「データが語るホントの経済」

密かに広がる住宅ローン延滞の危機

「日本版サブプライム」という悪夢の可能性は?

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2009年10月9日(金)

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 「ボーナスのカットで住宅ローンを返せなくなった」、「ある地方銀行では、住宅ローンの延滞が増えていることが問題になっている」といった話がささやかれ、日本でも住宅ローンの返済が滞る事例が増えてきたといわれています。

 米国のサブプライムローン問題がリーマンショックのきっかけであったように、住宅ローン問題は、個々の家計だけでなく、金融システム、経済全体にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

 今回は、日本では住宅ローンの延滞状況の全体像を把握できないという重要な問題を指摘した上で、日本で住宅ローン問題が深刻となる可能性について、家計と金融システムの2つの面から考えていきたいと思います。

確認できるデータがない日本の住宅ローン延滞状況

 日本では、どの程度住宅ローンの延滞が増加しているのか、それは金融システムや経済全体の動きに影響を及ぼす程度なのかなど、問題の大きさを把握することは容易ではありません。なぜなら、住宅ローンの返済の滞りを端的に表すデータが存在しないからです。

 米国の場合、米国抵当銀行協会(MBA)が住宅ローンの延滞率を公表しています。このデータによれば、2009年4−6月期の住宅ローン延滞率(季節調整値)は、全体で9.24%と過去最高でした。信用力の低い個人向けのサブプライムローンの延滞率は25.35%と大変高く、信用力の高い個人向けのプライムローンの延滞率も6.41%に上昇しています。

 このように、米国では、様々な政府の住宅市場対策にもかかわらず、住宅ローンの返済問題は以前に比べても悪化していますが、その全体像については、誰もが容易に知ることができます。

 しかし、日本にはこのようなデータがありません。かつては、住宅金融公庫の貸出債権に占める延滞債権や破綻先債権の割合の推移から、おおよその動向を把握することができました。個人向け住宅ローンの貸出残高の中で住宅金融公庫が占める割合が約3分の1と相当の部分を占めていたからです(図1)。

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 しかし、行政改革により、住宅金融公庫は直接貸出業務を徐々に縮小し、2007年3月に廃止されました。後継組織である住宅金融支援機構は、既存の融資は引き継ぎましたが、主な役割は証券化業務などで、新規の直接融資は災害融資などを除き原則として行いません。このため、2008年度では、住宅ローン貸出残高に占める住宅金融支援機構の構成比は17.2%まで低下しています。

 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の延滞率【(破綻先債権額+延滞債権額+3カ月以上延滞債権額)/総貸付残高】の推移をみると、2006年度に2.52%だった延滞率は、2007年度には3.58%にまで急上昇し、2008年度には3.52%にやや低下した状況です(図2)。

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 このデータからは、最近は延滞に歯止めがかかっているように思えます。しかし、雇用情勢の悪化は2009年度に入ってから深刻化しているものなので、2008年度時点では住宅ローンの返済問題はまだ深刻ではなかったのかもしれません。また、新規貸出がほとんど含まれておらず、貸出残高に占める割合も低下しているデータで、住宅ローン返済の全体動向を判断することには限界があるとも言えます。

 一方、金融庁は、2009年7月に、全国の金融機関に対し、住宅ローンの返済期間の延長など、柔軟に返済条件の見直しに応じるように求める通達を出しました。このような通達が出される背景には、返済困難なケースの増加があると考えられます。

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著者プロフィール

澤井 景子(さわい・けいこ)

元連合総合生活開発研究所主任研究員。1994年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。内閣府国民生活局調査室補佐などを経て2008年より連合総研。著書に『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』(日経BP社)がある。『政権交代の経済学』(共著)。

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