第1回 あいまいな「自己責任論」で納得していませんか?
第2回 「安く買って、高く売る」だけなのに、心理が邪魔する
第3回 長期投資をする。その前に考えなければいけないこと
第4回 「信頼」を見失った金融機関は頼りにできない
第5回 岐路に立つ社会保障、「長命化リスク」に備えはありますか?
第6回 「旬のお勧め」で投資信託を選んでは資産形成できない
第7回 沈む市場で勝っても、「絶対リターン」にはつながらない
これまで、日本の資産形成市場、特に「貯蓄から投資へ」の流れを加速させることが期待されてきた投資信託市場の現状と課題について考えてきました。今回は、こうした日本の現状を踏まえたうえで、世界でも最も大きな投資信託市場を持つ米国の状況について、勉強してみたいと思います。
米国の投資信託市場は、この30年間で飛躍的に大きくなりました。1985年に約0.5兆ドル(約45兆円)しかなかった投資信託の残高は、2009年末には約11兆ドル(約990兆円)にまで拡大し、その家計金融資産に占める割合も1980年初めの1%台から、直近では株式を上回り20%を越えるほどになりました。
こうした米国投資信託の急速な普及には、30年間にわたって株式・債券市場ともに右上がりの相場であったことが大きな背景としてあるものの、制度的な後押しや金融機関の販売体制の進化があったことも見逃せません。残高が60兆円前後と家計金融資産の約4%に過ぎない日本の投資信託市場にとっては、米国の歴史を理解して、日本でも取り入れられることは大いに参考にして「貯蓄から投資へ」の流れを進めていく必要があると思います。
確定拠出型年金を支える投資信託
それではまず、制度面について見ていきましょう。米国の投資信託普及に大きな影響を与えた制度に、確定拠出型年金制度が挙げられます。1950年代以降の米国では経済成長とともに確定給付型の企業年金が大きく増えました。ところが1970年代のオイルショック不況もあって、企業倒産や年金の運用失敗などから年金がもらえなくなることが大きな問題になりました(今の日本の年金問題にも似ているところがあります)。これを受けて1974年に、私的年金制度について包括的に規定したERISA法(従業員退職所得保障法)が制定され、企業を含めた広範囲の受託者に対して、受託者の責任と説明責任を厳しく求め、加入者の年金受給権を確保することを明確にしました。
ERISA法は確定給付型年金の管理を厳しくするとともに、企業年金に入っていない個人や転職者に対して、IRA(個人退職勘定)という個人向けの確定拠出型年金制度を規定しました。さらに1978年には企業の従業員のための確定拠出型年金である401kプランという制度を創設したのです。こうした動きによって、確定給付型年金だけではなく、個人向けと企業従業員向けに確定給付型年金を充実させることになったのです。
IRAも401kも、自ら加入し拠出額や投資対象も自ら決める自助努力型の年金なのですが、税制上の優遇措置があったことに加え、株式・債券市場の上昇も手伝って、両方を併せた確定拠出型年金の残高が大きく伸びて、1990年代後半にはとうとう確定給付型年金の残高をも上回るようになりました。急拡大した確定拠出型年金ですが、その投資対象の中で最も大きな比率を占めるのが、実は投資信託なのです。逆から見れば、投資信託の残高の約2〜3割は確定拠出型年金を経由したものになるのです。このように確定拠出型年金という制度を創出したことが、米国の投資信託の急激な拡大を促したと言えるのです。
日本でも2001年に米国の401kプランにならって、日本版401kとして同様の確定拠出型年金制度が創られました。ところが、認知度の低さや金融リテラシーの低さ、様々な使い勝手の悪さに加えて、何よりも日本で続く超低金利と株式の低迷といった市場環境の影響が大きく、期待ほどの拡大を見せていないのが現状のようです。ただ国や企業が私たちの老後の面倒をこれまでほどには見てくれなくなるのであれば、市場環境の好転とともに日本でも普及が進むのではないかと考えています。
間接販売から直接販売へ、そして・・・
市場の上昇や確定拠出型年金制度の後押しとともに、米国投資信託市場の拡大に大きく貢献したのが、金融機関の販売体制の進化だと思います。その中でも特に、新しい独立系証券会社の台頭とそれに伴って増えてきた独立系の証券営業チャネルに焦点を当てるとともに、顧客ニーズの変化に伴って販売機能そのものに本質的な変化が起こってきていることにも注目したいと思います。
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