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3年連続の上昇で少子化傾向は反転したのか?

出生率上昇の背景にある女性の「産み時」の変化

2009年7月10日(金)

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 長期的な日本の経済・社会を考える時、もっとも重要なのが人口問題です。日本の人口は今後、(1)人口が減少し、(2)子供の数が減り(少子化)、(3)高齢者の比率が高まる(高齢化)という3つの変化が続くことになります。この3つの変化の根本原因は少子化です。子供の数が減っていけば、相対的に高齢者の比率が高まり、やがては人口が減ることになるからです。

 その少子化の動向を見る上での代表的な指標が合計特殊出生率です。これは、1人の女性が一生の間に平均何人の子供を産むかという数字です。簡単に言えば、合計特殊出生率が2以上であれば人口は減りません(厳密には2.07人ですが)。日本の合計特殊出生率は、終戦直後のベビーブーム期には4.5前後だったのですが、その後は下がり続け、1975年以降は継続的に2を下回るようになり、その後もさらに下がり続けて、2005年には1.25まで低下してしまいました。

 ところが、この合計特殊出生率がこのところ上昇してきているのです。少子化傾向が反転したのだとすれば大変結構なことなのですが、必ずしもそうとは言えないようです。

出生数が増えたのは「うるう年」の影響

 最新の2008年の合計特殊出生率は、1.37であることが、6月に公表された厚生労働省の「人口動態統計」で明らかになりました。この結果、合計特殊出生率は2005年の1.25から、06年1.32、07年1.34、08年1.37と3年連続の上昇となりました。出生数も2007年の108万9818人から2008年には109万1150人へと0.1%の増加となりました。

 この結果を受けたインタビューで、小渕優子少子化対策担当相は「出生率が上がるのは喜ばしい。これまでの少子化対策が少し形になってきたかなという気もするが、気を緩めず対策を進めたい」と述べています(朝日新聞2009年6月4日朝刊)。少子化対策の効果が現われてきて、出生率が上昇傾向に転じたのであれば確かに喜ばしいのですが、本当にそう言えるのでしょうか。少し詳しく点検してみましょう。

 まず、2008年はうるう年でした。1日日数が多ければ、その分出生率も上昇し、出生数も増えるはずです。単純に平年よりも1日分かさ上げされると考えると、合計特殊出生率は366/365だけ引き上げられていることになります。2008年の合計特殊出生率は1.3668ですから、もしうるう年でなかったとすると、出生率は1.3631となります。2007年の合計特殊出生率は1.3370でしたから、うるう年によってやや助けられてはいるものの、その影響を除いても、出生率が上昇したという結論は変わりません。

 出生数の方はどうでしょうか。こちらも同じようにうるう年の影響を除いてみると、2008年の出生数は108万8169人となります。これは2007年よりも低い数字です。すると、2008年に出生数が増えたのはうるう年のおかげだったということになります。

「ある女性が一生に産む子供の数」はどうやって計算する?

 出生率が上昇したのは「晩産化」の影響だという指摘もあります。この点を考えるためには、合計特殊出生率の計算方法についてもう少し丁寧に考えておく必要があります。

 新聞の見出しには「2008年の合計特殊出生率が上昇した」と出ています。しかし、よく考えてみると「2008年の合計特殊出生率」とは妙な言い回しです。合計特殊出生率は、1人の女性が一生の間に産む子どもの数だと先ほど述べました。しかし、2008年時点で、ある女性が一生の間に何人子供を産むかということが分かるのでしょうか。すでに高齢になった女性であればともかく、これから子供を産むだろう若い人も多いはずです。そうした人たちが、一生のうちに何人子供を産むかはまだ分からないはずです。

コメント8件コメント/レビュー

少子化、高齢化、そして人口問題。少子化と高齢化はそれ自体は別々の社会現象を言っているに過ぎない。各々の現象にはそれぞれ特殊な社会的要因があるはず。人口問題は一般には国家の総人口の変動によって生ずる(と思われる)種々なる不都合を問題にしていると思われる。総人口を国力に結びつける議論があるが、仮に国家が強大になったとしても、それが直ちに国民一人一人の生活そのものの質(豊かさ)或は社会福祉の向上等をも期待せしめるであろうか。強大なる国家即ち国民の幸福との考えは浅薄と言わざるを得ない。 少子化対策に我々は何を期待すべきか。そもそも少子化によって起こり得る、或は起こりつつある問題とは何か。高齢化はどうか。子を産む自由、長寿を賀する事とどう折り合いを付けるのか。問題は人の生き方にまで通じる深さを孕んでいるのである。これらは十分議論されているであろうか。 出生率の見方を分析、解説してくれた記事は有難い。議論の前提となるデータが誤解を招くようなものであっては有意義な議論は望めない。(2009/07/11)

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「3年連続の上昇で少子化傾向は反転したのか?」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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少子化、高齢化、そして人口問題。少子化と高齢化はそれ自体は別々の社会現象を言っているに過ぎない。各々の現象にはそれぞれ特殊な社会的要因があるはず。人口問題は一般には国家の総人口の変動によって生ずる(と思われる)種々なる不都合を問題にしていると思われる。総人口を国力に結びつける議論があるが、仮に国家が強大になったとしても、それが直ちに国民一人一人の生活そのものの質(豊かさ)或は社会福祉の向上等をも期待せしめるであろうか。強大なる国家即ち国民の幸福との考えは浅薄と言わざるを得ない。 少子化対策に我々は何を期待すべきか。そもそも少子化によって起こり得る、或は起こりつつある問題とは何か。高齢化はどうか。子を産む自由、長寿を賀する事とどう折り合いを付けるのか。問題は人の生き方にまで通じる深さを孕んでいるのである。これらは十分議論されているであろうか。 出生率の見方を分析、解説してくれた記事は有難い。議論の前提となるデータが誤解を招くようなものであっては有意義な議論は望めない。(2009/07/11)

某元大臣の「工場」発言が全てを物語っていると思う。作りたい人、産みたい人が自分の意思で子供を作る・産むべきであって、決して社会に強制されたりすべきではない。他人を「使いたい」人間ほど他人に子供を作らせたいのだろうが、余計なお世話である。何やら外圧などで強制されて人口が減ったかのようなコメントがあるが、おぞましい事この上ない。ところで、こういう明快な出生率に関する解説はなかなか読めないので、その意味では大変ありがたい記事だったと思う。(2009/07/10)

「毎度この『一人の女性』が産む子供の数、という表記を見る度に、女性一人で産むわけじゃないのになぁ、と思います」という意見に同感です。出産可能な世代の女性が属する世代が、どれだけ次世代を残せるのかというものにした方が、少子化の問題を切実に感じられる人が増えるのではないでしょうか。1.32にせよ1.45にせよ数字が1以上だというのでなんとなく安心してしまっている人が多いように思います。母数を男女にすれば数字が半分以下になるのは当然で、0.66、0.72といった数字を見て初めて次世代の人口が2/3以下に下がることを実感できるのではないでしょうか。0.66の2乗は0.4356と、たった2世代で半分以下になります。「少しぐらい人口が減っても」という人は、その影響の深刻さをまったく理解できていないからといって良いと思います。現在の、「『一人の女性』が産む子供の数」ばかりに焦点を当てる報道姿勢は、出生・出産を「女性だけの問題」だとと思わせる誘導がされていると思います。(2009/07/10)

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三品 和広 神戸大学教授