自動車販売台数、貿易輸出額、粗鋼生産量…。数々の分野で世界一に躍り出る中国。来年の予想経済成長率も9%と日米欧を大きく引き離す。しかし、急激な経済成長の影では過剰設備や貧富の格差拡大、産業の構造転換の遅れによる大卒雇用の低迷など、様々な問題への対応を迫られている。
日経ビジネス2009年11月30日号では、特集「中国、独り勝ちの代償」として個別の経済指標を追うだけでは読み取りにくいリスクの実態と、その裏あるビジネスとしての勝機はどこにあるかを迫った。日経ビジネスオンラインでも、それに関連した内容を紹介していく。
第3回は、今や中国で社会問題ともなっている大学生の就職問題について。中国教育部の発表では、大半の大学が卒業式を終えた7月時点でも就職率が68%にとどまった。「超氷河期」などと言われながらも大学生の就職率が9割を超える日本に比べれば遙かに厳しい状況にある。
そこで現地の大学4年生の4人に集まってもらい、就職活動に関する座談会を開いた。日本とは異なるシューカツの進め方や中国特有の戸籍制度が職業選択に及ぼす影響などについて、赤裸々に語ってもらった。
―― まずはそれぞれ、卒業後の進路希望を聞かせてください。
リン君(北京連合大学で機械工学を学ぶ4年生男子。大学は一般レベル) もちろん就職です。大学で学んだ知識が発揮できる仕事に就けたらいいですね。
シュウさん(北京医学大学の薬学部4年生女子) 私の専門は薬学なので、とりあえず大学院には入りたい。だけど大学院の試験はとても厳しいので、受からなかったら就職しなければならないかも・・・
リュウさん(中央民族大学の日本語学科4年生女子) 私は日本に留学したいのですが、もし良い仕事があったら就職してもいいと思っています。だから留学の準備をしながら、情報を集めているところです。
ソン君(難関校の1つ清華大学でソフトウエアを学ぶ4年生男子。成績優秀のため大学院進学試験が免除された) 僕はまず大学院で博士号を取るつもりです。将来は公務員になるかもしれません。
親が仕事を探すことも
―― (座談会を開いたのは10月中旬)新学期が9月に始まったばかりですが、就職活動はもうスタートしているんですか?
リュウさん 私の友人はこないだ面接を受けに行きました。一般的には大学4年生の11月頃から就職活動が始まるのですが、今年は少し早いのかもしれません。
リン君 実は、今日この座談会が終わったら自分の大学に戻って、ある企業の就職説明会に出席するつもりです。僕にとっては初めての説明会だけど、周りの友人はもう結構動いています。
説明会があるだけ、今年は去年よりマシだと思いますね。去年の今頃は金融危機の影響が一番ひどい時期だった。だからいくつかの会社は大学での就職説明会を予定したにもかかわらず、実際にはやってくれませんでした。
―― 日本では学生が各企業にエントリーして説明会に出席するのが一般的なやり方です。中国では逆に企業が大学に来てくれるんですね。
リュウさん 各大学には就職説明会を担当する部署があって、その部署がいろんな会社に連絡して説明会に来てもらいます。大学は大部分の学生にとって都合がよい日程を選んで説明会を開きます。だから説明会にはもの凄く人が集まります。
本記事興味深く拝読しました。中国の就職難のニュースなどに触れることはありますが、当事者の声を聞くことはほとんどないからです。意外とまっとうのようで、しかし少し日本人的な考え方とは違うのだな、という発見がありました。ところで、2ページ目に「将来成功できる確立が高まる」との記述がありますが、これは「将来成功できる確率が高まる」の誤記ではないでしょうか。記事そのものは面白いのにこのような誤記があると意識がずれてしまい残念です。今後もさまざまな観点からの記事を期待します。(2009/12/02)