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米医療改革、これからが正念場

「最後のニューディール」を完遂できるのか

  • 安井 明彦

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2010年4月22日(木)

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 「1年以上にわたる国民的な議論の末に、議会と大統領は決断を下した。壊れた制度を維持するような、ありもしない“抜け穴”を探している場合ではない」

 医療改革法案の可決からわずか4日後、バラク・オバマ政権のキャサリン・シベリウス厚生長官は、医療保険の業界団体を叱りつけた。「改革の実施」に向けて、新たな苦行の火蓋が切って落とされた合図である。

保険会社は都合のいい解釈に活路を探る

 確かに医療改革法の成立は「歴史的な偉業」である。しかし、改革は終わったわけではない。オバマ政権は、改革法に定められた新しい制度を実際に稼働させなければならない。何しろ、10年間の総費用が約1兆ドル(約93兆円)、無保険者を3000万人以上減らすという大プロジェクト。実施に向けた作業量は膨大だ。

 大きな責任を負うのがシベリウス長官である。今回の改革法には、「厚生長官が○○を行う」という節が1000カ所以上も登場する。全部で2000ページを超える法律とはいえ、新しい制度の全容が細部まで書き込まれているわけではない。むしろ多くの場合には、法律の真意を解釈し、これを具体的な規制に落とし込む役割は、厚生長官に一任されている。

 ビジネス界の関心は高い。新しい競争のルールがどうなるかによって、企業の命運は分かれる。医療保険会社などに対しては、今後さまざまな新しい規制が設けられていく。個人・中小企業向けの医療保険が扱われる新市場(エクスチェンジ)の創設や、中小企業向けの補助金の新設など、ビジネスに影響を与える要素も数多い。少しでも有利な競争環境を手に入れようと、関連企業による情報収集とロビイングには、これまで以上に力が入っている。

 そんなビジネス界と政府のせめぎ合いが早くも表面化したのが、冒頭のシベリウス長官の叱責である。論点は、既往症のある人への保険の販売。米国の保険会社は、心臓病などの既往症がある人に対して、保険料を高めに設定したり、場合によっては加入を認めないといった措置をとってきた。高額の医療費が必要になる可能性が高いために、保険会社が自己防衛に走っていたわけである。

 今回の改革では、既往症のある人が不利な扱いを受けないように、保険会社を規制するとの方針が定められた。特に既往症のある子供については、さっそく今年から新しい規制が適用されるはずだった。

 ところが保険会社は、法律の書き方に曖昧さがあった点を突いて、2014年にならないと規制の効力は発生しないとする解釈を持ち出した。これにオバマ政権は猛反発。業界団体を叱りつけるとともに、法律の真意を明確にするために、これを補足する規制を早々に施行する方針を明らかにした。

 今回の騒動はほんの序の口。今後も論点は尽きない。たとえば保険会社は、保険料収入のうち一定以上の割合を、「直接的な医療行為に対する支払い」に充てるよう義務づけられる。保険会社とすれば、収益源が限定される格好だが、各企業への具体的な影響は、これから発表される規制のなかで、「直接的な医療行為」がどう定義されるかで変わってくる。保険会社が保険金の支払い上限を設定しにくくなるような条文もあるが、具体的に制限の対象となる「保険金」の範囲を決めるのも、やはり今後の規制の役割である。

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