成長を続け、市場開放が進む中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)。市場の一体化で恩恵にあずかれるのは「輸出型」企業だけではない。むしろ日本国内を主戦場とする「内需型」にとってこそ、好機と言える。アジアに視点を転ずれば、20億人が待つ「アジア内需」と呼ぶべき巨大な市場が広がっている。
日本式の警備システムで1992年から中国で事業展開するセコム。公安当局との緊密な関係作りが成功の秘訣だ。
「点呼、1、2、3、4、5」「整列、右向け右、敬礼、休め」
早朝8時、中国・上海にあるセコムの営業所では、警備員が集合し朝礼に備える。「安全運転宣言」を唱え、それぞれ持ち場に散っていく。
上海西科姆電子安全有限公司(上海セコム)の山口忠弘・総経理は「ここでの業務はすべて日本と同じやり方だ」と説明する。創業から40年以上、日本で培ったサービス手法が中国でも通用している。
「欧米式」が主流の中国で「日本式」を普及
現場に警備員や守衛を置かず、監視カメラやセンサーなどを利用する「機械警備」。これには「欧米式」と、セコムなど日本企業が手がける「日本式」がある。
欧米式はセンサーが異常を感知すると、警備会社のコントロールセンターから警察や消防署に通報するやり方。一方、日本式はコントロールセンターに警備員を配置し、異常があれば、まず警備員が現場に駆けつけ、事態を確認した上で警察や消防署に通報する仕組みだ。

山口・総経理は「センサーはネズミが横切っただけで感知することもある。現場に急行するとほとんどが誤報だ」と話す。警察や消防署にとっては無駄足を踏まなくて済み、依頼主にとっては警察が急行できないときでも、セコムの警備員が確実に現場に行く安心感がある。
しかし、中国では欧米式が主流。1992年に中国で事業を始めたセコムは、まず日本式を普及させる必要があった。
「セコムは中国の治安にとって有益だ」と説得
日本式の普及は当初、利用者よりも中国の警察機関にあたる公安部に対して必要だった。
セコムの中国事業を統括する高岡実・執行役員は「中国は公安が運営する警備会社が主流。セコムも北京、上海、青島、大連など地域によって、それぞれの公安系警備会社と合弁会社を設立し事業を展開してきた。セコムの中国事業は公安当局との緊密な関係作りによって成り立ってきた」と話す。
セコムが中国で事業を始めることは、見方によっては現地の公安系警備会社の既得権を侵害することになる。そのため、公安局トップに「セコムは中国の治安にとって有益だ」と説得することから始めた。周到な根回しが必要だった。
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