「Money Globe ―  from Asia(竹島慎吾)」

アジアにも押し寄せる少子高齢化の波

終焉に近い「人口ボーナス」、日本より進行は早い

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2010年4月1日(木)

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 アジア経済は、生産年齢人口が従属人口比で高まる「人口ボーナス」を追い風に高成長を続けている。ところが、少子高齢化の波はアジアにも押し寄せている。

 アジア諸国が日本のように人口減少に転じるのは、早い国でも25〜30年先のことであるが、中国やシンガポール、タイでは全人口に占める生産年齢人口の割合が2010年頃をピークに低下に向かう見込みであり、「人口ボーナス」は終焉に近づいている。

 アジア経済は世界経済のエンジンとして今後も持続的な拡大が見込まれるものの、人口動態からみると転機に差し掛かりつつあるといえる。

人口ボーナスが成長の追い風に

 アジア経済は持続的な成長により世界経済における存在感が高まっている。国際通貨基金(IMF)によると、世界経済に占めるアジアのシェアは90年の7.3%から2008年には14.8%と18年間で倍増した。

 アジア経済が拡大してきた一因として、生産年齢人口の増加率が高いことが挙げられる。生産年齢人口の増加率と実質GDP成長率の関係をみると正の相関があり、労働投入量の増大がアジアの成長の一翼を担ってきたといえる。

 生産年齢人口が従属人口に比して高まる時期を「人口ボーナス」と呼ぶ。この時期は、労働投入量が増加する一方、若年層や老年層を扶養するコストが小さく経済成長が加速しやすい環境にある。

 日本が人口ボーナス期にあった1950年から1990年までの平均成長率は7%近くに達成した。とりわけ、高度成長期の真っ只中にあった60年代の平均成長率は10%を超えた。90年代の平均成長率は1%台へ低下したが、これはバブル崩壊により構造調整圧力が高まったことに加え、人口ボーナスの終焉が重なったことが一因と考えられる。

 アジアは1960年代半ば以降、人口ボーナス期に入っている。とりわけ、生産年齢人口比率が大幅に上昇した70〜90年のアジア経済は高成長を記録した。

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 もっとも、中国やアジアNIEs(シンガポール、韓国、香港、台湾)、タイの生産年齢人口比率は2010〜15年をピークに低下に向かう見込みであり、これらの国・地域の人口ボーナスは終焉に近づいている。

 他方、タイを除くASEANやインドは、当面、人口ボーナスが続くものの、生産年齢人口比率の上昇ペースは徐々に鈍化する見込みである。

高齢化は日本を上回る世界最速ペースで進展

 中国やNIEs諸国の人口ボーナスが終焉に向かう背景には、少子高齢化の進行がある。アジアの出生率は軒並み低下傾向にあり、中国、韓国、タイなどの出生率は人口を維持するために必要な2.1を下回っている。

 出生率低下の要因として、政府が70年代から80年代にかけて人口抑制策を推進したことや、所得水準が上昇するにつれ多産に対する価値観が変化したことなどが挙げられる。また、NIEs諸国では未婚率が上昇、晩婚化が進展していることも出生率低下の一因と考えられる。

 少子化の進行に加え、医療技術の向上などにより平均寿命が伸びたことから高齢化が急速に進展している。

 高齢化社会(65歳以上の人口比率が7%超)から高齢社会(同14%超)へ達するまでに要する年数(倍化年数)をみると、既に高齢社会入りしている日本は24年で、フランス(115年)やイタリア(61年)、英国(47年)などの先進国よりも大幅に速かった。

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著者プロフィール

竹島 慎吾(たけしま・しんご)

三菱東京UFJ銀行
経済調査室シンガポール駐在
シニアエコノミスト

竹島 慎吾

1967年岐阜県生まれ。90年東京大学教育学部卒業、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。94年米MIT(マサチューセッツ工科大学)客員研究員、2002年早稲田大学大学院社会科学研究科卒業。1991年から資金為替部で円資金ディーリング、デリバティブ業務などに携わった後、99年からアジア担当エコノミスト。香港駐在を経て、2006年8月から現職。著書に『30語でわかる日本経済』(2000年日経ビジネス人文庫、共著)『アジアのIT革命』(2001年東洋経済新報社、共著)など。



このコラムについて

Money Globe ― from Asia(竹島慎吾)

世界の成長センターとして注目を集めるアジア。めまぐるしく変化しつつ発展するアジア経済の動向について、東京・香港・シンガポールで一貫してアジア経済をウォッチしてきた筆者が独自の視点で解説する。

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