数年前、配偶者がリタイアを迎えるという方のご相談をお受けしました。現役時代は転勤の連続で家を持たず、リタイアを機に住まいを購入される予定とのことでした。今後の生活設計に当たって、亡くなるまでにかかる住まいのメンテナンスコストを教えてほしいとのご相談でした。「それが分からない限り、私の老後のプランが立たないんです」と深刻なご様子です。
住まいの購入もされておらず、候補となる物件もまだこれから探すという段階でのこと。
堅実に貯蓄を積み上げられ、少なからぬ退職金も手にしているのに、この憂鬱さは何だろうと不思議に思ったものです。
働く世帯の貧困率が高い日本
一方、日本の現役世代に目を転じてみましょう。経済協力開発機構(OECD)は2009年雇用見通しの中で、働いているにもかかわらず貧困状態の世帯が貧困世帯の8割以上を占め、OECD加盟諸国平均の63%を大きく上回っていると指摘しています。また、日本は職に就いている人が最低1人以上いる家計に属する人の11%が貧困であるとも指摘しています。リタイア後の心配どころか、現在を生きるのに精いっぱいの人たちが多くいるということのようです。
別のデータもこの状況を裏付けています。都留文科大学の後藤道夫氏によりますと、1997年に142万人だった「失業かつ雇用保険給付なし人口(推計)」は1999年に211万人となり、その後も200万人を切ることはないそうです。
つまり、雇われていながら、雇用保険に加入していない(対象とならない)人がたくさんいて、失業というリスクをカバーするためのセーフティネットからこぼれ落ちているのです。これらの人たちは、家計を補助的に支えるために非正規雇用という選択をした人ばかりではありません。1997年に208万人(男女計)だったフルタイム・自律生活型の非正規労働者数が、2007年には434万人(同)に急増しています。
新たなセーフティネットがスタート
失業に対するセーフティネットの目が粗いことから、最後のセーフティネットであるはずの生活保護が最初のセーフティネットとなっている現状もあります。
しかも、生活保護の申請窓口では、たとえ基準を満たしていても受けさせないようにする“水際作戦”が行われているとも言われています。会社の寮などに住んでいた人は職と同時に住まいを失ってしまいます。このような事態を受けて、自民党政権下で「雇用と住居を失ったものに対する総合支援策」が策定されました。
非正規労働者について雇用保険の適用を拡大し給付を拡充し、雇用保険から受給できない人に対しての職業訓練の拡充や、生活支援給付などが行われるようになりました。
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