「日本経済のゆくえ」

日銀が国債を買えば問題は解決する?

【第10回】財政の仕組みと財政赤字の考え方の基本を学ぶ(2)

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2010年8月27日(金)

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 前回は、財政の基本的な仕組みと、財政の持続可能性について債務動学の考え方を示してお話しました。

 財政赤字について考える場合、国の場合は国がずっと続くという前提で財政が持続するかを判断します。借金を全部を支払い切れるかどうかではなく、所得に対して安定するかどうかで見ることになる。これが債務動学の考え方でした。

 今回は、日本の公債残高がどれくらいかのデータを見るところから始めましょう。

 日本の公債残高は、2011年の段階で名目GDP比で200%にいきそうです。今、政府は2014年で180%にしていきますと言っています。このグラフは少し古いデータです。また、対象とする財政赤字の範囲が微妙に違います。OECDが推計したもので日本は少し過剰推計になっている感じになります。ただ、それにしても諸外国と比べて圧倒的に高い水準にきてしまっています。

 よく日本の政府には資産があるから大丈夫という意見が聞かれますので、ネットで見たのが図表4です。日本の資産を資産分キャンセルアウトしてみたものです。

 それでもイタリアを抜いて、諸先進国の中では最悪の状態に陥っているのが分かります。もう財政再建は急務の状態になっているのです。

最悪、政府が貨幣を発行して支払ってしまえばいいが…

 では、破綻すると何が起こるのでしょう。政府が債務の不履行を起こす。その後は政府がお金を貸してくださいといっても誰も貸してくれなくなります。当然ですね。すると、政府の経済活動が全面的にストップします。金利は払えません、それから地方交付税は当然払えません。教育の費用負担もできません、年金も払えません――。こういうことになります。

 とはいえ、日本の累積債務の問題は、諸外国のケースや日本の過去のケースと比べると性質が異なっています。今のところ日本国債の保有者がほとんど日本人であり、政府に対外資産が相当存在するからです。従って、名目上、政府自身が債務不履行に陥るリスクは非常に小さいと考えられます。最悪の場合は、政府自身が貨幣を発行して支払ってしまえばいいのです。

 では、日本の財政は破綻しないのでしょうか? 日本においても、名目的にはともかく、実質的な財政破綻は十分発生しえます。名目上政府はお金を返せますが(日銀券の増発もしくは政府貨幣の発行を通じて)、その場合、激しいインフレが発生してしまい、返したお金の価値は大きく減少することになるからです。従って、いずれにせよ人々は国債、もしくは日銀券、政府貨幣を保有しようとは思わなくなり、結局、市中から資金調達できなくなるという問題は十分発生し得るのです。

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著者プロフィール

桑原 進(くわはら・すすむ)

元政策研究大学院大学准教授(現内閣府経済社会総合研究所主任研究官)。産業カウンセラー。1989年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。99年在チェコ日本国大使館一等書記官。内閣府、連合総合生活開発研究所などを経て2007年に政策研究大学院大学。2010年8月より現職。著書に『経済指標を読む技術―統計データから日本経済の実態がわかる』(共著)、『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』(共著)、『政権交代の経済学』(共著)。



このコラムについて

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経済学という“道具”で世の中を見ると、それまでとは違った視点で物事を考えられるようになるといいます。どうやら、経済学は役に立つ学問のようですが、これまで敬遠していた人、あるいは、ゼニカネのことばかりで物事を考えるのはいかがなものか、とお考えの方も多いのではないでしょうか。このコラムは、これまで経済を本格的に勉強したことのない人に向けて、難しい数式は抜きに、経済学のイロハから、現実の経済政策や日本経済の諸問題について教えていただくオンライン版の“市民大学”です。三鷹市が開催する市民大学総合コースで2010年5月から始まった講義をベースに構成しました。

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