鳩山政権が本格的に始動し、新たな視点による経済政策が打ち出されています。これまでの、米国の過剰消費が世界経済を支える構図は続かないことが分かった今、次の成長戦略として「内需拡大による成長」が叫ばれています。経済危機前のように、世界経済を米国の消費が支えるという構図は終わりました。また、米国の役割を中国などのアジア諸国に担ってもらうという発想だけでは、新たな経済の枠組みは見えてきません。
日本の政治と経済が目指すべき方向はどこなのか――。「日経ビジネスオンライン」で人気コラムを執筆していただいているお2人に、この問題について2回のシリーズで議論していただくことにしました。まずは竹森教授の新著『経済危機は9つの顔を持つ』をベースに、危機の本質と問題点について整理するところから議論を始めていただきます。
小峰 今回出版された『経済危機は9つの顔を持つ』はとても面白く拝見しました。私が評価している点は3つほどあります。
1つはタイムリーということです。本というのは問題が起きてから、一生懸命考えて分析して出すもので、だいたい、本ができた頃にはその問題は終わってしまっているということが多いのですが、この本はまさに現在進行形の問題を取り上げている点が非常にありがたいと思います。
2番目はとても多面的な問題を取り上げている点です。すべての問題に必ずしも解があるわけではありませんが、我々がいかにいろいろな問題に直面しているかということが分かります。
3番目は対談形式で非常に読みやすくて、専門的な知識のない人にもお薦めできる点ですね。
竹森 ありがとうございます。すべては金融から始まりましたから、金融が中心テーマになるのは当然と思っていたのですが、日本の場合でも経済危機の影響がいろいろな方面に出ました。
今回は、金融よりも実体経済の方に打撃が大きく、特に輸出が大きく落ち込みました。でも、まさかそれがこんなパニックにつながるとは。耐久消費財と資本財が日本の主要な輸出品である以上、世界景気が下降すれば輸出が落ち込むのは当然と思っていたんです。
ところが国内、とくに政治の反応はパニックそのものだった。その結果、適切な提案もなされたけれど、慌てふためいた提案もなされました。なにしろ日本経済を根本から変えろというのですから。
またもや構造改革をしろという議論です。構想改革は長期的な戦略なはずなのに、経済危機に対する処方箋として議論された。議論の混乱振りは目を覆うばかりでした。ですから、『経済危機は9つの顔を持つ』では、落ち着いてこの問題を議論できる方を選び、対談させていただきました。
医療の問題はとくに今回の経済危機とかかわりがあるわけではありませんが、危機をきっかけに混合診療の解禁といった話がでてきました。それは場違いじゃないかということで、議論に含めたのです。混合診療を解禁するにしても、どの分野を解禁するのか決めるのに5年はかかるでしょう。それを経済危機対策として取り上げる感覚がおかしいのです。
どさくさに紛れ、政治的に飲みにくいことを飲ませようという心積もりがあるのかもしれませんが、政治家ならともかく、経済学者は問題をきちんと整理することが大切な仕事だと思うのです。
経済危機と構造問題は区別して考えるべき

小峰 経済危機と構造問題を区別するのは非常に重要なことだと思います。景気が悪いというのは、短期的な問題で、これは政策割り当てからすれば財政金融政策で短期的に対応すべきことです。また、構造問題であれば、景気が良くても悪くても改革しなければいけません。
これだけ景気が悪くなって、経済が落ち込むと、実は日本はいろいろな構造的な課題を持っていたんだと分かってくるという面もありますから、そこは分析する価値があると思います。
ただ、確かに過剰に反応すると、「お湯と一緒に赤ん坊も捨ててしまう」ということわざのように、本来、変えなくてもいいところまで変えてしまうということが起きますから、この議論は重要だと思います。
竹森 日本における構造改革についての概念に、対外政策が含まれていないというのも今回の対談で分ったことで、ショックを受けました。私は今回の経済危機後、どのようにアジアの金融アーキテクチャーを構築するかは、日本の将来に取り最重要なテーマだと思うのです。
この危機で米国の需要に依存した世界経済の仕組みに変化が起こるのだとすると、アジアの市場が重要性を増すことは確実です。だからといってアジア市場に依存した経済への移行は自動的なものではない。そのための国際取引円滑化の仕組みが必要だと思います。
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1956年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部教授。81年同大学経済学部卒業、86年同大学院経済学研究科修了。89年米国ロチェスター大学経済学博士号取得。主な著書に『







