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ぶれない予測を実現した新世代経済学

「ゲーム理論」について政策研究大学院大学・安田洋祐助教授に聞きました(下)

2010年4月28日(水)

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―― 前回は、ゲーム理論が導き出す解の多様性をめぐり、「多様性があっていい」と、前向きにとらえる立場についてお聞きましたが、別の立場の考え方もあるようですね。

安田 もう一方の考え方は、理論を改善して「答え」の基準をより厳しくすべきだという立場です。きちんと理論を修正することで、当てはまりが悪い「答え」を排除し、できるだけゲーム理論の予測能力を高めようというわけですね。1970~80年代にかけて、多くのゲーム理論研究者がこの問題に取り組みました。

 参加者の予想の仕方に制限をつけたり、相手が戦略を間違えるリスクを考慮に入れたりと、色々なアプローチが試されました。

 しかしその努力もむなしく、複数均衡の問題を劇的に解決する理論は見つからなかったのです。ゲーム理論の予測にも結局限界があるのだという、ある種の諦めムードが漂いました。

安田 洋祐氏の写真

安田 洋祐(やすだ・ようすけ)
2002年東京大学経済学部卒。2007年、米プリンストン大学経済学部より博士号取得(Ph.D.)。同年より現職。専門は産業組織論、ゲーム理論。編著書に『学校選択制のデザイン―ゲーム理論アプローチ』。最も権威のある国際的な経済学の学術誌「American Economic Review」に、ゲーム理論を応用した学校選択制研究が掲載予定。
(写真:宮原 一郎 以下同)

より現実的なシナリオを想定した新たな理論が登場

 そこに颯爽と登場したのが、「グローバル・ゲーム」という新理論でした。グローバル・ゲームの大きな特徴は、ゲームの参加者が自分たちが置かれている環境について、曖昧にしか把握していない状況を分析したところにあります。通常のゲーム理論では、各人が自分が置かれた環境を知り尽くしているような場合を多く扱っていたので、これとは対称的な分析方法です。

 一番イメージしやすいのは資産市場でしょう。参加者である個々の投資家は、市場で取り引きされている資産の背景にあるファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を正確には知らない。さらに、ほかの投資家がファンダメンタルズに関してどのような情報を持っているかもよく分からない。

 グローバル・ゲームでは、この複雑な状況で、各人が自分の情報をもとに、ほかの投資家の情報や投資戦略を深読みして行動するというかなり現実的なシナリオを想定します。

曖昧さを取り入れて複数均衡の問題を解決

 一見すると、こうした曖昧さを正面から分析すると「答え」も曖昧になりそうな気がしますよね。ところが面白いことに、曖昧さを分析に取り入れることによって、かえって複数均衡の問題が解決される可能性が出てきたのです。別の言い方をすると、複雑ではあるけど現実的な要素をきちんと分析してみたら、かえって問題が簡単になった、という感じでしょうか。

―― どのように簡単になったのでしょうか。

安田 あまり抽象的な話をしていても分かりにくいと思いますので、国債の債務不履行(デフォルト)問題を例にとって、具体的に説明していくことにします。

 今、政府が今期必要な財政を補うために、赤字国債の新規発行を考えている状況を考えましょう。国債の潜在的な買い手として投資家が2人いて、各投資家は「購入」もしくは「購入しない」という2種類の戦略を取ることができる。さらに、1人では購入額が不十分なためデフォルトが発生してしまいますが、2人とも購入すればデフォルトを防ぐことができ、それぞれが国債購入のリターンを期待できるとしましょう。

 2人しか投資家がいないという設定は極端だと思われるかもしれませんが、新発国債に十分な数の買い手が付かない場合に政府がデフォルトの危機に直面する、という現実的な状況を単純化したものだと考えてください。実は、投資家の数を増やして分析しても、本質的な結果はほとんど変わらないことが知られています。ここまでが普通のゲーム理論分析です。

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「ぶれない予測を実現した新世代経済学」の著者

広野 彩子

広野 彩子(ひろの・あやこ)

日本経済新聞社NAR編集部次長

朝日新聞記者を経て日経ビジネス記者、2013年から日経ビジネス副編集長。日経ビジネスオンラインでコラムの執筆・編集を担当。入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長