反対に構造改革をやり過ぎたからだといった、何か日本自身の失敗が原因だったという意見がしばしば聞かれます。特に、輸出依存の経済が良くなかった、だから今後は内需型の経済に替えなければいけないという主張がしばしばなされているようです。

 2002年から2003年以降は、それまでずっと悪かった経済が、輸出が伸びたために一気に良くなったし、今は輸出が落ち込んだために鉱工業生産指数まで4割か5割ほども下落する。なぜこれほど日本経済は輸出で動かされているのかという疑問がよく聞かれます。

 下村治さん(1910~89年。池田勇人内閣で経済ブレーンとして活躍した戦後を代表するエコノミスト。『日本は悪くない―悪いのはアメリカだ』などの著書がある)が書いたものを読むと、日本では投資と輸出の連動性が高い傾向があるといいます。ただ、それは外貨が足りなかった時代の発想で、輸出の伸びを見て、外貨不足は心配ないから、当分金融引き締めはないだろうと、企業は金利の先行きを占っていたのではないかと思うのです。

溝口 経済成長率が高い伸びを見せている時、特に発展途上国や新興国が先進国にキャッチアップする過程では、外からの需要がリードしていきます。外に売れるように良いもの、安いものができるようになるから、それまでの自給自足的な小さい経済から急速な、大きな経済の発展が起こるのです。中国を見ればそのことがよく分かると思います。

(写真:宮嶋康彦、以下同)

溝口善兵衛
(みぞぐち・ぜんべえ)

1946年生まれ。島根県知事。68年4月大蔵省入省。96年同主計局次長、97年同大臣官房総務審議官、98年同大臣官房長、99年同国際局長、2003年財務省財務官、2004年国際金融情報センター理事長。2007年から現職。


 それまでは中国国内だけでしか売れない製品しか作れなかったが、対外開放により先進国から工場や技術が中国に行き、先進国の人でも欲しがるものが作れるようになる。輸出によって得た外貨で高品質の原材料や中間財を買う、技術を導入する、外国の質の高い消費財を買う、国内の貧しい人たちもそんなものが欲しいから、よく働く。そのおかげで速く成長できたのです。

 日本も戦後はそのようにして発展してきました。様々な歴史的事情で発展が遅れた国が発展を始める時は、大体、この過程をたどります。高度成長期のように、政策で消費や設備投資など内需に資金を誘導するといったことは、日本でも高度成長期の時代にはあったかもしれませんが、今は状況が違います。良い製品を安く作れれば、世界のマーケットでどんどん売れる時代です。世界のマーケットは巨大です。

キャッチフレーズ的に「内需主導」と言うのは荒っぽい

竹森 内需型にしろと言う人は、「前川リポート」が内需型経済への転換を提言していたのに、それをやらなかったからいけないと言います。しかし、「前川リポート」の内需型というのは輸出産業を縮小しろと言うのではなく、自動車の輸出はしてもいいが、同時に輸入をもっとしなければいけないという発想だったと思います。輸入が増えないのは、日本のマーケットの構造のどこかに問題があるはずだという考え方です。

溝口 結局、内需のコアというのは個人消費・住宅投資か財政支出による需要です。設備投資は経済が拡大しないと、あるいは輸出が増えないと増加しません。財政は、中長期的には、結局は公的セクターが国民経済や国民生活においてどういった役割を果たすべきかという観点から決まってくる。

 1980年代の内需に関する議論の中心は、日本は貿易収支の黒字が多過ぎる、このため貿易摩擦が起こる。輸入は原材料中心で、消費財は関税など貿易バリアーがある、国内の規制などがあってなかなか入ってこない。そこで個人消費など内需を増やし、製品輸入を増やそうということで、製品輸入率といった指標が大きく注目されたのです。

 日本は、これからはグローバルな競争の中で生きていかなければなりません。自給自足に戻るわけにはいきません。従って、内であれ、外であれ、売れるもの、良いものを作ることが一番大事でしょう。キャッチフレーズ的に内需主導とか、輸出主導と言うと議論が非常に荒っぽくなり、ミスリーディングになると思います。

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