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財政破綻という“悲劇”は起きるのか?

「共有地の悲劇」と行動経済学で考える財政

  • 澤井 景子

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2010年2月12日(金)

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 我が国の財政赤字は拡大の一途をたどっています。2009年度末の長期債務残高(見込み)は627兆円程度(地方も含めると825兆円程度)。国の収入の中心である税収は、2009年度は景気低迷のため37兆円程度で、2010年度もほぼ同じくらいの金額だと見込まれています。景気拡大期であった2005~2007年度の税収は約50兆円程度ですが、仮にこのレベルまで税収が回復したとしても、優に10年間分の収入を上回る借金を抱えていることになります(図1)

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 2010年度予算の規模(一般会計)は、過去最大の92.3兆円で、その48%は国債発行(44.3兆円)によって賄われることになっており、国の借金はますます増えていきます。

 家計では、一般には稼げる収入を前提に払える支出を考えると思います。これほどまで借金を抱えて生活するようなことは普通では考えられません。では、国の借金となるとなぜ、ここまで拡大してしまうのでしょうか。今回は、1968年に生物学者G・ハーディンが提起した「共有地(コモンズ)の悲劇」の理論を使って、財政赤字が膨らんだメカニズムについて考えてみます。

財政破綻は「共有地の悲劇」

 牧草地をある町の共有地とし、町の住民は、自分が所有する羊を共有地で飼うことによって、生計を立てているとします。羊の頭数が一定の範囲内であれば、草が再生産され、羊を飼い続けることができます。しかし、町の人口が増え、羊の数が増えると、再生産できないほど草が食べられてしまい、結局、町の住民全員が生計を立てられなくなります。

 住民は自分の利益を最大化しようとしますが、町全体の不利益は考慮しません。このため、共有の資源は、私有の資源に比べて過剰利用されやすく、その結果、町全体にかかわる大きな悲劇が起きてしまいます。

 乱獲による漁業資源の減少、道路混雑による渋滞、工場や自動車の排ガスによる大気汚染の問題などは、海洋、道路、空気が一種の共有地であることによる過剰利用から発生した問題と考えられます。公共経済学では、ある主体の経済活動が市場の取引を通さずに影響を与えることを外部(不)経済と言います。牧草地の例では、住民は羊の数を増やすことによって、草の再生産力の低下という不利益を与えていますが、これに対する対価を払っていません。「共有地の悲劇」は、外部(不)経済による資源利用の非効率性が生ずる例としてしばしば用いられています。

 財政赤字の拡大についても、「共有地の悲劇」と捉えることができます。政府による財政支出は、最終的には国民の負担になるものです。しかし、給付と負担の関係が見えにくいため、多くの人にとっては、「負担することなく、便益を得られる」共有地とみなされがちです。

 このため、人々は自分の利益を最大化しようと、財政支出に対する働きかけが強くなり、結果として過剰な支出が行われる傾向が生じます。この状態が続けば、財政赤字が累積し、利払い費の増加による財政支出の制約や国債金利の上昇、さらには債務不履行による財政破綻等の「共有地の悲劇」が起きる可能性があります。

 1998年のロシア危機や2001年のアルゼンチン危機等は、国家財政の破綻懸念から生じた経済危機でした。最近では、ギリシャの財政赤字問題が、同国の金融不安を招いています。

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