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「信頼」を見失った金融機関は頼りにできない

顧客満足の対価としての利益が存立基盤のはず

  • 立田 博司

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2010年7月1日(木)

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 前回は、長期投資のあり方から始めて、長期投資に必要不可欠な将来予測、大局観について述べました。今回は、私たちが投資をする時にお金を預ける金融機関のあり方について、世界金融危機も含めて歴史的・世界的な視野で考えてみることによって、投資で損をしない「あるべき金融」の姿を描いてみたいと思います。

 リーマンショックを契機とした世界的な金融危機は、世界中の政府と中央銀行が問題を肩代わりしたことによって一時的に収束したかに見えましたが、ここに来て様々な問題が噴き出してきています。ギリシャに端を発したユーロの問題、世界の国々の財政赤字問題、経済危機から約1年を経て循環的な景気回復に息切れが見え始めた米国経済などです。いずれもこの30年間に蓄積されて世界金融危機の元凶となった様々な根本的な不均衡が、いまだに解決されていないことが背景にある証左です。

 また米国の公聴会には、ゴールドマン・サックスをはじめとした金融機関やトヨタ自動車、原油流出で渦中の英石油大手BPなどが呼ばれて、(政治家のショーという側面があるとしても)厳しく追及されています。この30年間、様々な規制が緩和され自由化が進む中で、企業は優遇されて基本的に利益を追い求め過ぎて、家計や社会へのバランスを失してきました。これに対して、リーマンショック以降は大きく流れが変わり、国民=国が企業に対する規制をより強化して、企業に本来あるべき社会的責任を果たすように強く求め始めたことを意味します。

 そんな企業の中でも、特に欧米の金融機関はこの30年間に規制緩和・自由化の恩恵を受けて、実物資産の成長をはるかに上回る金融資産の成長を助長し、前回指摘した世界の過剰流動性、そしてリーマンショックを引き起こしてしまったのです。どうしてこのようなことが起こってしまったのでしょうか?

「顧客のため」から「自分のため」に変容した

 実はこの30年間の世界の金融業界には、持続的な改善はあっても、破壊的なイノベーションはなかったといっても過言ではありません。多くの金融機関が相互に参入したことも手伝って、多くは差別化できない汎用的な商品・サービスになり、伝統的な商業銀行のビジネスはあまり儲からなくなってきたので、利益の成長が難しくなりました。そこで商業銀行は、顧客に対してより付加価値があるサービスを提供しようと考えて、企業のニーズ全般をサポートして手数料をもらう投資銀行業務に力を入れるようになりました。

 ここまではいいのですが、金融機関はさらに利益を上げるために、自分の資金(あるいはそれに借り入れまで加えてレバレッジをかけて)を様々な分野に投資して儲ける自己勘定取引というリスクが高い取引へと、どんどん傾倒していったのです。

 その際に生み出された道具が、派生商品(デリバティブ)や金融危機で一躍脚光を浴びた証券化商品です。こうした商品は誰のために考えられたのでしょうか? 実は顧客のためというよりも、金融機関自身の利益を極大化しリスクを「ほかに」転嫁するための道具に過ぎないのです。「ほかに」というのは、派生商品であればほかの競合者に、証券化商品であれば幅広い顧客に当たります。このようにしてみると、米国の金融機関は利益を拡大し続けるために、時代とともにリスクが高い業務にシフトし、しかもその過程で、顧客のためのサービスから自分が儲けるための機関に成り下がってしまったわけです。

 利益を生むためにリスクを拡大すると、今度はリスクを管理する必要が出てきます。こうしたニーズからこの30年間で発達してきたものに、金融工学があります。詳しいことはさておき、金融工学の発達によって、統計学でいう正規分布に従っているような通常の「計算できるリスク」については、派生商品によって管理ができることが分かってきました。

 ところがあろうことか、この金融工学でノーベル賞をもらった学者が設立した(理論的には正しかったはずの)LTCMというヘッジファンドが、1997年のアジア危機の時に破綻してしまったのです。この事件によって、「計算できるリスク」には含まれていない「突発的な不確実性」については、金融工学でリスク管理ができないことが明らかになったのです。

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