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ストレス耐性の格差縮小が自殺予防に

不況が自殺を増加させるメカニズムを探る

2009年7月31日(金)

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 6月12日のコラム「不況が自殺を増加させるのはなぜか」において、2段階で労働者が企業から放出され、残ったとしても強いストレスにさらされる人が増えたメカニズムが、1997年の経済危機以降の自殺増の一要因であると主張しました。

 コラムに多くの方からご意見をいただいたことに、感謝申し上げます。今回は、できるだけコメントにお答えしながら、(1)自殺問題を分析する上では、我が国独自の要因について注意を払う必要があること、(2)職場におけるメンタルヘルスケアを改善することによる予防が重要であること、(3)予防策を立案する時には、ストレス耐性の格差にも焦点を当てるべきであることの3つの点について、前回説明が不十分だった部分を補足したいと思います。

日本独自の要因と心理学的剖検の必要性

 我が国の自殺率は、先進主要国では最も高くなっています。このことは、日本の職域におけるストレスも先進主要国中で最も高いことを意味するのでしょうか。主要国でストレスの受け止め方が同じであれば、イエスであり、違うと考えれば、ノーです。私はノーだと思います。米国の場合を見て考えてみましょう。

 米国の自殺率は日本と比較すると高くありません。一方、リストラが行いやすく、非生産的になった労働者を放出するメカニズムについては、日本以上に徹底していると考えられます。私のモデルが米国でも正しければ、米国のほうが高い自殺率となるはずです。

 この矛盾は、ストレスの受け止め方や、ストレスを受けた上での反応の仕方が、我が国と米国では大きく違うためだと私も考えています(同様の趣旨のコメントを前回の記事にいただきました)。

 図1をご覧ください。これは、過去12カ月間に100人中精神的な疾患を発症した人の数を示す「メンタルヘルス有病者率」(注1)(%)と自殺率(対10万人当たり)を国ごとに示したものです。米国の自殺率は日本の半分以下ですが、メンタルヘルス有病者割合は、日本の3倍です。

※注1 面接調査を通じ、調査対象地域において、国際的な診断基準で、メンタルヘルス有病者と診断された人の割合。WHOが推進した国際的な疫学研究(我が国では「こころの健康に関する疫学調査」として実施された)の成果。

 社会全体におけるストレスの水準は、おそらく米国のほうが高いはずですが、ストレスを受けた結果、人々の反応が、社会の違いを反映して異なっているためにこのような結果になっているのではないかと考えられます(注2)

※注2 米国においても雇用不安と心身の不健康の関係を示す研究結果が複数あります。例えば、Burgard, S., Brand, J., & House, J.(2006) “Job Insecurity and Health in the United States”, Report 06-595, Population Studies Center, University of Michigan Institute for Social Research.

コメント19件コメント/レビュー

桑原さんの論考は、「常識」だと思ってたんですが……。97~98年を境に、日本社会が自殺率を引き上げる方向に地殻変動を起こしたのは、統計を見る限り、自明の理では?▼どんな問題でもそうですが、個々人に対するミクロな対応と、国家レベルのマクロな対応は切り分けないと、改善効果は得られません。▼この世の多くの問題は、マクロで見た場合、最終的には経済問題に帰結します。教育や世代論に原因を求めるのは、問題のすり替えです。教育が問題なら、予算配分を厚くすればいいだけの話です(方法論はまた別問題です)。▼ミクロな問題は“カネ”だけでは改善しません。特にうつ病治療はその典型でしょう。しかし、マクロな問題は、たいてい“カネ”で改善できます。▼世界での競争力を維持しながら、どう国富を分配するかのバランスが難しいため、具体的な解決策を提示しがたいのは事実でしょう。ただ、自殺率の増加は、企業活動最優先の経済成長一本槍という国家戦略が行き詰ったことの証左ではないでしょうか?▼自殺問題の改善策は、日本という国家をどう運営していくかに行き着くと考えます。国民一人一人の価値観が転換しない限り、おそらく根本的な改善はありえません。▼企業に責任のすべてを押し付けるわけにはいきませんが、個人的には桑原さんと同様、企業の引き受けるべき責任が軽くなり過ぎたとも考えています。(2009/08/17)

