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テレビの前の国民を説得する努力を

ジェラルド・カーティス氏と「政治という日本の弱点」を議論する(下)

  • 竹森 俊平

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2009年7月10日(金)

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カーティス 僕は政治報道についてのマスコミの反省が必要なのではないかと考えます。政治部の記者たちが書かされているのは、主に政局の話であって、政策のことではない。またうわさを事実のように書く。記者クラブ制度や夜回りの慣習も問題で、国民に伝えるべき情報は十分伝わっていないように思います。

 あんまりセンセーショナルにニュースを取り上げると、冷静さが失われて国民の感情を煽る恐れはある。戦前、1930年代、日本が軍国主義の道に入って行ったのは、ナショナリズムを煽るような報道をしたマスコミの責任もあるでしょう。

 民主党が今度政権を取って、政権交代が行われたら、政策争いが激しくなるでしょうし、国民が判断できる情報をマスコミが客観的に伝える必要は今まで以上に重要になる。マスコミこそが55年体制から脱皮していないように見えますが、その改革はこれからの課題だと思う。

 民主党はオバマさんのように、新しい政治手法を考えればいいと思います。例えば、オバマさんはタウンミーティングをよくやります。国民に直接質問され、それに答え、その様子がテレビで放映される。どんな質問をされても自分の理念と知識があるからすぐ答えます。このようなことを日本でやればいいと思いますが、理念があって、政策の知識もあって、説得力があって、初めてこのやり方の意義があります。そういう能力がこれからの日本のリーダーたちにあるかどうか。

マニフェストがつまらないのは“官僚マインド”だから

竹森 鳩山さんには能力はあるのでしょう、頭はいい人だと思います。民主党が本当に大きく勝つつもりなら、政策をはっきり出さなければダメでしょう。そういう意味では小沢さんが辞めたのは良かった。彼だったら、政策論争をいつまでも避ける作戦を取っていたかもしれない。まあ、今は民主党も、いくら何でも政策を提案しなければいけないことに、ようやく気がついたと思います。少し遅すぎるような感じがしますが。

 マニフェストなんて誰も読まないと言いますが、総選挙では何か言わなければいけないから、政策論争のチャンスではあります。

カーティス 僕自身はマニフェストに対してどちらかと言えば冷たい目で見ています。アメリカでは民主党も共和党もプラットフォームを出す。政策の約束をすることを、プラットフォームと言いますが、これを大会の時に出します。これはどちらかと言えば活動家が喜ぶようなものばかりを書いたもので、政権を取れば誰もそれほど重視しない。

(写真:村田和聡、以下同)

ジェラルド・カーティス(Gerald L. Curtis)

コロンビア大学政治学教授。日本の政治研究の第一人者。1940年米ニューヨーク生まれ。62年米ニューメキシコ州立大学卒業、69年米コロンビア大学大学院政治学博士課程修了。76年から現職。早稲田大学客員教授。67年に博士論文の執筆のため来日、第31回衆院選挙で大分2区から出馬した自由民主党の佐藤文生(故人)候補に密着。この博士論文を基に、71年に『代議士の誕生』を出版した。三極委員会委員、米外交問題評議会委員、米日財団理事。大平正芳記念賞、中日新聞特別功労賞、国際交流基金賞を受賞、旭日重光章を受章。主な著書に『日本型政治の本質』『日本政治をどう見るか』『永田町政治の興亡』『政治と秋刀魚』など。今秋、絶版になっていた『代議士の誕生』が日経BPクラシックスの1冊として新訳で刊行される予定。


 政権を取った時には事情も変わります。政治は生き物で、マニフェスト通りにやるというのは、あまりにも役人っぽい考え方であると僕は思うんです。もちろん、政権を取れば何を優先的にやるつもりかと書くことに、意味がないわけではないのですが、マニフェストの枠にはめられて柔軟性を失うのも良くないですね。

竹森 これまで配られたものは本当につまらないですね。延々と書いてあるだけでどうしようもない。日本人は書き方が下手なんでしょうか。大事なところをアピールすればいいのに、電話帳みたいなものになっている。

カーティス 官僚のような書き方なんです。官僚の影響がいろいろな意味で大きすぎる。政治主導と言っていますが、下手をしたら、政治家の官僚化になってしまう。この危険性がすごくある。もう既に官僚的な発想、官僚マインドで政治をやっている人が多すぎる。

分かりやすくしゃべると頭が良くないと思われる日本

竹森 2008年の夏頃、オバマはヨーロッパでものすごい人気でした。ベルリンにオバマが行った時に、20万人という記録的な群衆を集めた。彼は発言が非常にアーティキュレートされていて、明快な、学者的な政治家だと思います。彼の演説や書物、特に彼の1冊目の本(『Dreams from My Father』、邦題『マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝』)は語彙も豊富だし、素晴らしい流麗な文章で書かれています。この本を読んで本当に文才がある人だなと感じました。

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