• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

長期投資をする。その前に考えなければいけないこと

「合意された」予測は往々にして外れるのだとしたら?

  • 立田 博司

バックナンバー

2010年6月24日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 前回は、いかに「安く買って、高く売る」のが個人にとってもプロと言われる人たちにとっても難しいのか、だからこそ自分なりの歴史の軸、世界の軸という大局観を持って、世の中に流されずに生きていく「人生の相場観」の大切さを述べました。今回は、資産運用の基本的な姿勢について考えを深めつつ、私なりの大局観を披露していきます。

 近頃、しっかりと「長期投資」をすれば資産形成ができるという意見が増えてきているように感じます。そして、「日本株なんか20年も下がっているのだから長期投資したって駄目じゃないのか」という反論に対しては、「新興国を含めた海外の株式や債券に分散して投資を長期的に行なえばいいのだ」と答えているようです。本当なのでしょうか?

 「投機」ではなくて「長期投資」をするべきだというのは、確かにうなずけます。株式やインデックスあるいは投資信託にしても、短期的にドタバタと買ったり売ったりしても、よほどの天才でもない限り、儲かり続けることが難しいのは自明の理です。

資本主義のためにお金は預けない

 しかも株式投資の役割は、事業会社に優良な長期資金を供給することによって事業・会社・産業ひいては日本の経済発展に寄与するという資本主義の基本的な考え方に根ざしている、たいへん重要なものです。皆さんもご存じの通り、事業というのは一朝一夕でなるものではなく、いくら急いだところで四半期という短期間で何かが成し遂げられるわけではありません。

 それにもかかわらず、投資するお金が短期の投機資金であれば、事業も目先の利益ばかりを追わざるを得なくなり、長期的には投機によって逆に事業や会社が本来あるべき姿から乖離してしまうという、本末転倒な事態にもなりかねません。こうした投機が、2000年代半ばの行き過ぎた株主資本主義を生んでしまったのです。この意味で私は、事業の成長と時間軸を同じくする長期の投資が本来あるべき姿であると思いますし、投機はマネーゲームでしかないと考えています。

 だからといって、投資信託の顧客が資本主義のためにお金を預けるのか。それは少々違うと思います。もちろん、自分のお金を投資信託に預けることによって、巡り巡って社会貢献につながるということを喜ばない顧客はいないでしょう。でもほとんどの顧客の本音のニーズは、苦労をして得たお金を少しでも増やしたいという切実なものではないでしょうか。そうだとすれば、「お金が増えるし、しかも社会貢献にも資する」というならともかく、よほど余裕がある金持ちかボランティアでもない限り、「増えるか減るか分からないけれど、社会貢献になるのだから投資をしましょう」という長期投資では受け入れられないだろうと思います。

 では、どのように長期投資をすれば、資産を継続的に増やし続けることができるのでしょうか? 長期の国際分散投資を勧める多くの方々は、「過去の長期的な統計を見ると良好な結果が出ているから、今後もそうなるであろう」と言っているように聞こえます。確かに過去100年にもわたる株式と債券の国際分散投資の歴史では、それなりの結果が出ています。特にこの30年間は、日本株が下がり続けたものの海外株(しかもこの10年間は新興国株式も)がしっかりと上がりましたし、金利は下がり続け(債券は上がり続け)ましたから、まさに「国際分散投資、万歳!」という結果になったわけです(長期国際分散投資に関する詳細な分析は、『ウォール街のランダム・ウォーカー』[バートン・マルキール著、日本経済新聞出版社]という本に詳しいので参照いただきたいと思います)。

長期投資に潜む2つの落とし穴

 私は、この「長期投資だから資産形成できる」という議論には2つの落とし穴があると考えています。先ほどのマルキールはその本の中で、米国の第2次世界大戦後を大きく3つの時期に分けています。簡単にまとめると、戦後の高成長で株式が大きく上がった「安寧の時代」(1946~1968年)、その反動と高インフレで株式も債券も物価上昇に負けて散々だった「受難の時代」(1968~1981年)、そして最悪から立ち直ってインフレなき経済繁栄を背景に株式も債券も大きく上昇した「豊穣の時代」(1982~2000年)になります。

 これを通算してみると、結果としては長期投資によって大きなリターンが得られたという過去の分析です。でもそう言ってしまうと日本においても、株式がこれまで20年間下がったとはいえ、戦後から通算してみれば大きな上昇を享受できたことになります。

 これが1つめの落とし穴なのですが、確かにかなりの長期間を取れば長期投資は報われるのですが、私たちの投資期間は若い頃から頑張ったとしても20~30年くらいと想定するのが精一杯ではないでしょうか?(それでも長い! と怒られそうですが)。

 しかも人生の中には、収入があって資産を形成する時期と、収入がなくなって資産を食い潰す時期とがあります。日本の株式で見て、戦後の高度成長期=株式が長期に上昇した時期に、タイミングよく資産形成期を迎えた世代はいいのですが、1980年代のバブルのピークに資産形成期を迎えた世代は、それ以降長期投資をしても報われなかった不幸な世代になってしまうのです。これは国際分散投資だとしても同様で、世の中の流れと自分の人生のタイミングが合っているかどうかという「人生の相場観」をしっかりと持たなければ、いくら長期投資といっても、うまく資産形成につながらない可能性があります。

コメント1

「あなたはなぜ投資で損しかしないのか」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長