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「安く買って、高く売る」だけなのに、心理が邪魔する

人気より大局観を判断の拠り所にしよう

  • 立田 博司

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2010年6月17日(木)

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 前回、「普通の人が自分で運用するのはたいへん難しい」と指摘しました。今回は、どうしてそんなに難しいのか、もう少し深く考えてみたいと思います。

 お金を増やすには、どうしたら良いのか。その基本は、実はとても簡単です。「安く買って、高く売ること」。これに尽きます。これは投資に限った話ではなく、商売でも同様に安く仕入れて、それよりも高く売ることによって利益が出るわけです。そう考えると簡単そうで自分にもできるような気がしますが、簡単だからこそ難しいのです。

市場関係者の間違った期待とバブル

 禅問答のようになってきましたが、では投資において安くて買う時はどんな状況なのか想像してみましょう。安い時には、世の中は厳しい環境にあります。売らなければならない理由がたくさんあるから売りたい人が多くいるし、積極的に買う理由が見つからないから買いたい人はほとんどいないという状況です。だからこそ価格が下がっているわけですが、あなたならそんな真っ暗な時に思い切って買うという行動を取れるでしょうか?

 逆に高い時を想像してみましょう。世の中の景気は非常に良いので、自分の気持ちも大きくなっているし、買う理由には事欠かない。誰もが買っているので、乗り遅れたくないという心理も働きます。まだまだ株価が上がりそうなタイミングで、自分だけが売ってしまうのはもったいない気がしてなりません

 このように、安い時には買う理由がないし買う気にもならない、高い時には売る理由がないし売る気にもならない。でも、これに素直に従っているのであれば、世の中と同じ気分でいることになってしまって、結局は「高く買って、安く売る」ことにしかなりません。

 このような心理的なジレンマこそが、普通の人がなかなかうまくいかない理由だと思います。資産運用業界のプロの方々には「もちろん、そんなことは分かり切っているよ!」と一蹴されそうですが、IT(情報技術)バブルやリーマンショックの直前にうまく資産を売却しておけたプロがどのくらいいるのかといえば、実はとても少ないのです。逆に、渦中にいればいるほど、プロでさえも熱くなって冷静さを失って、大きな間違いを犯してしまうということだと思います。

 資産運用業界では有名なジョージ・ソロス氏は、1990年代に「再帰性」の概念を用いてバブルの生成と崩壊の過程についての理論を打ち立てました。簡単に言うと、市場参加者の間違った期待が現実に影響を及ぼす相互作用が自己増殖的に強化されるとバブルが起こり、期待と現実の乖離が許容できない臨界点に達したところでバブルの崩壊が始まる、バブル崩壊は誤った認識を現実に近づけ両者が一致したところで均衡点に達する、というものです。

 これは、先ほどの「なぜ高い時に買って安い時に売ってしまうのか」を、理論的に考えたものです。従来の経済学が、自然現象を対象にした理論物理学を前提にしているのに対し、ソロスは経済理論に人間の思考や心理が及ぼす影響を取り入れて、より現実に即した経済理論を考え出したのです。蛇足ですが、そのソロスがリーマンショック以降の金融危機について、1980年以来のスーパーバブルの崩壊と位置づけているのはとても興味深いことです。

 少々横道にそれてしまいましたが、「安く買って、高く売る」という基本に忠実にいることが、簡単なようで人間が感情を持った社会的な動物である以上、実はとても難しく、「高く買って、安く売る」という罠にはまりやすいということが、「普通の人が自分で運用するのはたいへん難しい」背景にあると思っています。そしてこの法則は、中期的に見ると様々な金融商品や投資スタイルにも当てはまります。2000年初めのITバブルのピークでは、日本株で1兆円ファンドが設定されましたし、インターネット関連のファンドも花盛りでしたが、その後は悲惨な状況を迎えました。

人気が高いのは「危ないサイン」?

 またここ数年は外債ファンドや新興国ファンドが人気を博しましたが、たぶん既にピークを打ち始めているのではないかと思います。今年初めに述べられていた2010年の見通しとそれに基づいた推奨を見ると、多くの識者が外債投資や新興国投資を勧めていました。これは、逆説的に危ないサインと言えましょう。ファンドマネジャーとして20年以上の経験を積んだ私でさえも確信を持てないような新興国に投資する、少々危なっかしいとも言えそうな投資信託が、本来は保守的な運用に徹するべき高齢者に爆発的に売れているのを見ると、そろそろなのかなと勘ぐりたくなります(もちろんしっかりと分析をすれば、よけい危ないのではないかと思うのですが)。

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