• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

米財政再建への気の遠くなるような道のり

超党派委員会と試験的プロジェクトに隠された狙い

  • 安井 明彦

バックナンバー

2010年3月25日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 米国の財政状況は厳しい。年間の財政赤字は1兆ドルを超え、債務残高も上昇中。たとえ景気回復で一時的に赤字が減ったとしても、将来的には高齢化と医療費の上昇によって、米財政の健全性が揺らいでいくのは確実な情勢である。

 それでもかすかな希望の灯があるとすれば、バラク・オバマ政権の下で、先々の財政再建に役立つかもしれない「道具立て」が整えられ始めていることだ。

 拙稿「米財政再建への地ならし」で触れたように、景気の着実な回復を優先するオバマ政権に、今すぐ財政再建に着手する余地はない。そこで、いずれは財政再建に取り組むという姿勢を強調し、市場や有権者から時間的な猶予を得ようというのが政権の戦略。道具立ての整備は、その具体的な方策の1つである。

 政権が自画自賛する主要な道具立ては2つある。第1は、財政再建策を提案する超党派委員会の設置。第2は、医療改革に組み込まれた様々な試験的プロジェクトである。

超党派委員会で知恵絞り、医療改革で試行錯誤

 超党派委員会の設置は、2月18日に発表された大統領令で決められた。中期の財政状況を改善し、長期的な財政の維持可能性を確保するような提言を行うのが責務である。特に中期の課題については、「2015年度までに利払い費を除いた財政収支を均衡させる」という基準が設けられている。

 試験的プロジェクトは、医療費抑制につながりそうな有望な取り組みを、一部の地域などに限定して進める手法である。長期的な視野での財政再建を進めるには、医療費の抑制は不可欠。しかし、オバマ政権が目指すような「医療のムダ」を削り落とす手法は、現時点では決定打が見つかっていない。そこで、試験的プロジェクトを通じて数々のアイデアを試し、良好な成果をあげたプロジェクトを全国展開しようというわけだ。

 議会で議論されてきた医療改革法案には、20件を超える試験的プロジェクトの新設が盛り込まれている。

 例えば公的保険の診療報酬の見直し。個別の治療行為ごとの出来高払いではなく、1人の患者の発症から治癒までを1つのまとまりとして、これに関連する医師・病院などへの報酬を一括して支払うという試みが予定されている。関係者に対して、重複する無駄な医療を削減するインセンティブを与えようという狙いだ。患者の自宅での診療を奨励し、再入院を防いだ場合の医療費抑制分を関係機関に配分するような仕組みもプロジェクトの1つだ。

「伝家の宝刀」だが、切れ味は鈍い

 実は、超党派委員会や試験的プロジェクトという道具立ては、米国では過去に何度も用いられてきた「伝家の宝刀」である。しかし、その成果は必ずしも良好とは言えない。

 失敗に終わった超党派委員会は少なくない。ジョージ・W・ブッシュ政権は、年金改革と税制改革に関する超党派委員会を設けた。しかし、いずれの委員会の提案も実際の立法化にはつながらなかった。ビル・クリントン政権の後半には、医療改革を扱う超党派委員会が設置されたが、委員会内で最終提案に合意することすらできなかった。

 今回の委員会に似た枠組みとしては、1993年にクリントン政権の大統領令で設立された「ケリー・ダンフォース委員会」がある。その責務は長期的な財政健全化に役立つ施策の提言であり、特に義務的経費と税制の改革に関する報告が求められていた。しかしこの委員会も意見がまとまらず、具体的な提案の発表には至らなかった。

 一方の試験的プロジェクトには、「優れたアイデアの墓場」という有難くない異名がある。公的医療保険の価格設定に競争入札の仕組みを導入しようとする試みは、過去25年間に少なくとも10件の試験的プロジェクトの対象になってきた。しかし、いまだに全国的な改革には結びついていない。それどころか、サンディエゴやボルティモア、デンバーなどで計画されたプロジェクトは、いずれも選ばれた候補地の反発で、実行にすら移されていない。

 成果を上げたのに全国展開に至らなかったプロジェクトもある。今回の試験的プロジェクトにも含まれている「診療報酬の一括払い」では、心臓手術を対象にした似たような試験的プロジェクトが90年代前半に行われている。当時のプロジェクトは良好な成果を収めたが、病院や医師の反対が強く、全国展開に必要な立法化はかなわなかった。

コメント2

「Money Globe- from NY(安井 明彦)」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万〜数百万円で売られている事例もある。

名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官