前回(第3回)、「誰かの負債は、誰かの資産。誰かの資産は、誰かの負債」「『国=政府』ではない」という2つの原則をご紹介した。原則というよりも、「常識」と呼ぶべきであるような気もするが。
連載第4回は、3つ目の原則をご紹介することから始めたい。これまた、覆すことが恐ろしく困難(不可能ではない)な原則である。
◆原則3:お金は使っても、消えない
我々個人レベルでは、買い物などをした際に「お金が消えてしまった」感覚を覚えるかもしれない。しかし、現実には、お金は消えたわけでも何でもない。商店で買い物をした場合、単に自分の財布から商店のレジへと、お金が「移った」だけの話である。
バランスシートで言えば、「我々個人の資産」に計上されていたお金が、「商店の資産」へ移るだけというわけだ。消費だろうが、投資だろうが、お金は使っても消えない。どうしてもお金を消し去りたい場合は、それこそ河原で札束を燃やすくらいしか方法がない。
日本の財政破綻を唱える人の中に、
「今は、確かに家計の金融資産が充分なのかもしれない。しかし、近い将来、高齢者が貯蓄を取り崩し始めると、国債を買うお金がなくなり破綻する!」
などの説を唱える人がいる。正直に告白しよう。筆者は初めてこの「珍説」を見かけたときに、腹を抱えて大笑いしてしまった。
改めて、前回掲載した「図3-1 日本の国家のバランスシート」を見てほしい。借方の下から2番目に「家計の資産 1452.8兆円」が計上されている。この家計の資産が取り崩されると、国債を買うお金がなくなってしまうと、先の珍説は語っているわけだ。
過剰貯蓄が拡大する限り、銀行は国債を買い続ける
例えば、ある年に、日本の高齢者が突然消費に目覚め、貯蓄を50兆円取り崩したと想像してみて欲しい。家計の資産は、1452.8兆円から1402.8兆円へと減少するわけだ。
しかし、このとき高齢者が取り崩し、消費に使ったお金は「この世から消えてしまった」のであろうか。もちろん、そんなことはない。取り崩されたお金は、50兆円の消費として日本経済のフロー(GDPのこと)の個人消費(民間最終消費支出)をチャリ〜ンと増大させ、そのまま非金融法人企業(以下、一般企業)の資産として計上されるだけの話である。
すなわち、図3-1で言えば一般企業の資産が、847.6兆円から897.6兆円へと増えるわけだ。「国家のバランスシート」全体を見た場合、家計が50兆円の貯蓄を取り崩し、消費に使おうとも、総資産額は増えも減りもしない。
別の書き方をすると、家計の銀行口座から、一般企業の銀行口座にお金が移るだけの話に過ぎないのである。国債を購入している銀行が、
「これは家計の預金だから、国債を買う。これは一般企業のお金だから、国債を買わない」
などと、区別しているとでも言うのだろうか。もちろん、ありえない。家計の口座から企業の口座にお金が移ろうとも、運用難に悩むマネーすなわち過剰貯蓄が拡大している限り、銀行は普通に国債を買い続けるだろう。
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