「ロバート・シラーの「21世紀の新・金融秩序」」

ロバート・シラーの「21世紀の新・金融秩序」

2009年6月25日(木)

「安いうちに住宅購入を」は正しいのか

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 住宅価格については、様々な誤解がある。「世界経済の急速な発展が土地の希少価値を高め、分譲住宅や賃貸住宅の価格が大幅に値上がりする」。世界中の多くの人々が、こう勘違いしているようだ。

 この誤解に基づく「投資価値」によって、人々は住宅を購入する。これが、現在の経済危機を引き起こした世界的な不動産バブルへとつながった。

 また、同じ誤解によって、経済が現在の危機から脱した後、住宅価格が再び著しく上昇する可能性もある。実際、市場が低迷している今のうちに住宅を購入しておこうと、既に食指を動かし始めている人もいるようだ。

 しかし、人々が住む土地が本当に足りなくなることはない。

豊富な農地や森林の存在を考慮していない

 世界中の主要国には、農地や森林としての豊富な土地があり、その多くは都市開発用地に転用可能だ。人口が密集する都市部の土地は、地球全土の1%に満たない。人口密度の高い主要国でも、その割合は10%未満だ。

 農地の都市開発用地への転用は規制されている場合が多いが、都市開発の経済的メリットが大きくなれば、長期的には、そうした規制は撤廃される可能性が高いだろう。政府は、土地が足りないという理由で、市民が手頃な価格で住宅を手に入れることをいつまでも阻害することはできない。

 農地価格の上昇率は、投資家が大儲けできるものとは程遠い。米国では20世紀を通じて、農地価格の上昇率はインフレ調整済みの実質ベースで年率わずか0.9%だ。投資家が農地から得る利益の大部分は、農業の運営によるものであり、地価の上昇によるものではない。

 21世紀に入ってから、米国の農地価格は住宅と同様、バブルと言えるほど急上昇した。だが、米農務省によれば、2008年の農地1ヘクタール当たりの平均価格は依然として6800ドルに過ぎない。

 1ヘクタールの土地があれば、十分な広さの敷地を持つ一戸建て住宅を10〜20戸、もしくは300人が住める集合住宅を1棟建設でき、1人当たりの土地の取得価格は20ドル程度に抑えることができる。生涯住み続けるとすれば、年間50セント以下の土地コストだ。

 もちろん、そうした農地は現状では好ましい立地条件ではないかもしれないが、都市開発によって条件を良くすることも可能だ。

農地コスト、建設費は国際価格に収れんする

 多くの人は、米国には人口規模に比べて広大な国土があり、米国の事例は他国には当てはまらないと考えているようだ。確かに、2005年の人口密度で比較すると、米国が1平方キロメートル当たり31人なのに対し、メキシコは53人、中国は138人、英国は246人、日本は337人、インドは344人となっている。

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著者プロフィール

ロバート・シラー(Robert Shiller) 

ロバート・シラー

金融経済学者。
米エール大学経済学部教授。ミシガン大学卒業後、1972年米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号取得。株価変動やリスクに関する研究の権威。著作に『Irrational Exuberance(根拠なき熱狂)』、『The New Financial Order(新しい金融秩序)』など。
月一回、「Project Syndicate」を通じてコラム配信。


このコラムについて

ロバート・シラーの「21世紀の新・金融秩序」

株価変動研究の権威である筆者が21世紀にあるべく金融の姿を、リスク分析など独自の視点を基に喝破していく。

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