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桑原さんの論考は、「常識」だと思ってたんですが……。97~98年を境に、日本社会が自殺率を引き上げる方向に地殻変動を起こしたのは、統計を見る限り、自明の理では?▼どんな問題でもそうですが、個々人に対するミクロな対応と、国家レベルのマクロな対応は切り分けないと、改善効果は得られません。▼この世の多くの問題は、マクロで見た場合、最終的には経済問題に帰結します。教育や世代論に原因を求めるのは、問題のすり替えです。教育が問題なら、予算配分を厚くすればいいだけの話です(方法論はまた別問題です)。▼ミクロな問題は“カネ”だけでは改善しません。特にうつ病治療はその典型でしょう。しかし、マクロな問題は、たいてい“カネ”で改善できます。▼世界での競争力を維持しながら、どう国富を分配するかのバランスが難しいため、具体的な解決策を提示しがたいのは事実でしょう。ただ、自殺率の増加は、企業活動最優先の経済成長一本槍という国家戦略が行き詰ったことの証左ではないでしょうか?▼自殺問題の改善策は、日本という国家をどう運営していくかに行き着くと考えます。国民一人一人の価値観が転換しない限り、おそらく根本的な改善はありえません。▼企業に責任のすべてを押し付けるわけにはいきませんが、個人的には桑原さんと同様、企業の引き受けるべき責任が軽くなり過ぎたとも考えています。(2009/08/17)

一定の仮説ものと確率計算で予知をするという考え方には興味を持ちましたが、自殺に限って言えば、自殺の要因を全部揃えてそれぞれが自殺に及ぼす確立を計算しなければならないしでしょう。この手の分析にはパス解析というのがあって社会学心理学等で使われています。国際的比較には更に文化的人種的要因が加わるので問題はもっと複雑になります。厳密には壮大な研究が必要でしょう。それよりも当面は臨床的な知見からのアプローチが企業には有効でしょう。コメントにもあるように自殺願望は将来の見通しの立たない閉塞感が主な症状でしょう。これに鬱病が加わると最悪の結果になります。悩みを一人で抱え込まないで神経科や心療内科への早めの受診をお願いします。日本人は格別恐怖心の強い遺伝子を持った人が多いそうですし、自死を美化する伝統もあります。分かりきったことですが企業は社員の精神的健康について十分留意した経営をする必要があります。一心理学者(2009/08/03)

筆者の趣旨に賛同し現段階は、試論であるという文字に感銘したので、筆者にコメント致します。(小生のカオスを見える化して多くの人に伝えてください。そして一人でも自死者が減ると幸福です)<バックボーン>・45歳(男) 妻(43歳) 子供(12歳男)・小生、妻ともどもにうつ病経験者・妻:アルコール中毒現役・2か月前に再就職(約一年の浪人生活あり)・現在:視点を逆転することにより、”至福”の状態<カオス>・鬱と自死を考えることに”因果”関係はない。(相関有)  小生:まったく考えなかった。  妻:常に考えていて何度も行動した(不成功)・自死は、死にたいのではなく、生きたいから  死ぬことが目的ではない。現状の辛さから解放されたいだけ・ストレス耐性を上げることが、自死者減少には短期的には貢献するが、長期的には逆の結果になるような気がする。・衣食住+就(労)(業)(学)(etc)が生きるために絶対に必要(衣食住だけでは、絶望感に陥る)・絶望感:生きる上で、これほど苦しいことは無い!自死を選択すると言うことは、宇宙の原理原則から言ってあり得ないこと。それが起こっていると言う事実は、何かのメッセージ。どうとらえるか?自死者を減らすと言うことを目的にしたのでは、自死者は減らないと強く思う。以上 ご推察下さい。(2009/08/02)

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