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低成長でも健やかに暮らせればいい?

竹中平蔵氏に「失われた10」年の真実と「不良債権処理」について聞く(下)

  • 竹森 俊平

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2009年7月23日(木)

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竹森 2003年に日本経済が立ち直ったのは、金融システムの対策が功を奏したことも大きかったけれども、同時にアメリカが好景気で、日本の輸出への需要が増えたことも大きな原因だったと思います。今回の経済危機の場合にも、金融問題の解決は大切ですが、同時に、需要をどこかで作らなければなりません。といって、今回はアメリカの需要頼みとはいきそうもない。竹中さんには、何かアイデアはありますか。

竹中 まず、一時的な需要不足が起きていますから、その意味ではいわゆるケインズ的な政策、財政改革をやらなければなりません。しかしその場合の政策には2通りあります。policy to help(ポリシー・トゥ・ヘルプ)と、policy to solve(ポリシー・トゥ・ソルブ)です。政府は、圧倒的にポリシー・トゥ・ヘルプをやります。ヘルプでもソルブでも短期的な効果は同じです。でも長期的な効果は全然違う。ですからポリシー・トゥ・ソルブをやることこそが、今の答えになるわけです。

内需拡大には地道な構造改革が必要

 雇用問題が典型です。失業者が出たら困りますから、今、雇用調整助成金を積んでいます。15兆円の経済対策のうち6000億円が雇用調整分です。これは企業にお金を渡して解雇しないでね、というもので、間違いなくヘルプです。企業に対しても労働者に対してもヘルプです。でも本当のソルブは、経済が内需主導で成長し、そのことによって労働需要が増えていくことです。その政策にお金を使っていない。まさに1990年代がそうでした。ソルブをせずに、目の前の需要だけをつけた。

 結局は、ポリシー・トゥ・ソルブとは何なのかということになります。重要な事実があります。日本は外需依存だと言われますが、2003年から2006年までの4年間、日本の経済は2%以上成長しているんですが、成長の7割は内需なんです。2003年がりそな銀行への公的資金注入の年。2006年が小泉内閣の終わりの年です。これはエクスペクテーションの結果です。経済が良くなると思えれば、投資も出てくるし、消費も出てくる。4年ぐらい前は、設備投資は毎年7%成長していた。内需だったんです。

(写真:大槻純一、以下同)

竹中 平蔵(たけなか・へいぞう)

慶応義塾大学教授、グローバルセキュリティ研究所所長。1951年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行に入行。ハーバード大学、ペンシルバニア大学客員研究員、大阪大学助教授、慶応義塾大学教授などを経て、2001年より小泉内閣で金融担当大臣、経済財政政策担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣を歴任。2004年から2006年まで参議院議員。2006年から現職。著書に『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』、『はじめてのグローバル金融市場論』(共著)、『竹中式マトリクス勉強法 』ほか多数。



 よく成長分野とか、内需とかの話になると、社会保障関連とか、教育関連の分野が重要だと言われます。これらの分野の議論も大いに必要ですが、この発想は考えてみれば、1970年代の産業構造審議会の、チャンピオン・インダストリーの発想と同じです。つまり、どの分野にも成長分野がありますから、やはり期待成長率を高め、そのための強い経済を作ることこそが、最大の内需拡大だと思うのです。

 そのために私が言っているのは、高すぎる法人税を下げるべきということ。また、日本の弱点であるハブ空港の整備をすべきということ。また、農業についても日本の農業はクオリティーが高いのだから、法人経営ができるようにすべきということ。どれも、すごく地道な構造改革なんです。このことで、いろいろな成長分野が出てくる。加えて、特に潜在的な需要があると思われる社会保障関係。医療関係、看護関係です。そして、教育関係の規制緩和を徹底的にやることが大事です。やはり、改革なんです。非常にオーソドックスな話だと私は思います。

竹森 それは長期的には絶対に重要な課題として出てくると思います。ただ、短期的には、今回は世界的な経済危機ですから、世界的に需要が作れるかがポイントです。日本だけが需要創出をやっても、力が続かないのではないかという気もします。

 法人税の引き下げについても、長期的な日本産業の競争力を考えれば欠かせない措置でしょうが、景気の後退期には、投資の回復は、消費の回復の後に来る傾向がある。だから、景気対策としては決め手にならない気がします。

 そうなると、やはりアメリカ経済がカギになってくると思います。私は金融再生のエクスパートである竹中さんに、この点について一番お聞きしたかったのです。アメリカがこの間やったストレステストをどうお考えになりますか。私はアメリカはこれまで、リーマン・ブラザーズの無秩序な破綻を許したこと以外は、先手先手で対策を取ってきて良かったと思うのですが、このストレステストで、ちょっとおかしくなったなという気がしています。

アメリカのストレステストと「PPIP」の問題点

 このテストの最大の問題は「時価会計」を厳格に実施していないことです。つまり、2009年から2010年に満期の来る債権についての未回収額は、テストの際の計算に入っているのですが、これに対して2010年以降に満期の来る債権については、本来であれば、2011年以降にも不払いが発生することを計算に入れて、2010年末における時価評価の減少を計算しなければならないはずです。ところがそれをやっていません。

