どうやら株式市場は、ここにきて3月に大底を確認したような値動きとなってきています。現在の値動きに限らず、企業の株価は、1日に5%程度、1週間で10%程度上下することも珍しくありませんが、こうした短期的な株価の変動は、世界中の様々な投資家の需給を反映している結果とも言えるでしょう。
しかし、その企業の業績などの実質的な価値が、1日で5%、1週間で10%以上も変化していることはないはずです。企業価値の定義にもよりますが、企業の本質的な価値がわずかな時間や日数で大きくぶれることは本来あり得ないのです。
さて、市場関係者としては、違法行為である「インサイダー取引」が未だに見受けられる現状は大変残念であり、怒りすら覚えます。発表前の業績、ファイナンス、M&A(合併・買収)や事業撤退など一部の関係者だけが知りうる企業の重要な情報は、発表と同時に株価に大きな影響を与えることもあります。しかし、本来、投資家にとって大切なことは、ファイナンスやM&Aなどの企業イベントの発表による一時的な株価の値動きではなく、その後、当該企業が、こうしたイベントをテコに企業価値を高めていくことができるかどうかです。
企業の本質的な価値を見極める洞察力や見識(=インサイト、insight)を身につけ、企業の成長を投資という形で支援するのが原点となるべきです。それは、社会への貢献にもつながるはずです。
ですからインサイダーならぬ、「インサイター」というわけです。
個人投資家の“セミプロ”化が進む
株式の投資主体別売買動向では、東京・大阪・名古屋の3大市場における個人の売買シェアが30%を超えるなど個人投資家の動きが注目されています。近年、こうした個人投資家の売買代金における90%近くがネットを通じた売買になっているようです。
このことは、個人投資家の多くが自ら情報収集を行ったうえでネットから注文を出していることを意味します。ネット証券からの情報はじめ株式関係の情報ソースの広がりから機関投資家並みに情報収集できる環境が整ったことも大きいのですが、半面、証券会社の株式営業による影響はほとんど出ていないことになります。事実上、日本では証券会社による個人向けの株式営業は衰退の一途と言えるでしょう。
では、なぜ大手証券の株式営業や中小証券の外務員の方々の影響が著しく低下しているのでしょうか。この背景は、株式売買委託手数料の自由化などが考えられます。米国では1975年から株式売買委託手数料が自由化され、その後20年を経過してからインターネット売買が立ち上がりました。その間、様々な証券サービスが開発されました。ラップアカウント(株式売買や資産運用アドバイスなどを一括して提供するサービス)などは、その代表例です。
一方、日本では、99年10月が株式売買委託手数料自由化の“メーデー”となりました。ネット証券などの台頭もあり、ある意味、米国が25年かけて手数料の自由化を進めてきたレベルを日本は一夜にして実現してしまったわけです。
こうして、短期間で大幅に低下した株式売買委託手数料により、対面営業による株式売買委託手数料を柱としたビジネスモデルは成り立たなくなり、事実上、大手証券による株式営業や中小証券の外務員の方々の営業は鳴りを潜めました。
自らが情報収集する個人投資家は、ある意味セミプロに近い存在と考えられます。短期売買を志向する個人投資家にとっての重要な情報は、チャートなどのテクニカルなデータや決算情報を含むニュースフロー、投資家動向などと耳にします。
これらの投資行動は、「企業に投資」をするというよりも「株価に投資」をしているように筆者には見えます。
早耳情報に右往左往する必要なし
一方、国内機関投資家は、パッシブ運用(特定指数の連動を目指す手法)を別にすると、個人投資家とは対照的にファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)分析を中心とした投資スタイルです。それでも、生保、年金などの本来、長期的な運用成果を求められている投資家ですら、会計問題、運用評価などの観点からせいぜい3年先くらいまでの時間軸で運用しているところが多いようです。つまり短期的な時間軸でのファンダメンタルズアプローチになってしまっているのです。
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