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医療崩壊で動き出した「破壊的イノベーション」

病院と患者をつなぐネットワークに成長の芽

  • 立田 博司

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2010年3月9日(火)

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 2009年8月の衆議院議員選挙で大勝して政権交代を果たした民主党政権による2010年度予算案が、ようやく成立の見通しとなりました。選挙直後の高揚感はどこへいったのやら、選挙のための大盤振る舞いのマニフェストから大幅に後退・変更された予算案は、抜本的な改革なくして国は簡単には良くならないことを如実に示しています。世界では、ギリシャを始めとして政府の財政赤字削減が大きなテーマとなっており、日本においても長期的で全体的な青写真を描くべき時が来ているように思います。

 これまで何度か、21世紀の価値観の変化に触れてきました。20世紀までの「近代工業社会」においては重要であったモノやカネといった価値観は、21世紀の「ポスト近代工業社会」においては、「目に見えない本質的な価値」に変化していくであろう、その21世紀の日本における「目に見えない本質的な価値」の1つは「安心感」に支えられた真の豊かさではないかと考えています。「失われた20年」に象徴される経済成長の鈍化、少子高齢化の進展、膨れ上がる財政赤字、老後を支える医療・介護・年金の行方などが将来に対する漠然とした不安につながっている、この不安感を解消して「安心感」に変えなければ真の豊かさは感じられないということだと思います。

 その不安の中でも、少子高齢化で財政赤字の大きな部分を占める社会保障関係費、すなわち医療・介護・年金のあり方が「安心感」を生むといっても過言ではないでしょう。以前「ドバイ・ショック。そして過剰投資と覇権国」において、世界的な流れ、少子高齢化の帰結、そしてIT(情報技術)化・ネット化による人間の果たすべき役割の変化の結果として、「医療」や「介護」、「教育」といった人の根源に関わるサービス産業が21世紀前半の革新の1つになるのではないかと考えました。

 今回はその中でも特に「医療」について、問題山積の国の制度という側面から、またこれまであまり民間の知恵が活かされずITやネットによる改善余地が大きい成長産業の側面から、その両方の視点を活かしながら全体最適を考えていきたいと思います。

民主党は“対症療法”

 国民皆保険は、戦後の貧困や栄養不良による感染症の蔓延などを背景として、好景気に支えられる形で、1961年に始まりました。公的医療保険によってすべての国民がすべての医療機関にかかることができる仕組みは、世界的にも高く評価されていますし、その結果として2008年の日本人の平均寿命は82.6歳と世界一を誇ります。しかもGDP(国内総生産)に占める医療費の比率は先進国の中では最も低いので、世界でも「安いコストで高い成果」を上げている医療制度の1つなのです。

 それにもかかわらず近年は、救急患者のたらい回しや勤務医の疲弊、診療科・地域の偏在といった医師不足の問題などが、「医療崩壊」という言葉で指摘されています。医療制度の問題は、確かに多岐に渡るうえに複雑なので簡単に解決する問題ではありませんが、拡大を続ける財政赤字の問題に対して、公共投資を拡大させてきたにもかかわらず、抜本的な医療制度設計の見直しを先送りして短期的なデメリットが見えにくいという理由で継続的に医療費の削減を押し進めてきたことが医療崩壊の背景にあるのではないかと思います。

 民主党は選挙時のマニフェスト(政権公約)において、医療を再生するために、医療費の大幅増額、医師養成数を1.5倍にする、後期高齢者医療制度の廃止、公的な病院の廃止をしない、社会保障費削減の撤廃、中央社会保健医療協議会の改革などの政策を打ち出しました。いずれの政策も耳あたりがいいものの、抜本的な解決策というよりも、これまでと変わらない場当たり的な対症療法のように見えます。

 国民皆保険制度が創設されてから既に50年が経とうとしており、その間に大きく外部環境が変化したことは、皆さんご存じの通りです。その後の生活水準の向上と医療の進歩により、医療の主役は、創設当時問題になっていた感染症から生活習慣病に移ってきています。また急速な高齢化と長寿化により、介護や終末期医療のあり方が問われるようになってきました。

 医療は高度化してその多様性が増してきていますし、日本人が海外で治療したり外国人が日本で治療したりするなど、医療のグローバル化も進んでいます。さらに世の中ではIT化・ネット化が進み、患者側と医療側で特に情報の非対称性が高い医療分野においても、今後本格的に影響を及ぼしてくると思われます。

 以前、日本の産業構造問題に触れた際に指摘したことと同様に、医療分野の問題についても、取り巻く外部環境が大きく変化したにもかかわらず、50年間にもわたり、抜本的に変わることを拒み続けて、小手先の対症療法に終始したことにこそ問題が潜んでいると考えています。

 それでも高度経済成長期までは、企業にも余裕があり国と一体となって国民の社会保障を支えることができましたが、グローバルな競争が熾烈になる中で「失われた20年」を経験した企業は、徐々に従業員に対する社会保障負担に耐えられなくなりつつあります。しかも、医療費を公的保険や財政で支えるという国民皆保険の仕組みは、現役世代が同時代の高齢者を支える年金の賦課方式と実質的には同様であり、少子高齢化が急速に進展する日本においては、長期的に継続可能な仕組みではありません。

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