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2040年、それは石油産業が終わる時

中原伸之氏と「原油価格」と「新自由主義の終焉」を議論する(上)

  • 竹森 俊平

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2009年7月15日(水)

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 日銀の政策委員(日本銀行政策委員会審議委員)としての中原伸之氏については、2000年のいわゆる「ゼロ金利解除」の際に、植田和男委員とともに反対票を投じられた行動がとくに有名だ。日銀の独立性を明確にした1998年の「新日銀法」の下で、当時、日銀は実際の行動によって「独立性」を証明する必要性を強く感じていた。

 その「具体的な証明」とは、デフレがまだ終わらない段階での早めの金利引き上げであったというのが、この日銀の行動についての一般的な解釈になっている。翌年の量的緩和政策への転換により、日銀はこの行動を実質的に撤回せざるを得なかったから、ゼロ金利解除は判断の誤りであったと今日では評価されている。

ゼロ金利解除に反対した本当の理由

 それ故中原氏は、ゼロ金利解除の誤りを政策会合で痛烈に指摘したことによって、政策委員としての評価を高めた。だからといって、中原委員が他の政策委員と比べて「中央銀行の独立性」を重視しなかったわけではない。今回の対談をお読みいただければ分かるように、中原氏は政府と中央銀行の役割分担について非常に鮮明な認識を持っておられる。金融政策が有効に機能するためには、中央銀行の政策の領域が明確に限定されることが必要だという考えを、中原氏ほどはっきりお持ちの金融専門家も少ない。

 それにもかかわらず中原氏がゼロ金利解除に反対されたのは、経済理論的に誤ったこのような措置によって、日銀の権威と独立性は高まるどころか、むしろいたく傷つけられることになるとお考えになったからである。ご著書にも書かれているように、金融政策で正しい判断を示し、経済安定についての実績を積み重ねることによって初めて、日銀の権威と独立性が高まる。それが中原氏の当時のお考えだったのである。この考えに誤謬がないかを確認するために、中原氏は当時、ミルトン・フリードマンに問い合わせのファクスを送ったということである。すると、「You Are Absolutely Right (全くその通りです)」というフリードマンからの回答が来たと、ご著書で語られている。

原油価格、アメリカ経済に対する的確な読み

 中央銀行の役割についての深い洞察や、若手の優秀な経済学研究者に与えられる「日本経済学会・中原賞」を創設されたことにもうかがえる、経済理論の成果を金融政策の実践に生かそうとするご努力など、中原氏について筆者が感銘を受けることは多々ある。最近強く感じているのは、中原氏の経済の先行きについての読みの深さ、正確さである。

 2007年の秋頃にお会いした時に、原油価格の話になった。当時原油価格は1バレル=100ドルを超えていたと思うが、中原氏は「こんな価格は続きません。私は石油屋だから分かります。原油価格はひょっとしたら50ドルくらいに下がりますよ」とその時、おっしゃっていた。その後の展開がまさに中原氏の読み通りになったことは言うまでもないが、今回の対談でも原油価格についての大変面白い読みを伺うことができた。その部分は「読みどころ」となっているのではないか。

 当事者の立場としてもう1つの読みどころを指摘させていただく。今年5月にアメリカ財務省は主要銀行のバランスシートについての「ストレステスト」を行った。つまり、あまり良好でない経済状態の下で、主要銀行の損失がどれくらいの規模に上り、その結果、どの程度の資本不足が発生するかという推計を行ったのである。

 中原氏は小泉純一郎首相(当時)の強い要請を受けて竹中平蔵経済財政担当大臣(当時)のいわゆる「金融再生チーム」に多大な協力をされていて、不良債権問題については深い知識をお持ちだが、このストレステストについては一刀両断に切り捨てられた。「時価会計」で損失を評価していないのがとくに問題だという鋭いご指摘である。その後、アメリカの専門家が出したコメントを見ても、「時価評価」をしていない、つまり2009年、2010年の債権未回収額は推計に入れるものの、長期の資産が2010年末に時価評価でどれだけ減損しているかを推計していないというのが、このテストの最大の問題点であるようだ。その点を中原氏ははっきり見抜いておられたのである。

「不確実性」のフランク・ナイトの薫陶受ける

 筆者がさらに感服したのは、中原氏が対談の場所に、フランク・ナイトの著書を数冊持参して来られたことである。かつて、中原氏から1958年にナイトの授業を聴講された話を聞いていたので、現在の世界経済を覆っているような「不確実性」の問題に最初に目を向けたナイトの思い出を語っていただきたいと、事前に申し込んでいたところ、かつてお読みになったナイトの著書をわざわざお持ちいただいたというわけである。今日、ナイトの本をこれだけ熟読している金融経済学者が一体、どれだけいるだろう。ということで、今回は対談のテーマが極めて多岐にわたっているが、幅広い領域での中原氏の深い認識にぜひ触れていただきたい。

(写真:菅野勝男、以下同)

中原 伸之(なかはら・のぶゆき)

景気循環学会会長。1934年東京都生まれ。57年東京大学経済学部卒業。59年ハーバード大学大学院修士課程修了(M.A.)。同年東亜燃料工業(現・東燃ゼネラル石油)入社。74年常務取締役を経て86年代表取締役社長。94年同社名誉会長。98年4月~2002年3月まで日本銀行政策委員会審議委員。2002年10月から2005年5月まで金融庁顧問として「金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム」の金融再生プログラム作成に携わる。1998年藍綬褒章受章。主な著書に『日銀はだれのものか』ほか。



竹森 今回の対談については4つのテーマを考えました。1つ目が、バブル抑制のために何をするべきかという議論です。次に、経済危機に対する非正統的な金融政策の有効性について。今、各国の中央銀行がいろいろやっていて、このところ欧州中央銀行(ECB)も踏み込み始めました。3番目が金融政策と財政政策の役割分担についてです。

中原 もう、めちゃくちゃになっちゃいましたね。

竹森 そういう感じもありますので、そもそも政府の役割は何で、中央銀行の役割は何であるのか、もう一度整理したらどうかと思うのです。4番目に総括として、この危機をきっかけにして我々の認識がどう変わるべきか、これは金融政策や金融についての認識だけではなく、経済学全般についても反省点があるかどうかを考えてみたいと思うのです。

 私はシカゴ大学の経済学者フランク・ナイトがかつて指摘した点を、主流の経済学が無視してきたことに問題があったのではないかと最近考えているのですが、中原さんはナイトの授業を聴講されたこともおありだということなので、その思い出なども含めてお話を伺っていこうと思うのです。

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