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中国が解決すべき3つの課題

黒田東彦アジア開発銀行総裁と議論する中国そしてアジア(下)

  • 竹森 俊平

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2009年6月18日(木)

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竹森 経済の問題と絡めて、少し政治の話をしたいと思います。私はタイの政情不安というのは、アジアの統合にとってマイナスなのではないかと考えています。東南アジア諸国連合(ASEAN)をベースにして、新たな枠組みを作っていく中で、タイは牽引役を務めていくべき存在だと思うのです。

黒田 先日のパタヤで開かれた東アジアサミットに私も呼ばれていたのですが、結局、会議はキャンセルされて先送りになってしまいました。タイとしても残念だったでしょうし、東アジアとしても、20カ国・地域(G20)の4月2日のサミットに続いて、アジアとしてのグローバル・ファイナンシャル・アーキテクチャーの話を始め、危機対応についてのコンセンサスを作ろうとしていたのにそれらが先送りになってしまい、非常に残念だと思います。

 1997年にはタイからアジア金融危機が始まりましたが、当時もタイは政治の転換期でした。憲法改正をして、選挙制度改革をしていたんです。また、インドネシアはスハルト大統領が7選されるかどうかが不確実であり、韓国は民主的な大統領選挙直前で政治的な不安がありました。通貨危機が起こった3カ国には政情不安があったのです。

 今回は少なくとも経済危機は外から来ているものです。確かにタイがASEANを引っ張って、世界的な危機に対応するための意見をまとめようという時に、政情不安でそのリーダーシップが十分発揮できないのは残念です。ただ、そのことがタイの経済危機を深刻化しているかというと、必ずしもそうではないと思います。

(写真:菅野勝男、以下同)

黒田 東彦(くろだ・はるひこ)

アジア開発銀行(ADB)総裁。1944年生まれ。67年東京大学法学部卒業後、大蔵省入省。71年オックスフォード大学経済学修士。96年財政金融研究所長、97年国際金融局長、98年国際局長。97年7月から3年半にわたって財務官を務める。2003年3月内閣官房参与、同年7月から一橋大学大学院経済学研究科教授を兼務。2005年2月から現職。著書に『元切り上げ』『通貨の興亡』『財政金融政策の成功と失敗―激動する日本経済』など。


竹森 次に金融政策の話をしたいと思います。今、アジア開発銀行(ADB)や国際通貨基金(IMF)が積極的な貸し出し活動をしているというのは、要するに、世界経済がドル不足の状態にあるからだと思います。この点についての誤解があるために、今の世界経済においてデフレとインフレのどちらがより差し迫った問題かについて、誤った議論がなされるのだろうと思います。例えば米連銀のバランスシートが1年間で100倍になったことを挙げて、現時点でのインフレの危険を指摘する議論は間違っていると私は思います。

 そもそも、インフレの原因となる「過剰流動性」とは、「ドルがあまりにも借りやすい」状態を指すものであって、今言ったように、現在の状態は全くその逆です。確かに連銀はベースマネーを大量に増やしているけれど、貸し出しが冷え込んでいるので、マネーサプライ(通貨供給量)は収縮しているのです。従って、今懸念すべきなのはデフレであって、インフレではない。連銀のバランスシートの拡大だけでインフレが起こる可能性は極めて小さいと思います。

 他方において、これだけドルが足りない状態だと、デフレが起こっても不思議ではない、だからこそ、それを抑えるために連銀はあのような金融政策をしている。それは致し方ないと私は判断しています。

懸念すべきはデフレでありインフレではない

黒田 おっしゃる通りだと思います。アメリカもそうですし、ヨーロッパも国によっては消費者物価の上昇率がマイナスになっていますね。実はアジアも日本だけでなく、東アジアのいくつかの国ですでに消費者物価の上昇率がマイナスになっているところがあるんです。

 東南アジアの多くの国、南アジア、西アジアの国々は、昨年のひどいインフレほどではないものの、まだ物価上昇率が5~6%のところが多いですから、デフレにはなっていませんが、東アジア、東南アジアの一部の国では、もうすでにデフレの傾向が出てきています。

 ですから当面のリスクというのは、デフレのリスクであって、インフレのリスクではありません。アメリカの場合、連銀のバランスシートが今、2兆ドルを超えているわけです。それは、金融資本市場が十分機能しなくなって、連銀が単に短期国債を買って金融化するだけでなくて、直接的にCP(コーマシャルペーパー)とか、モーゲージ・バックト・セキュリティー(MBS=住宅ローン担保証券)とか、コーポレートボンドとか、そういう特定の民間の資金調達市場で直接的にファイナンスして、クレジットクランチを克服するために、いわば中央銀行が直接、非金融部門にお金を貸しているわけです。

 それほど信用が不足している時にインフレになるという懸念はあまりなく、むしろデフレの懸念がある。ただ、アメリカも、これだけ連銀のバランスシートが大きくなってくると、将来景気が回復して、さらに失業率もすごく減って、賃金、物価が上がり始めた時に、連銀が金融を締める。その時に今までの過程で買い上げた長期国債やモーゲージ・バックト・セキュリティーといった長期物を売ると、キャピタルロスで大損をする可能性があります。

 そのため、インフレ懸念が強まった時に連銀が金融を引き締めることをためらわせるのではないかということを、一部のアメリカの学者が言っています。それについては、締めるべき時はきちんと締めますと、連銀は否定しています。私も連銀の言う通りではないかと思います。

 アジアの国は、そもそもアメリカ、ヨーロッパの金融危機の影響を受けて、ドル不足の中で自国通貨が下落して困っていたぐらいです。アメリカができるだけいろいろな形でドルを供給してくれないと、クレジットクランチ、あるいは不況、デフレが深刻になる恐れがあるので、アメリカが今の時点で信用を拡張してくれることは大歓迎だと思います。

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