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トヨタのリコール問題と、「New Normal」の到来

「成熟期からピークアウト」のサインが点灯した

  • 立田 博司

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2010年2月9日(火)

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 年始のバラ色のスタートから一転して、1月中旬以降は世界中でリスクを回避する動きが活発になり、様々な資産価格が下がっています。その要因は、新興国の出口戦略や米国の新金融規制案、またギリシャに続いてポルトガルやスペインも財政不安が膨らんでいる等々と言われています。

 これらは、世界金融危機に際して様々なリスクを民間企業から政府に転嫁したのですが、政府が抱えたリスクは、国民の民間企業(特に金融)に対する怒りを通して規制強化に、あるいは国が信頼性を失い金利が上がる形で、民間企業のリスクとして跳ね返ってきているのではないでしょうか?

 私は、根本的な問題である世界的不均衡の是正がなされないままに、世界金融危機後の循環的な回復が一服し始めるちょうどその時期に、最も不安を抱えていた国から火が上がり始め、その火の手が過剰流動性を抑え始めたのだと考えています。それがグローバル化した世界の資産価格を同時に引き下げているのですが、民間企業に厳しい政策を取る以外には政府としての「出口戦略」はないように思います。結局は、先送りした根本的問題の解決に向かわざるを得ない、その始まりなのではないかと思います。

 その中で、昨年夏から米国でくすぶっていたトヨタ自動車のアクセルペダルのリコール問題がいよいよ大きくなり、トヨタでも最も売れている「プリウス」にまで波及してきました。これは問題先送りのツケが回ってきたとも考えられますし、また国民の怒りを受けて政府やメディアからの風当たりが強まった、あるいは保護主義の高まり、と様々な側面が考えられます。ただ、前回触れた法的整理の日本航空とは対照的な、世界的な優等生企業であるトヨタの問題は、「問題の先送り」という点では一致していますし、その裏に隠された問題の本質は、技術変化、組織の問題、そして企業の発展段階と新陳代謝の問題としても捉えられます。

 前回は、世界に起こっている歴史的な大きな変化とその影響について概観し、「失われた20年」を招いてしまった政策の対応や政治の問題についても考察しました。今回は、産業や企業がどのように変わるべきなのかについて、日本の産業・企業の根本的な問題を明らかにしたうえで、トヨタのリコール問題も含めて、「新しいニッポン」に至る処方箋を示してみたいと思います。

構造問題の先送りは、世界的不均衡の恩恵あってこそ

 前回、世界で起こっている大きな変化とその日本に対する影響について、日本の政治が根本的な課題や本質を正しく認識できずに間違った政策を打ち続けた問題について触れました。そこで今回はまず課題認識を正しく持つことから始めたいと思います。

 私は、世界経済がたとえ危機を脱したとしても、危機前の状態に戻ることはできない、すなわち「New Normal=新たな常識」という新しい世界経済の形を受け入れざるを得ないと考えています。これまでの世界的不均衡の拡大はいずれにしても持続不可能であることを受け入れ、世界的不均衡が是正された後のNew Normalに早く適応するべきなのです。

 そもそも日本の課題は、世界の課題とは違い、「構造問題を抱えつつも、世界的不均衡の恩恵を受けていたからこそ構造問題を先送りしてきたこと」だと考えています。ところが世界金融危機後のNew Normalでは世界的不均衡の恩恵が消えて是正に向かうわけですから、構造問題の先送りは、もはや難しくなるのです。

 その構造問題とは何か。前回考察した世界の大きな変化を認識せず、対応を先送りにして皆で痛みを共有してきたために、労働生産性の低下、所得の低下、雇用の悪化をもたらし、消費の停滞という悪循環、経済成長の停滞を引き起こしてきたことが、日本が抱える根本的な構造問題だと考えるのです。労働投入量(雇用)と労働生産性を掛け合わせたものが経済成長の重要な要因であり、そのいずれもが停滞したというのが、トンネルの先が見えないという国民の焦燥感につながっているのです。

 ではまずは、世界の大きな変化がどのような形で日本の経済成長率低下に関わっているのか、を考えてみましょう。

 前回概観したように、冷戦崩壊とともにロシアや東欧、中国といった旧社会主義国が資本主義経済に雪崩を打って組み入れられたことにより、世界の労働コスト、すなわち製品・サービスの「コスト」が構造的に下方に修正されました。しかも、グローバル化・IT(情報技術)化が進んだことで世界的に貿易が盛んになり、グローバル競争の中で製品・サービスの「最終価格」も引き下げられました。さらには新興国が消費国として台頭してくると、世界の製品・サービスの価格ミックスの変化により、もう一段の価格引き下げに見舞われているのです。

 こうした「構造的なコストと最終価格の下方移動」に対して、日本企業が素早く対応できればよかったのですが、その対応が明らかに遅れてしまったので、相対的な競争力の低下と利潤率の低下を招くとともに、国内の賃金には下方への圧力が強力にかかりました。ただ日本においては賃金を下げることはかなり難しいので、企業としては生産拠点の海外移転や正社員の非正規化などにより変動費化・コスト削減を図ったり、新規採用を絞って対応したりすることになります。

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