ヤシの木形の人工島や摩天楼など派手な開発を進めてきた中東ドバイ。政府系持ち株会社「ドバイワールド」などが抱える債務の返済猶予を要請した。問題は世界経済に波及。英経済紙は世界の金融システムの脆弱性を指摘する。
ドバイショック――。世界一高い超高層ビルを建てるなど巨大不動産開発プロジェクトを次々に打ち上げてきたアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国政府が11月25日、政府系持ち株会社ドバイワールドなどが抱える債務すべてについて返済の猶予を要請すると発表した。これにより信用不安が広がり、日米欧の株式市場が急落するなど世界の金融市場に衝撃が走った。
ドバイ向けには日米欧の金融機関が融資しているが、中心は大手英銀と言われる。英経済紙フィナンシャル タイムズ(以下FT)は、ドバイショックをどう報じているのか、追ってみた。
ドバイ首長のワンマンを批判
FTは25日夜、オンラインに「ドバイ、返済猶予要請の衝撃」と題した記事を掲載。ドバイ政府による発表が、12月6日までほとんどの事務所が閉まるイード休暇が始まる前日、しかも地元の株式市場が閉まった後に行われた事実に触れ、「ドバイの想定外の動きに一部の投資家は激怒している。ドバイ政府高官らは、景気後退や不動産価格の暴落にもかかわらず、今や総額800億ドル(約7兆2000万円)にも上るドバイの債務について、その支払期限はすべて守ると何カ月も確約してきたからだ」とドバイ政府の情報開示の在り方を厳しく批判した。
中東担当エディターも翌日、「いつものことだがドバイの問題は、誰1人として事実の全容をつかんでいないことだ。常にトップダウンで突然事が決まる」と、ドバイ首長国のシェイク・ムハンマド首長のワンマンぶりを批判。「周囲が彼の逆鱗に触れることを恐れて債務の実態を知らせてこなかったことが問題への取り組みを遅らせることになった」とも批判した。
産油国に囲まれながら石油資源をほとんど持たないドバイは、野心的なムハンマド首長の下、借り入れを繰り返してはヤシの木の形をした人工リゾート島など、派手な不動産開発プロジェクトを次々に立ち上げ、中東の金融センターとしての地位確立に邁進してきた。だが、昨秋に金融危機が発生するや不動産価格は急落、資金繰りに窮した。ドバイがようやく5年物の政府債100億ドル(約9000億円)を発行し、同じUAEのアブダビ首長国に引き受けてもらったのは2月の話だ。
なぜ助けを仰ぐのに時間を要したのか。「プライドの高いムハンマド首長は、ドバイのイメージダウンにつながると、救済を受けることには否定的だった」とFTは分析する。
実際、「2月以降もドバイの政府高官は、あれ(アブダビによる政府債引き受け)は救済ではない」と様々な理屈を展開し、強く否定していたという。
ひと息ついたはずだったが、「5月にドバイの置かれた状況を深く理解し、危機から救い出すべく中心となって動いていたナッサー・アル・シェーク財務長官が降格された」ことが大きな打撃となったとFTは言う。
力ある人物を飛ばす一方で、自分に近い者は優遇する同氏の人事に見られる権力の一極集中には批判が集まっており、「意思決定に透明性がない以上、ドバイを巡っては今後、世界は事実よりも噂や推測で動くことになる」と取り巻く環境は厳しい、と断じた。
アブダビの出方を注視
この中東担当エディターは29日、さらに「ドバイ周辺国の心配」と題して、ドバイ救済がいかに容易ではないかについても言及。まず、欧米が金融危機以降抱いてきた「中東諸国は、金融危機で苦境に陥った際も欧米の金融機関を支援するほど資金豊富だったから、どんなに負債規模が大きくても破綻させたりはしない」との楽観論は、ドバイワールドの問題では通用しないと指摘。その理由を次のように説明する。
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