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市場原理を貫いたことは反省すべき?

【第2回】パレート最適と部分均衡で考える経済政策

2010年6月25日(金)

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 (【第1回】から読む)

 今回は、経済学の7大原理の3番目、「通常、市場は経済活動を組織する良策である」からお話を始めましょう。

 これは大変重要なポイントです。人々がお金を払ったり、受け取ったりして取引をするマーケットがある。このマーケットの力を使うのが経済活動を組織する良策だというのが経済学の基本中の基本です。

 ミクロ経済学という分野では、マーケットがいかにうまく資源を配分するかを研究します。その結論が、市場というのは非常にうまく働くということです。こう聞くと「本当か?」と疑問に思う方がいるかもしれません。しかし、これは相当、本当なんです。

 我々の身の回りのものはすべて、作りたい人が作りたいだけ作り、買いたい人が買いたいだけ買えると言っていいでしょう。政府がどれだけ作りなさいなどと決めているものではありません。誰も何も考えないで、何でもいいですよというのが、実は一番うまく物事を処理する方法です。品質の保証や最低限の規制は必要ですが、政府はあとは何も言わずに、誰が何をやってもいいと言うことこそが、非常に効率的に資源配分をすることになるというのが、経済学の大命題です。

 これは経済学の大変重要な原理なので、経済学を勉強した人は、自由な経済活動が一番重要だと考える癖があります。もっと極端に言うと、政府はあまり出てこないでいいです、自由にやらせてください、自由にやることこそが一番いいと考えます。

 この辺からやや議論が分かれてきます。

民主党と自民党のマニフェストを比べると…

 例えば鳩山前総理は2009年に就任したときの所信表明演説で、こう言っています。

 「市場における自由な経済活動が、社会の活力を生み出し、国民生活を豊かにするのは自明のことです」

 これは市場が重要だという考え方です。自由な市場が経済の活力を生み、生活を豊かにするということです。

 その後こう続けます。
 「しかし、市場にすべてを任せ、強い者だけが生き残ればよいという発想や、国民の暮らしを犠牲にしても、経済合理性を追求するという発想がもはや成り立たないことも明らかです」

 市場原理はいろいろな問題点を引き起こすようになった。弱肉強食の社会になった、格差が広がったなど、いろいろな問題が起きた。従って市場原理的な考え方は少し修正しなければならないと言っています。

 実は、こう言っているのは民主党だけではありません。自民党も同じことを言っています。

 自民党のマニフェストは次のように言っています。「戦後の日本を、世界有数の大国に育てた自負があります。しかし、その手法がこの国の負の現状を作ってしまったことも、近年の行き過ぎた市場原理主義とは決別すべきことも自覚しています」

 自民党も市場原理は行き過ぎて、格差問題といった難しい問題をむしろ引き起こしてしまったと言います。民主党と自民党は同じことを言っているのです。

 二大政党制のもとでは双方の言うことが似てくるという原理があります。簡単に言えば、なるべくたくさんの支持者を得ようと思ったら、真ん中に近い人に支持されるような政策をやっておけば、かなりたくさんの人の票を取れる。従って、二大政党制になると、だんだん言うことが真ん中に寄ってくる傾向があります。

そもそも論理矛盾がある主張

 さて、この「市場原理は行き過ぎて是正すべきだ」については、私は今の経済学の考え方からすると問題があると思っています。

 「市場にすべてを任せ、強い者だけが生き残ればよいという発想や、国民の暮らしを犠牲にしても、経済合理性を追求するという発想がもはや成り立たない」ということですが、市場にすべてを任せ、強いものだけが生き残ればよいという発想をしている人などいるでしょうか? どんな市場原理主義者でも、全部市場に任せておけばいいとは絶対に考えません。

 例えば、環境問題やたばこの規制など、いろいろな規制が必要で、何もかも野放しにしておけばいいなどとは誰も考えません。規制をした方がいい分野は当然あります。これが当たり前の考え方です。市場にすべてを任せておけばいいという人は、そもそもいません。

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「市場原理を貫いたことは反省すべき?」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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