就任1年を迎えた米国のバラク・オバマ政権を激震が襲った。
1月19日に実施されたマサチューセッツ州上院議員の補欠選挙で、当初は楽勝と見られていた民主党候補がまさかの落選。民主党は共和党の議事進行妨害(フィリバスター)を阻止できる60票の安定多数を失った。実現目前だった医療制度改革の行方が一転して不透明になるなど、オバマ政権は戦略の見直しを迫られている。
こうしたなかで、オバマ政権とビジネス界の関係もまた、岐路に立たされている。オバマ政権下で築かれてきた企業と政府の濃密な関係が、政権に対する世論の反発を招いた一因だからだ。
米国ではバラク・オバマ政権のビジネス界への姿勢に関して、相反する2つの評価がある。
まず、「オバマ政権はビジネス界に甘い」という意見である。
医療制度改革では、民間の医療保険会社が最も恐れている新しい公的保険の導入について、オバマ政権は明確な支持の姿勢を示そうとしない。製薬会社や医療機関に求めるコスト削減についても、「まだまだ手ぬるい」という不満がくすぶっている。
一連の金融危機対策も、いまだに論点になっている。巨額の公的資金を使った大手金融機関の救済は、「一般の国民よりもウォール街の高給取りを優先している」との批判を浴びた。米経済政策研究所(EPI)が実施した世論調査によれば、「政府の経済政策は大手銀行の助けになっている」と考える割合が6割を超えている。その一方で、7割以上が「自分や家族の助けにはなっていない」と答えている。
大手金融機関の巨額報酬に対する批判も再燃している。金融危機前を彷彿とさせるような巨額報酬の支払いを予定する大手金融機関を前に、オバマ政権の「弱腰」を批判する声も聞かれる。
弱腰批判を意識して企業に厳しく対処?
その一方で、オバマ政権の経済政策に対しては、「反ビジネス」の色彩が強いという批判もある。ビジネスに逆風となるような政策が、今後の景気回復の障害になりかねないという指摘も珍しくない。
医療制度改革案には、企業に対して従業員への医療保険提供を義務づける要素が盛り込まれている。企業にとっては雇用コストの上昇につながりかねない問題であり、新規雇用の勢いが伸び悩んでいる一因とも言われる。地球温暖化対策では排出量取引制度の2010年内立法化が難しくなる中で、オバマ政権が規制を通じた対策を展開する可能性が浮上している。
排出権限の売却益を財源とした補助金が見込める排出量取引制度と違い、規制を前面に出した温暖化対策は、企業の負担増が先行しやすい。ビジネス界にとっては、とうてい歓迎できない展開である。金融機関に関しても、大手銀行に対する「金融危機責任税」構想を明らかにするなど、弱腰批判を意識したかのような動きが目立ち始めている。
ロビイングへの投入資金は史上最高に
確かなのは、オバマ政権の下で政府とビジネス界の関係が今までになく濃密になっているという事実である。
ビジネス界は政府への働きかけを強めている。昨年の米国で企業がロビイングに費やした資金は、折からの厳しい経営環境にもかかわらず、史上最高の水準に達した模様である。2009年第3四半期までの実績では、最も金額が大きかった医療関連企業の支出額は、前年同期を9%上回っている。伸び率が大きかったのはエネルギー関連の企業で、代替エネルギー関連の企業が同41%増、石油・天然ガス関連の企業も同26%増を記録した。
公的支援を受けてきた企業も、ロビイングに力を入れ始めている。米ゼネラル・モーターズのエドワード・ウィッテーカー会長兼最高経営責任者(CEO)は、一連の救済策で悪化した議会との関係改善を目指し、首都ワシントンのロビイング部隊のてこ入れを進めている。昨夏まではおとなしかった大手金融機関も、秋口からはロビイングに関する支出を増加させ始めたと言われる。
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