(【第5回】から読む)
前回お話ししたように、日本の景気は2009年3月が谷でした。そうなると、もう1年以上景気が良い状態が続いていることになります。しかし、とても景気が良いとは思えないと言う人がたくさんいらっしゃると思います。今回はこの問題を考えてみたいと思います。
なぜ景気回復の実感が得られないのか
これは実感なき景気拡大といわれることです。前回、2002年から2007年まで戦後最長の景気拡大だったと言いましたが、この時も同じような議論がありました。これにはいろいろな理由があります。
1つは、経済指標と実感が違うということがあります。景気が良い時は、谷から山に向かう時だと定義されています。これが何カ月か続くのが景気拡大期間です。景気は、レベルで見るか、あるいは方向で見るのかによって違いがあるのです。
2009年3月に戦後最大の落ち込みを示した後、現在は少し回復したぐらいです。レベルは非常に低い。企業の売り上げは低いし、失業率は高いし、賃金は低いという状態です。だから、方向は上向きなので景気は良いという説明に対して、いや、レベルは低いのだから景気は悪い、という批判が返ってくる。
これはどんな局面でも必ず起きる問題です。反対に、景気の方向は下がっているけれども、レベルは高いという場合もあります。本質的に、景気を方向で見る議論とレベルで見る議論では印象が違ってくる。これが第1の問題です。
もう1つの問題は、我々が見ている指標が全部実質であることからきます。実質というのは、このコラムの【第4回】で説明しましたね。名目は我々が直接見ている数字ですが、物価を割り引いたものを実質と言います。普通は物価は割り引いて考えなければいけないので指標は実質を見ます。ところが、現在は物価がマイナスなので、物価を割り引くと実質の数字が増えるのです。
賃金が去年と横ばいで、賃金上昇率が0の時、物価が2%下がっているから、実質的には賃金は2%上がっていると言われても、もらう金額は同じなので、賃金が上がっているとは誰も思えないでしょう。
しかし、経済の指標の世界では、物価は割り引いて考えるのが正しいとされています。我々は名目でしか経済を見ることはできませんが、専門の世界では物価を割り引いて見るので、ここに経済の見方と実感の乖離が出てしまうのです。
依然として「景気は良くない」と言う人が8割
日本銀行では、全国の満20歳以上の個人4000人を対象に「生活意識に関するアンケート調査」というのを行っています。
この結果を見ると、今年の6月の時点で景気は良いか悪いかを聞くと、悪いと言う人が3割、どちらかといえば悪いと言う人が5割です。1年以上景気は良いとされているのに、まだ8割くらいの人は景気は良くないと言っているわけです。
公共工事の話題がでていますが、いわゆる箱モノがかつては景気対策に有効だったのは確かでその理由は?工事にかかわる業種が広い?末端の職人は収入が増えた分お金を使ってくれるというものがありました。◆しかし最近では規制の煩雑化で大臣認定品等天下り機関の取り分が増えて?の効果がかなり減っり、バブル崩壊時に淘汰されるべきゼネコンを延命したため借金漬けのゼネコンのダンピング合戦が過熱しお金は銀行と元請けがほとんど取ってしまい?の末端の職人にお金がいきづらくなった。◆この構造を直さないと公共工事による景気回復は望めないでしょう。(2010/07/27)