「日本経済のゆくえ」

2030年、日本の経済成長はストップする

【第8回】3つの経済成長モデルで人口減少、高齢化の影響を考える(2)

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2010年8月6日(金)

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 前回、ソローモデル、AKモデル、2部門モデルという3つの経済成長モデルのお話をさせていただきました。今回は、これらのモデルで考えた時に、人口減少、高齢化を迎える日本の経済成長はどうなっていくのかを考えてみたいと思います。

 まず、ソローモデルです。人口減少は、定常状態の一人当たり資本ストックが増えることになり、一人当たりの所得を改善します。定常状態に入れば、一人当たりの成長率には影響しません。従って、ソローモデルを前提にすれば、貯蓄率に変化がなければ人口減少もそれほど悪いことばかりではないということが言えます。

 また、AKモデルを前提とすると、成長率にも貯蓄率の影響がかなり出てきます。あとで詳しく話しますが、高齢化で貯蓄率が下がると一人当たりの成長率も低くなります。ソローモデルでも貯蓄率の話は実は深刻です。貯蓄が多ければ多いほど資本ストックの量は増えると言いました。従って、貯蓄率が下がっていく局面に入ると、1人頭の豊かさ、すなわち資本ストックの量は少しずつ下がっていき、減価償却の分を維持できなくなってくるからです。生活水準も下がってくることになります。

 3つめの2部門モデルでは、人口が減ると研究開発に回せる人材もいなくなってくるので、技術が進歩する速度も下がっていき、成長率は低くなっていきます。

 このように、ソローモデルを前提とすると、人口減少局面に必ずしも否定的になる必要はないものの、AKモデルや2部門モデルなどの内生的成長論に従うと、人口減少局面は、物的資本の生産性や技術進歩に影響が出て、経済的豊かさを一人当たりでみても引き下げる方向で働く恐れがあると言えます。

 人口減少局面における技術進歩面での対策としては、技術進歩を狭く解釈しないということしかないと考えています。考えてみると、今、我々が享受している科学技術のレベルというのは日本人だけが作り上げたものではありません。欧州や米国で開発され、研究されたものを吸収して初めて成り立っています。

 日本独自の科学技術開発も重要ですが、世界各国で発生する様々な技術革新を遅滞なく吸収できる体制作り、すなわちグローバル化への積極的な対応が、今後の長期的な成長には大事だと思います。

人口減少と高齢化は経済的には良い影響はない

 では、高齢化という人口構成の変化は経済成長にどのような影響を与えるでしょうか。これについては、「世代重複モデル」が様々な知見を与えてくれます。

 このモデルは、人々の所得がライフステージに応じて一定のパターンに従って変化すると仮定し、働ける時期に稼いで貯蓄し、引退後は貯金の元利で消費生活を支えると仮定した場合、どのように経済社会が動くかを分析します。生産にかかわる仮定は、基本的にはソローモデルとまったく同じです。

 世代重複モデルでも、人口の変化速度が安定すると、ソローモデルと同様、定常状態、すなわち資本ストックが上限に達するという結論は同じです。長期的に見ると固定資本減耗、資本が減っていくのに貯蓄が追いつかなくなります。

 一方、人口構成が変化する時、様々な貯蓄や消費の波ができます。人口増加局面では、高齢世代は、若年世代より少ないため、金利などの点でボーナスが発生し、より多くを消費できます。このため若年世代の時の貯蓄率も高いものとなります。逆に、人口減少・高齢化が進む局面に入ると、貯蓄から得られる金利は低下し、若年世代の時の貯蓄率も低下してしまいます。

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著者プロフィール

桑原 進(くわはら・すすむ)

元政策研究大学院大学准教授(現内閣府経済社会総合研究所主任研究官)。産業カウンセラー。1989年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。99年在チェコ日本国大使館一等書記官。内閣府、連合総合生活開発研究所などを経て2007年に政策研究大学院大学。2010年8月より現職。著書に『経済指標を読む技術―統計データから日本経済の実態がわかる』(共著)、『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』(共著)、『政権交代の経済学』(共著)。



このコラムについて

日本経済のゆくえ

経済学という“道具”で世の中を見ると、それまでとは違った視点で物事を考えられるようになるといいます。どうやら、経済学は役に立つ学問のようですが、これまで敬遠していた人、あるいは、ゼニカネのことばかりで物事を考えるのはいかがなものか、とお考えの方も多いのではないでしょうか。このコラムは、これまで経済を本格的に勉強したことのない人に向けて、難しい数式は抜きに、経済学のイロハから、現実の経済政策や日本経済の諸問題について教えていただくオンライン版の“市民大学”です。三鷹市が開催する市民大学総合コースで2010年5月から始まった講義をベースに構成しました。

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