昨年、米国の人々は不信感を抱きながらも、ウォール街の数字を何とか信じようとした。しかし、今、人々のそんな気持ちは、不信を通り越して憤りに変わりつつある。
失業率の上昇・給料の低下が日常化しつつある中、米ゴールドマンサックス証券など金融業界のケタ外れの報酬を耳にするたび、怒りを抑えきれなくなる人が米国では多い。
ちなみに、同証券の2009年の賞与金額は167億ドル(従業員1人当たりの報酬に換算すると、従業員1人当たり70万ドル、約6300万円)だ。
何がいったいどうなったら、1年前に破産の危機に瀕していた企業が最強の富者の地位に舞い戻り、庶民が貧者の地位に降下していくのだろう。全く理解に苦しむ。
残念なことに、2010年の動向も庶民にとって明るいとは言えない。一部の大企業が利益を独り占めする一方、庶民がさらなる困難に直面し、暮らし向きの改善が、停滞したままの可能性が高いのである。
まず、“金持ちがさらに金持ちになり、貧乏人がより貧乏になる仕組み”が、どうでき上がったのかを具体的に見ていきたい。
リストラと投資抑制で10%増益
米国の大多数の大企業が、2009年の前半期まで従業員を解雇し続けて投資を手控え、赤字を黒字へと変えた。実際、2009年の第3四半期には、平均生産性が8.1%(年率べース)上昇する一方、人件費は2.5%も低下した。
生産性の上昇は、企業が技術の進歩など将来への事業投資を控え、従業員の解雇や利益率の高い商品の取扱いに重点を移した結果生まれた数字だ。
それでも企業利益は10.8%のアップ、そして株価はまさに“ジャンプ”した。
スタンダード&プアーズ(S&P)総合500種は、2009年の3月の底値から60%上昇した。このような一見前向きに見えるニュースが飛び交う一方、米国の失業率は2008年の半ばの2倍になった。
ニューヨークの中小企業経営者の間では、“倒産”はもはや日常的な光景だ。空きビル・空き部屋のポスターも街中でこれまでにないほどあちこちで見かける。多くの中小企業の従業員たちは、給料カットもしくは自宅待機を余儀なくされている。
企業経営者のための信用も、激しく緊縮した状態だ。私自身も親しくしている、ニューヨーク市内のある有機食品のスーパー経営者によれば、銀行からの借り入れがゼロにもかかわらず、店舗修繕に必要な6カ月の融資すらも受ける事が出来ないありさまだという。
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