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沈む市場で勝っても、「絶対リターン」にはつながらない

金融工学がもたらした「資産運用のサラリーマン化」という“過ち”

  • 立田 博司

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2010年7月22日(木)

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 前回は、投資信託に関わる様々な会社の中で、まず販売会社の現状と課題、そしておぼろげながらも理想の販売会社について述べてきました。今回は、投資信託のもう1つの重要なプレーヤーである資産運用会社について、その現状と課題を探ってみたいと思います。

顧客より親会社を向きがち

 資産運用会社の役割には、大きく2つあります。まず、投資信託という商品を企画し組成すること、そしてその投資信託を運用することです。まずは、商品企画から考えていきましょう。

 前回示した投資信託の流れ(証券・金融市場⇔資産運用会社(信託銀行)⇔販売会社⇔個人顧客)の中では、資産運用会社は、販売会社の意向や市場動向を考えて、投資信託を企画し組成することになります。投資信託は、個人顧客の資産形成を目的にしていますから、それに適した商品を市場動向も考えたうえで企画するのが本来の姿です。その際に、顧客と日々接して顧客の意向を熟知している販売会社の意向を反映させるのは、決して間違ってはいない考え方です。

 ところが前回述べたように、販売会社の意向は、必ずしも個人顧客にとって本当に適切で資産形成に資するものを販売するというところにはないことも多いのです。しかも資産運用会社にとって、直接の顧客は販売会社なのです。その販売会社の意向を汲むことになると、どうしても本来個人顧客にとっていいものよりも、個人顧客に売りやすいものや高い手数料がもらえるものへ商品の企画が行きがちなのは仕方がないのかもしれません。

 しかも日系の資産運用会社を見てみると、銀行や証券会社、生保・損保などの金融機関の子会社が大半です。資産運用子会社の社長が、定期的に親会社から送られてくることも少なくはありません。こうなると日系の資産運用会社のほとんどは、その顧客であり販売会社でもある親会社の意向に従わざるをえないのです。

 日本で一時期、一世を風靡した外資系の資産運用会社もまた同様に、日本に販売の基盤がないという意味で、日本の大手販売会社の意向に従うしかありません。それだけではなく、外資系運用会社は日系に比べても、より短期の利益を指向する傾向が強いので、短期的に売れて利益が上がるものを販売会社と一緒になって組成する傾向が強いようです。

 外資系の日本法人は本国の親会社の意向や状況次第のところもあり、今般のリーマンショック以降には、あまり儲かっていない日本の資産運用子会社が閉鎖の憂き目にあうことも多々ありました。私自身も、何度も「長期的なコミットメント」という言葉を外国人社長から聞いたことがありましたが、それがいかに短い「長期」なのか、文句を言おうにも本人が会社にいないのですからどうしようもないという思いを強くしました。

 こうして見てくると結局は、販売会社と資産運用会社が一緒になって、短期的・投機的で手数料が高い商品を顧客に販売してきたことが分かってきます。資産運用会社の社員も、このような状況が続くと「自分で難しい市場を相手に長期的にいい商品を」と考えるよりも、販売会社主導に流されてしまう会社員的な思考になってしまうのも仕方がないのかもしれません。本当に資産形成にいいと思われる商品の企画・組成のためには、同じように考えている強力な販売会社がパートナーとして存在しなければ、資産運用会社の思いだけでは実現できないということでしょう。

儲けよりもリスク回避を優先

 それでは、資産運用会社のもう1つの大切な役割である資産の運用についても考えてみましょう。資産の運用については、まだまだ確立された理論はないし、そもそも資産運用にはこれだという解があるわけではないと思っています。従って、資産運用の詳細についてここで語るつもりはありません。それよりも「あなたはなぜ投資で損しかしないのか」という疑問に関係する問題点を中心に述べたいと思います。

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浜田 健一郎 ANA総合研究所 シニアフェロー・前NHK 経営委員長