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隣の芝生は青くなかった。さぁ、どうする?

企業が「良かれ」と思って作っても売れない

  • 立田 博司

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2009年12月15日(火)

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 「ドバイ・ショック」からようやく立ち直ったかに見えましたが、先週はギリシャやスペインの格付け引き下げ問題が浮上してきました。以前から、財務的に弱いとされるPIGS諸国(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)は要注意だと言われていましたが、「ドバイ・ショック」に驚いた格付け会社が信用不安再燃の引き金を引いた形になりました。

 ただ前回述べたように、世界の不良債権処理はまだ始まったばかりなので、これからも弱いところから問題が顕在化していくでしょう。そして、欧州の問題が顕在化してくる中で、これまでドルの代わりに買われてきたユーロに動きが出てくるかもしれません。

 また英国では、金融機関が支払う一定額以上のボーナスに時限的に課税することになりました。一方米国では、ちょうどバンク・オブ・アメリカとシティグループがTARP(不良債権救済プログラム)により注入された資金を返済するために資金調達しているその時期に、ティモシー・ガイトナー財務長官がTARPに基づく金融支援策の実施時期を2010年10月まで延長すると発表し、大きな破綻に備える準備を始めたようです。

 12月11日には米国下院で「金融規制改革法案」が可決され、新しく創設される「金融安定協議会」に巨大金融機関を監視するだけでなく強権を発動できる権限を与えることや、大手金融機関の破綻時の秩序だった清算や信用格付け機関の改革、デリバティブ規制なども盛り込まれました(もっとも、審議中の上院案とは異なるようなので、最終的には来春辺りになるかもしれません)。金融業を普通の産業にするという金融改革が、ゆっくりと、でも確実に広がってきたように感じています。

「技術指向のパラドックス」に陥る

 こうして世界が過去数十年間の膿みを出して新しく生まれ変わろうとする中で、前回述べた「21世紀感」における付加価値の「目に見えない価値」「本物の価値」へのシフトや、先進国の生活防衛消費、技術変化の波、新興国の消費国化を背景とした「ダウンサイジング」という大きな変化が、企業のあり方をどう変えていくのかについて、今回は考えてみたいと思います。

 前回、付加価値変化の話の中で任天堂の「Wii(ウィー)」というゲーム機について触れました。それではWiiのようなゲーム機が、なぜ任天堂にはできてソニーにはできなかったのか、というポイントから始めてみましょう。

 私は1つには、任天堂という会社が持っている会社の文化、社風、組織風土が、根本的には花札から始まった「エンターテインメント」「楽しみ」にあるからだと考えています。任天堂は、花札によって提供した「楽しみ」を、ゲーム機へと「道具」を進化させてきただけで、「目に見えない価値」である「楽しみ」をお客様に提供するという目標においては軸がぶれなかったからこそ、Wiiという「楽しみ」を提供する機械を考え出すことができたのではないかと思います。

 その任天堂と比較すると、(誤解を恐れずに大胆に言えば)ソニーは創業以来モノ(道具)作りの会社であったと思います。ソニーのモノ作りにおいても、1980年代までは「ウォークマン」に代表される「楽しみ」を創造するための精巧なモノ作りができていたと思います。ただ1990年代以降、電機業界においてアナログからデジタルへと技術が進化する中で、ソニーも技術的な同質化競争に陥ったが故に差異化できない新製品を次から次へと出すという「普通の」モノ作りの会社になってしまったのではないかと思います。

 またソニーグループの中にはエンターテインメントの会社がありますが、音楽や映画というコンテンツを自ら所有して著作権をしっかりと守りながら、しかも旧来の流通にこだわり過ぎたが為に、新しいネットでの流通インフラに乗り遅れてしまったように見えます。戦後続いたモノ作りやコンテンツ流通の「成功体験」こそが、その進化・発展を阻害してしまったのではないでしょうか。

 パソコンや携帯電話といった、少なくとも一時期は日本勢にも世界を席巻する可能性があったビジネスについても、Wiiと同じように付加価値のつけ方や「ダウンサイジング」への対応に21世紀的な発想が必要になってきています。これまでは日本の会社が得意なモノ作りによって、より小さく高品質にと機械にいろいろな機能を「プラス」し続けてきました。そしてその牙城を浸食されないように、囲い込みという名の「クローズ化」を進めてきました。

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