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ドバイ・ショック。そして過剰投資と覇権国

仮説としての20世紀に対する「21世紀感」

  • 立田 博司

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2009年12月1日(火)

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 これまで、その金融危機の根幹を考えるうえでの3つの過剰問題、すなわち(1)米国の過剰負債に支えられた「過剰消費」、(2)中国に代表される新興国に対する「過剰投資」、(3)それを支えてきた過剰なリスクテークに支えられた「過剰流動性」、について、30年間という歴史を振り返りながら、現在の位置を確認してきました。

 前回は中国に代表される新興国への「過剰投資」とそれを支える「過剰流動性」について詳述しましたが、先週来、その中でも脆弱な新興国であるドバイが引き金となって、世界中に「ドバイ・ショック」を引き起こしています。

 人工リゾート島や高層建築でバブル的な匂いが強かったドバイですが、そもそも安定的な収入がない非産油国が、自身を魅力的に見せて投資を呼び込み、さらに負債を膨らませて不動産バブルを作ってきたわけですから、前回指摘した「過剰投資」を「過剰流動性」で支えてきた新興国バブルの典型例なのです。その意味では、ドバイでの債務返済延期そのものに驚きはありません。

 ただ、直接のインパクトはともかく、「過剰流動性」にわいていた世界の投機マネーにとっては、これがきっかけで資金が逆流するのかどうかが焦点になりそうです。私自身は、昨年来続いている金融危機を発端とした過剰の後処理は、まだまだ始まったばかりであるにもかかわらず、ここまではさらなる「過剰流動性」を作り出して問題を先送りしてきただけなので、今後も脆弱な地域からのニュースは出続けると見ています。今回のドバイ・ショックが「過剰流動性」を生み出している投機マネー逆流への転換点になる可能性は高いと考えています。

 今回はこうした金融危機や「過剰流動性」、そしてバブル崩壊が、50年単位の技術革新の波や100年単位の覇権サイクルにおいてどのようなタイミングで起こってきたのかを考えてみることも含めて、20世紀から21世紀にかけての劇的な前提の変化とそれを引き起こす背景について、考察を進めていきたいと思います。

覇権国は初期にバブル

 国際政治の主役となる覇権国家が、約100年、すなわち1世紀単位で交代してきたという考え方は、米国の政治学者ジョージ・モデルスキーによって示されました。モデルスキーは軍事力の集中度を軸にして考えましたが、これに経済の側面を加えて考えてみると、大まかには16世紀のスペインに支えられたイタリア、17世紀・18世紀のオランダ、19世紀の英国、そして20世紀の米国という流れで覇権国が交代してきたと考えられそうです。

 覇権国が100年という単位で、地中海を巡り大西洋へ、そして大西洋を越えて米国に移ってきたと見ることができそうです。その流れで考えると、後ほど述べるように、太平洋を越えてアジアに移行してくる日もそう遠くない将来かもしれません。

 覇権国の栄枯盛衰を金融・経済の側面から観察すると、興味深い仮説が立ってきます。覇権国においては、覇権国初期において、その前の覇権国の没落とともに、前覇権国から大規模な期待とお金が流れ込むことによって過剰投資、すなわちバブルが起こることが多いようです。そしてバブル後の暴落を適切に処理し体制を強化することによって、覇権国の地位が盤石になりその後に栄華を極めます。

 ただ覇権国も中盤に差しかかると新しい技術が勃興し、それに伴って再度バブルの様相を濃くすると同時に、新しい技術が人々の手に渡る時には技術が覇権を脅かして、バブル崩壊とともに没落する、という運命を辿るのです。そして長期金利は、覇権国初期あるいは中盤にピークをつけた後、覇権を次に渡す時には期間中最も低い長期金利になっていることが多いようです。

 例えば、日本の長期金利が世界の歴史上最低水準になった時に引き合いに出されたのが、16世紀中頃から金融業で栄えたイタリアのジェノバです。その覇権末期の1611年から1621年までジェノバでは超低金利を経験したのですが、1620年頃には金融危機とともにオランダに覇権を譲っています。

 そのオランダのアムステルダムでは、農業・繊維と造船業に始まり、1637年のチューリップ・バブル崩壊の危機を乗り越えて金融産業を強めていきました。18世紀後半には長期金利が2%台にまで下がって覇権の終わりを迎えています。その後を次いだのが英国ロンドンですが、ここでも1720年に南海会社バブル事件と言われる株式・通貨のバブル崩壊を経て、シティが強化されました。そしてまた覇権を譲る19世紀後半には、長期金利の低迷が訪れるのです。

 長期金利が低迷した1870年から1900年前後には、世界の植民地化と鉄道・蒸気船の普及による交通網の急発達という技術革新により「国際経済化」が進展する中で、1873年の鉄道バブル崩壊により急激な「デフレ」が長く続きました。また財政赤字が膨大で債務返済に苦しみ、1882年には株式投機バブルが破裂してロンドンのシティでは銀行が数多く倒産の憂き目に遭いました。この時期から、欧州の長い不景気を理由に米国への移民が急増し、覇権が米国へと移っていくのです。

コメント6件コメント/レビュー

後半の「個人が企業と対等に」から、違和感を覚えました。ネットに流れる情報は、個人が理解するにはあまりに膨大で誤謬が混在しすぎていると思います。それゆえ、個人が企業に対して対等になれるとは思えないのです。ネット化は、情報処理力において、更なる格差を生み、草食系の求める見えない価値は、隠れた悪意によって創造され、ハーメルンの笛吹きによって、彼方へ導かれてしまうかも知れません。21世紀が本質的な価値に満たされるためには、強力なヒトの善意が必要ではないでしょうか。(2009/12/01)

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後半の「個人が企業と対等に」から、違和感を覚えました。ネットに流れる情報は、個人が理解するにはあまりに膨大で誤謬が混在しすぎていると思います。それゆえ、個人が企業に対して対等になれるとは思えないのです。ネット化は、情報処理力において、更なる格差を生み、草食系の求める見えない価値は、隠れた悪意によって創造され、ハーメルンの笛吹きによって、彼方へ導かれてしまうかも知れません。21世紀が本質的な価値に満たされるためには、強力なヒトの善意が必要ではないでしょうか。(2009/12/01)

「個人が企業と対等に」なるというのは疑問です。このサイト自体が、誰がどのページをどれくらい読んでいるかを記録に残しているように、DB技術によって、むしろ企業や国が個々人をきめ細かく追跡できる時代になっています。「情報発信」といっても、意見が注目されるのは一部のアルファブロガーや著名人だけ。ネット掲示板に機密情報のリークや誹謗中傷を書けば、すぐにお縄。匿名かつ自由なメディアというのは幻想で、トイレの個室のように、互いに顔は見えなくとも上から見れば丸見えなのがネット社会です。これからは、グループでの連帯には武器となっても、同調者のいない個人は封殺されやすくなるでしょう。(2009/12/01)

お話しが大きすぎて、興味は湧きますが、真偽のほどは分からないという所でしょうか。金融資本主義の破綻が現実になった現在次の経済は何が牽引するのかが見えません。鳩山政権の景気対策は今のところコンクリートから人へだそうですが、果たしてそれだけで景気が回復するか皆疑問に思っているでしょう。そういう具体的問題に答えと言わなくても見通しができるお話しを次回以降期待しています。nandemoya(2009/12/01)

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三品 和広 神戸大学教授