前回、保育・教育・医療・介護・住まいなど、人間として尊厳を持って暮らすためのサービスに、必要に応じてアクセスできる社会を構築することが、将来への不安を取り除き、落ち着いて日々を暮らすための条件であると申し上げました。
しかし、それだけでは生産に追いつく消費は生み出せないと思われます。1955年時点で全人口の25.9%だった「自営業と家族」が2008年には前者が6.5%、19.9%だった「雇用者」が40.3%となっています。つまり、雇われて賃金を得ることによって生計を立てている人がほとんどで、失業がすなわち食い扶持を失うことを意味します。
しかも雇用者数のうち3割強が正規雇用の現状では、低賃金で不安定な労働環境に置かれている人が少なくありません。たとえ正規雇用であっても賃金水準は下がっており、決して豊かとは言えない層が増えています(「正規雇用労働者にも忍び寄る“貧困”」)。
政府は昨年デフレ宣言をしました。金融危機を契機に、米国過剰消費時代が終わり、世界的な需要不足が生じた結果だとの指摘がされています。しかし、雇用が不安定で賃金が増えないとなれば、安心して消費はできません。では、企業が雇用を増やして賃金を上げるかと言えば、先行きが分からない中でコストを増やすような決断はできず、いつでも調整できる非正規雇用を優先せざるを得ません。
すべての個人に無条件で8万円程度を給付する
低金利政策で景気を回復させようにも、そもそも需要が不足しているので、企業は設備投資をして生産性を向上させようとは思わないでしょう。また、低金利の円を借りて海外に投資をする円キャリートレードを生み出し、国際的な過剰流動性を引き起こし、米国の住宅バブルの原因の一つとなったとも言われます。
必要とされていないところにお金を流すのではなく、不足しているところにお金を流すことを考えないと、現在のデフレ状況を脱することは難しそうです。生産と消費のバランスを取るための手段として注目されているのがベーシック・インカムです。ベーシック・インカムとは、すべての個人に無条件で飢え死にしない程度の所得、だいたい月8万円くらいを給付するというものです。
この程度の収入であれば、生活の補助程度の目的で心ならずも働いていた人たちは働くのをやめるかもしれません。一方、自活しなくてはならない人が、働くのをやめるという選択をするほどの給付ではありません。また、収入があると切られてしまう生活保護と違い、働くインセンティブを阻害することはありません。
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