「「真性デフレ」の恐怖」

価格破壊の連鎖、塾もクルマも

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2009年12月8日(火)

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真性デフレの大波は、価格水準自体を1980年代にまで引き戻しつつある。このままでは一握りの「勝ち組」だけが生き残り、あとは死屍累々たる風景が残るのみ。低価格を支持する消費者も、いずれはデフレの悪循環に巻き込まれる。

 新宿西口店は1200人、銀座店には2000人の大行列ーー。11月21日、「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは創業60周年の感謝セールを開始した。初日は通常1500円で販売している保温下着の「ヒートテック」を各店先着200人に限り600円で販売したほか、通常は4足で990円の靴下を60人限定で1足10円にした。

 しかも路面店を中心に約400店では午前6時という早朝に開店し、先着100人にパンと牛乳を配った。この「朝食付き」の特別セールに、東京や大阪などの各店では買い物客が未明から列をなした。東京都内の店舗にわざわざ電車で足を運び、午前5時すぎから並んだ40代の主婦は、目当ての商品が買えず、「電車代が無駄になった」と悔しがる。

「30年前より安い」居酒屋

 ファーストリテイリングがフリースブームで営業利益1000億円を超えたのは、政府が「緩やかなデフレ」を認めた2001年だった。そして、再び政府がデフレ宣言をした今年、同社は過去の記録を塗り替えて、史上最高益を達成した。

 価格破壊の「勝ち組」ユニクロが生み出した夜明け前の大行列は、「真性デフレ」の象徴的な光景である。

 今、世の中には低価格と値下げの嵐が吹き荒れている。

 「約30年前に居酒屋を出店した時よりも今の価格は安い」。業界に先駆けて270円均一の居酒屋を出店した三光マーケティングフーズの平林実社長はしみじみと語る。当時、平林社長が東京・渋谷に出していた店では、生ビールが390円、サワーが290円、料理も最低で380円だった。

 同社が低価格の均一料金店を始めたのは今年5月のことだ。当初は300円均一の店を出したが、客の反応はいま一つ。そこで299円に下げ、最終的には270円に落ち着いた。これまで出してきた「月の雫」や「東方見聞録」といった店舗の多くも270円均一店に衣替えした。

 低価格店の成功もあって、270円均一店に変更後、来店客数は前年同月比で20%増、売上高も10%増えた。しかし、平林社長はさらなる値下げを「検討中」だという。

 デフレの脅威にさらされているのは衣料や食品などの身近な商品だけではない。長引く消費不振に、進むグローバル化と円高は、これまで低価格化が比較的緩やかだった商品やサービスまでも「値下げ」の渦に巻き込み始めた。

 その1つが教育分野。「2010年は授業料の割引を検討している」。そう話すのは、静岡、愛知、山梨など東海エリアを中心に学習塾を運営する秀英予備校の友重博行・静岡第一本部本部長だ。同社では2007年から小学1年〜中学2年生の冬期講習を無料化するなど、少子化対策として短期の講習については低価格路線を取ってきた。この路線をさらに拡大し、来年は通常授業の割引にも踏み切る。

 理由はリーマンショック以降の入学者の減少だ。今年1月時の入学生徒数は前年同月比で微減、新学期が始まる3月には入学者数が「かなり落ち込んだ」(友重氏)。教育費は家計の中で「聖域」とも言える分野。そこにも手をつけざるを得ない、消費者の苦しいやりくりが垣間見える。

「マークX」は約10万円値下げ

 これまで新型車の価格は旧モデルを上回るのが当たり前だった自動車にもデフレの波は押し寄せている。

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著者プロフィール

小平 和良(こだいら・かずよし)

日経ビジネス記者。大学卒業後、化学メーカー、通信社での勤務を経て2000年に日経BP社入社。日経ビジネス編集部にて自動車業界や金融業界を担当。2006年に日本経済新聞社に出向。2009年に日経BP社に戻り、現在は流通業界を担当

細田 孝宏(ほそだ・たかひろ)

日経BP社入社後、経済誌「日経ビジネス」を振り出しに、建築誌「日経アーキテクチュア」、日本経済新聞証券部(株式相場担当)で記者活動に従事。「日経ビジネス」では主に自動車、流通、商社などの各業界を担当し、現在、米国特派員として、ニューヨークに駐在している。



このコラムについて

「真性デフレ」の恐怖

急激な円高、ドバイショック…。世界経済が再び揺れ始めた。国内では深刻な「需要不足」で価格破壊が進み、デフレに突入。政府・日銀は緊急対策を発表したが、猛烈な経済収縮は止まりそうにない。

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