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“トヨタ型ものづくり”復活の日

藤本隆宏東大教授と自動車産業の今後を議論する(上)

  • 竹森 俊平

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2009年6月24日(水)

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 もはや「サブプライム」というタイトルで呼ばれることが稀になった今回の金融・経済危機の主役が金融業であることは間違いない。それに加えて、最近急速に役割が大きくなってきたのが自動車産業である。今や、自動車産業は金融業と並ぶもう1つの経済危機の主役と言えるのではないか。

 金融業が打撃を受け、貸し出しが収縮するような局面では自動車ローンの供給も細くなる。それに金融危機が経済危機に発展し、家計が所得の先行きに不安を感じて消費をカットするようになれば、一番先に影響を受けるのは耐久消費財、とくに自動車である。それ故、ベアー・スターンズ、リーマン・ブラザーズ、シティグループといった金融機関が次々と生死の境に立たされる時、ゼネラル・モーターズ(GM)、クライスラー、トヨタ自動車も正念場を迎えることになる。これは自然な流れと言わざるを得ない。

 これからの自動車業界はどうなっていくのだろうか。自動車産業が今や経済の牽引役である日本にとって、これほど重要な問題もない。だが、最近の状況は極めて錯綜しているから、これは同時にまことに予想困難な問題である。金融危機がGM、クライスラーを破綻させ、グローバルな業界編成に大きな影響を及ぼす。そればかりではない。主要国の政府が自動車を、金融に次ぐ公的支援の重点産業としているために、政策の動きが自動車メーカーの将来を左右する。加えて省エネ車、ハイブリッドカーなどへの育成策が絡んでくる。この錯綜した状況を整理して、将来の明確な見通しを得ることはできないかと考えた時に、藤本隆宏氏を思い出した。

トヨタ生産方式が原点の独自のものづくり論を展開

 藤本氏とのおつき合いは長い。藤本氏が三菱総合研究所に新入社員としてお入りになった時に、筆者は慶応義塾大学の学部生で、三菱総研でのアルバイトをしていたのである。その後、藤本氏はハーバード大学ビジネススクールへ、筆者はロチェスター大学へと、アメリカに留学した時期もほぼ重なっているが、なにぶん研究分野が違っているために、これまで藤本氏のご著書を集中して読んだことがなかった。いや、分野が違うというより、これはおそらく筆者の勉強不足のせいで、藤本氏は筆者の『国際経済学』を読まれていたそうである。大変参考になったというありがたいコメントを頂いている。

 遅ればせながら今回の対談に先立って、「ものづくり」についての藤本氏のご著書を読ませていただいていたのだが、非常に感心した。シンプルで、適用範囲の広い基本コンセプトを出発点に置き、それを縦横無尽に駆使されていることに感銘を受けたのである。藤本氏の「ものづくり」、つまり企業の生産方式の分析は、日本の自動車産業、とくにトヨタの生産方式を原点に置いている。

 トヨタ型生産方式は、様々な部門間の「擦り合わせ(インテグラル)」を重視したもので、部門間の密接な協力によって製品の品質を高めることにポイントがある。しかるに、これに対峙するもう1つの生産方式がある。「組み立て(モジュラー)」型である。

 組み立て型の場合には、生産工程全体のアーキテクチャーや部品の規格の徹底した標準化によって、擦り合わせの機会を特別に設けなくても、各部門が規格通りの生産をすることによって、全体として一応のまとまりを持った製品を作り出すことが可能になる。しかもモジュラー型であれば、各部門の責任者が1カ所に集まって、擦り合わせのために協議する必要もなくなるので、生産拠点をコストの低い新興国に移転することが容易になるのである。

 日本の機械産業でも、エレクトロニクスはモジュラー型によるコスト削減を追求していったために、生産拠点が次第にアジア新興国に移り、国内は空洞化していった。それに対して、インテグラル型による品質改善にこだわった自動車産業は、依然として国内に強固な生産基盤を持つ。これが筆者の理解する、藤本氏の日本の「ものづくり」の理論である。これだけ明快で、シンプルで、説得力のある説明は他にないのではないか。藤本氏の業績が、学界でも、産業界でも高く評価されていることも当然である。

「ものづくり」の思想で金融危機を分析

 今回の対談では、「ものづくり」の思想を分析の中心に置く藤本氏に、欧米の金融業が引き起こした経済危機がどう映ったかという点から話が始まる。金融危機の要因であったとされる「セキュリタイゼーション(証券化)」について、非常に興味深い観察をここで伺うことができた。

 それから、今や日本経済の浮沈を左右するトヨタについても、その「強さ」と「弱さ」についてまことに忌憚のないご意見を伺えた。さらに、これからの自動車産業がどうなるか、とくにGM、クライスラーの運命は、といったテーマについては、藤本氏は胸の冴える、快刀乱麻の判断を下されている。筆者は、自動車産業の今後の動向が、日本と世界の経済の行方を左右する大きな意味を持つと考えるが、同様な意識をお持ちの読者に、以下に続く対談をぜひ読んでいただきたい。

(写真:村田和聡、以下同)

藤本 隆宏(ふじもと・たかひろ)

東京大学大学院経済学研究科教授、ものづくり経営研究センター長。1955年生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了(D.B.A.)。独立行政法人経済産業研究所(RIETI)ファカルティフェロー、ハーバード大学ビジネススクール上級研究員。専攻は技術管理論、生産管理論、経営管理論。著書に『生産マネジメント入門』『日本のもの造り哲学』『能力構築競争-日本の自動車産業はなぜ強いのか』など多数。


竹森 日本ではそれほど言いませんが、アメリカではサブプライム危機は経済学に反省を強いるような出来事だという認識があるようです。アメリカの金融業は、これまで全産業の4割もの利益を稼いできたのですが、繁栄を謳歌していたうちは、経済理論と実践がマッチした素晴らしいビジネスモデルだと経済学者に褒めそやされてきた。

 ところが、これだけ大きな失敗をしでかし、世界経済を危機に陥れる。素晴らしいどころか、なんでこんなめちゃくちゃなものを放置しておいたのか、ということになるわけです。その結果、名だたる経済学者が皆くそみそに金融をけなすようになりました。経済学ではそのように手の裏を返したような、認識の変化が起こっている。欧米のビジネススクールに行くやつは、金融業に行きたいやつも多いわけですが、今回、経営学の分野でも何か変化が起こっていますか。

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