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オバマの魔法が消えたら…

夜が明ければ薄れる国民の危機意識

  • 安井 明彦

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2009年7月23日(木)

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 ここまでのバラク・オバマ政権の危機対応の成果は、落ち込んでいた心理の改善として表れてきた。しかし、危機的な状況が過ぎたという認識は、逆に、有権者にオバマ政権への疑念を抱く余裕を与える。

 急浮上してきた追加景気対策の議論は、「変革の約束」という魔法の効力が薄れてきたオバマ政権の苦難の道のりを暗示している。

景気対策への姿勢が1カ月で正反対に

 「景気対策は2年間かけて効果が表れてくるよう設計されている。(次の対策を急がずに)予定通りに効果が出てくるまで待つべきだ」

 7月11日のラジオ演説で、オバマ大統領はこう呼びかけた。追加対策をめぐる議論が急速に騒がしくなる中で、大統領自らが国民に冷静な対応を求めたのである。

 オバマ政権の言いぶりは、1カ月ほど前とは様変わりしている。当時のオバマ政権は、現在進行中の景気対策に途中でブレーキをかけるような動きを封じ込めようとしていた。

 景気が落ち着いてきたという見方を背景に、危機対応を縮小していく道筋、いわゆる「出口戦略」の必要性が焦点になってきたことへの警戒感があったからだ。6月18日には、米経済諮問委員会のクリスティーナ・ローマー委員長が、英エコノミスト誌に「1930年代には拙速な引き締め策への転換が大恐慌からの立ち直りを難しくした」と寄稿したばかりだ。

 「現在の対策を最後まで貫徹すべき」という主旨は変わらない。しかし、1カ月前には対策の打ち切りをけん制していたのに、今ではその増額を戒めている。オバマ政権がいわば両側から景気対策を擁護する羽目に陥っているのは、力強い経済成長への道筋が見えてこないからだ。

 出口戦略の議論が盛り上がったのは、5月の雇用統計が思いのほか好調だったから。ところが、6月の雇用統計が不調に終わると、今度は追加対策が注目を集め始めた。米国経済は危機的な状況を脱しつつある。しかし、新たな成長に向けた歩みは遅く、その道筋は必ずしも平坦ではない。

景気対策に即効性は期待できないのに…

 追加対策を求める議論の裏側には、今の対策が十分な効果を発揮していないという批判がある。今年1月の時点でオバマ政権は、景気対策によって失業率の上昇を8%までに食い止められると主張した。ところが、6月の失業率は、政権の公約をはるかに上回る9.5%を記録した。ジョー・バイデン副大統領は、「(見通しを作成した当時)我々は経済を見誤った」と認めている。

 もっとも、景気対策の限界は当初から明らかだった。対策が経済の隅々に届くまでには時間がかかる。議会予算局(CBO)は、7820億ドルの景気対策のうち、2009年度(今年の9月末まで)に消化できる部分は23%に過ぎないと見積もっていた。7月初めまでに実際に支出された約600億ドルは、2009年度中の見込み支出額(減税を除く)の約半分強。実質的な支出が4月ごろから始まっていると考えれば、残り3カ月での実績としてはまずまずだろう。

 財政政策で埋められるGDP(国内総生産)ギャップには限界がある。無理やり歳出を増やせば、有権者に説明しにくい「無駄遣い」が増える。「オバマ流『ガラス張りの景気対策』」で触れたように、オバマ政権は景気対策の進捗状況を徹底的に公開し、政府に対する信頼を取り戻そうとしている。無駄遣いでGDPギャップを埋めるのは、到底容認できない選択肢だった。

 オバマ大統領は、「(立案当時に正確に先行きを見通せていたとしても)違うやり方はなかった」と主張する。「経済を見誤った」のに「対応に間違いはなかった」というのは筋が通らないとの批判もある。しかし、政権としては精一杯の対応をしたという自負があるのだろう。

効き過ぎた「ティンカーベル効果」

 オバマ政権に「想定違い」があったとすれば、一連の危機対応が効きすぎたことかもしれない。といっても、実体経済への影響ではない。心理的な効果である。

 オバマ政権の政策の効果は、「ティンカーベル効果」と形容されることがある。経済危機の真っ只中では、不安が不安を呼ぶ悪循環が経済を蝕んだ。それだけに、「これで景気は良くなる」という信頼感が広がって悪循環の歯車が逆に回り始めれば、景気回復の下地ができてくる。
 
 オバマ政権の対応は、たとえその効果が実際に本格化しなくても、その力を信じる人がいる限り危機克服に向けて威力を発揮する。まるで妖精ティンカーベルの魔法のように、というわけである。

 その好例が、金融機関の不良債権買い取り策(PPIP)である。

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