長期的な日本の経済・社会を考える時、もっとも重要なのが人口問題です。日本の人口は今後、(1)人口が減少し、(2)子供の数が減り(少子化)、(3)高齢者の比率が高まる(高齢化)という3つの変化が続くことになります。この3つの変化の根本原因は少子化です。子供の数が減っていけば、相対的に高齢者の比率が高まり、やがては人口が減ることになるからです。
その少子化の動向を見る上での代表的な指標が合計特殊出生率です。これは、1人の女性が一生の間に平均何人の子供を産むかという数字です。簡単に言えば、合計特殊出生率が2以上であれば人口は減りません(厳密には2.07人ですが)。日本の合計特殊出生率は、終戦直後のベビーブーム期には4.5前後だったのですが、その後は下がり続け、1975年以降は継続的に2を下回るようになり、その後もさらに下がり続けて、2005年には1.25まで低下してしまいました。
ところが、この合計特殊出生率がこのところ上昇してきているのです。少子化傾向が反転したのだとすれば大変結構なことなのですが、必ずしもそうとは言えないようです。
出生数が増えたのは「うるう年」の影響
最新の2008年の合計特殊出生率は、1.37であることが、6月に公表された厚生労働省の「人口動態統計」で明らかになりました。この結果、合計特殊出生率は2005年の1.25から、06年1.32、07年1.34、08年1.37と3年連続の上昇となりました。出生数も2007年の108万9818人から2008年には109万1150人へと0.1%の増加となりました。
この結果を受けたインタビューで、小渕優子少子化対策担当相は「出生率が上がるのは喜ばしい。これまでの少子化対策が少し形になってきたかなという気もするが、気を緩めず対策を進めたい」と述べています(朝日新聞2009年6月4日朝刊)。少子化対策の効果が現われてきて、出生率が上昇傾向に転じたのであれば確かに喜ばしいのですが、本当にそう言えるのでしょうか。少し詳しく点検してみましょう。
まず、2008年はうるう年でした。1日日数が多ければ、その分出生率も上昇し、出生数も増えるはずです。単純に平年よりも1日分かさ上げされると考えると、合計特殊出生率は366/365だけ引き上げられていることになります。2008年の合計特殊出生率は1.3668ですから、もしうるう年でなかったとすると、出生率は1.3631となります。2007年の合計特殊出生率は1.3370でしたから、うるう年によってやや助けられてはいるものの、その影響を除いても、出生率が上昇したという結論は変わりません。
出生数の方はどうでしょうか。こちらも同じようにうるう年の影響を除いてみると、2008年の出生数は108万8169人となります。これは2007年よりも低い数字です。すると、2008年に出生数が増えたのはうるう年のおかげだったということになります。
「ある女性が一生に産む子供の数」はどうやって計算する?
出生率が上昇したのは「晩産化」の影響だという指摘もあります。この点を考えるためには、合計特殊出生率の計算方法についてもう少し丁寧に考えておく必要があります。
新聞の見出しには「2008年の合計特殊出生率が上昇した」と出ています。しかし、よく考えてみると「2008年の合計特殊出生率」とは妙な言い回しです。合計特殊出生率は、1人の女性が一生の間に産む子どもの数だと先ほど述べました。しかし、2008年時点で、ある女性が一生の間に何人子供を産むかということが分かるのでしょうか。すでに高齢になった女性であればともかく、これから子供を産むだろう若い人も多いはずです。そうした人たちが、一生のうちに何人子供を産むかはまだ分からないはずです。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