 2010年末までをテストの範囲とするという、あまり正当性のない理由をつけて、さらに2011年以降は景気が急速に回復するという甘いシナリオを前提にして、2010年末の資産の時価評価損を考慮の外に置いているのです。しかるに、テストの対象となる19銀行は、2010年末に約1000兆円の資産を持つと推定されていますから、時価評価損が5%だとしても、資本不足は発表された7兆円ではなく、57兆円に上るはずです。

 ストレステストにはもう1つの問題があります。

コメント14件コメント/レビュー

マネーサプライは民間が自由に使えるお金であり、これが増えれば景気にプラスになると考えられる。景気が良くない時は経済学者も日銀もマネーサプライを増やすべきだと言い出す。ところがバランスシート不況下では、企業がお金を借りるどころか、銀行にお金を返すようになる。そうなったら、マネーサプライはどんどん減っていく。しかしバブル崩壊以降の日本では、マネーサプライの減少は起こらなかった。企業が年間30兆円も借金を返済していたのに、増えていたのである。日本でマネーサプライが減らなかったのは、政府がお金を借りて使ったからである。政府が民間の借金返済よりよけいにお金を借りた分だけマネーサプライは伸びたのである。政府がお金を借りて使うのを財政政策というが、日本では借り手不在の中で、金融政策は完全にその効果を財政政策に左右されるのである。かつて官僚だった竹中平蔵氏が日銀の政策決定会合に出て、マネーサプライを増やせと叫んでいたが、これはいかに日本の事態を理解していないかを雄弁に物語るシーンであった。日銀は竹中氏と政府に「ゼロ金利でも民間にお金を借りる人がいないのだから、マネーサプライを増やしたいのなら政府がもっとお金を借りて使いまくることです」と言うべきであった。政府が財政赤字を出してお金を借りてくれなければ、今ごろ日本のマネーサプライは現状よりも37%減少していただろう。(2009/07/25)

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マネーサプライは民間が自由に使えるお金であり、これが増えれば景気にプラスになると考えられる。景気が良くない時は経済学者も日銀もマネーサプライを増やすべきだと言い出す。ところがバランスシート不況下では、企業がお金を借りるどころか、銀行にお金を返すようになる。そうなったら、マネーサプライはどんどん減っていく。しかしバブル崩壊以降の日本では、マネーサプライの減少は起こらなかった。企業が年間30兆円も借金を返済していたのに、増えていたのである。日本でマネーサプライが減らなかったのは、政府がお金を借りて使ったからである。政府が民間の借金返済よりよけいにお金を借りた分だけマネーサプライは伸びたのである。政府がお金を借りて使うのを財政政策というが、日本では借り手不在の中で、金融政策は完全にその効果を財政政策に左右されるのである。かつて官僚だった竹中平蔵氏が日銀の政策決定会合に出て、マネーサプライを増やせと叫んでいたが、これはいかに日本の事態を理解していないかを雄弁に物語るシーンであった。日銀は竹中氏と政府に「ゼロ金利でも民間にお金を借りる人がいないのだから、マネーサプライを増やしたいのなら政府がもっとお金を借りて使いまくることです」と言うべきであった。政府が財政赤字を出してお金を借りてくれなければ、今ごろ日本のマネーサプライは現状よりも37%減少していただろう。(2009/07/25)

貸し渋りを解消するには資本投入しか方策はない。1998年3月に日本政府は1.8兆円の資本投入を実施を実施し、それによって貸し出し態度の悪化が止まった。1995~96年に当時の総理大臣宮澤喜一氏はバブル崩壊後の銀行を見て、公的資金の投入を提案したが、マスコミが一斉に反対。高い給料の銀行員を庶民の血税で救済するなと大キャンペーンを張り、公的資金の話は潰れてしまった。日本で公的資金による資本投入の話ができるようになったのは、1997年後半に貸し渋りと財政再建で景気が大幅に悪化したからである。しかし、当時は竹下平蔵氏を始め、評論家は公的資金の投入に反対であった。日本の銀行はそもそも貸し過ぎだから、貸し出しを減らしてスリムになるべきだという考えであった。1999年に日本で第二次資本投入が行われ、銀行の態度が元にもどったあと、日本にはもう一回貸し渋りに直面した。これは「竹中ショック」と呼ばれる金融庁の暴走であった。金融庁は公的資金は国民の金だから、返すのが当たり前だと言った。資本投入はお金を貸したのではないのにである。政府が投入した資金は返すのが当たり前であれば、資本でなく借金になってしまう。そんな初歩的なこともわからない人たちが金融庁のトップにいたのである。金融庁は資本投入をした後、権力を振りかざし要りもしない発言を繰り返し、銀行経営に干渉した。これらの金融庁のよけいな干渉が銀行の自然な回復を遅らせた。金融庁の暴走をもたらしたことは金融界にとってよいことではなかった。(2009/07/25)

正論を理路整然と展開されており、興味深い内容でした。しかしながら、内需と外需および、成長の間に因果関係を求めているようでしたが、その関係性が分かりづらかったと感じます。(2009/07/25)

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三品 和広 神戸大学教授