「三橋貴明 暴論?あえて問う! 国債増発こそ日本を救う」

デフレ環境下でインフレ対策を叫ぶ

「規制緩和しろ! 生産性を向上しろ! ムダを削れ!」すべて誤り

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2010年8月24日(火)

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 前回(第3回)、「誰かの負債は、誰かの資産。誰かの資産は、誰かの負債」「『国=政府』ではない」という2つの原則をご紹介した。原則というよりも、「常識」と呼ぶべきであるような気もするが。

 連載第4回は、3つ目の原則をご紹介することから始めたい。これまた、覆すことが恐ろしく困難(不可能ではない)な原則である。

◆原則3:お金は使っても、消えない

 我々個人レベルでは、買い物などをした際に「お金が消えてしまった」感覚を覚えるかもしれない。しかし、現実には、お金は消えたわけでも何でもない。商店で買い物をした場合、単に自分の財布から商店のレジへと、お金が「移った」だけの話である。

 バランスシートで言えば、「我々個人の資産」に計上されていたお金が、「商店の資産」へ移るだけというわけだ。消費だろうが、投資だろうが、お金は使っても消えない。どうしてもお金を消し去りたい場合は、それこそ河原で札束を燃やすくらいしか方法がない。

 日本の財政破綻を唱える人の中に、

「今は、確かに家計の金融資産が充分なのかもしれない。しかし、近い将来、高齢者が貯蓄を取り崩し始めると、国債を買うお金がなくなり破綻する!」

 などの説を唱える人がいる。正直に告白しよう。筆者は初めてこの「珍説」を見かけたときに、腹を抱えて大笑いしてしまった。

 改めて、前回掲載した「図3-1 日本の国家のバランスシート」を見てほしい。借方の下から2番目に「家計の資産 1452.8兆円」が計上されている。この家計の資産が取り崩されると、国債を買うお金がなくなってしまうと、先の珍説は語っているわけだ。

過剰貯蓄が拡大する限り、銀行は国債を買い続ける

 例えば、ある年に、日本の高齢者が突然消費に目覚め、貯蓄を50兆円取り崩したと想像してみて欲しい。家計の資産は、1452.8兆円から1402.8兆円へと減少するわけだ。

 しかし、このとき高齢者が取り崩し、消費に使ったお金は「この世から消えてしまった」のであろうか。もちろん、そんなことはない。取り崩されたお金は、50兆円の消費として日本経済のフロー(GDPのこと)の個人消費(民間最終消費支出)をチャリ〜ンと増大させ、そのまま非金融法人企業(以下、一般企業)の資産として計上されるだけの話である。

 すなわち、図3-1で言えば一般企業の資産が、847.6兆円から897.6兆円へと増えるわけだ。「国家のバランスシート」全体を見た場合、家計が50兆円の貯蓄を取り崩し、消費に使おうとも、総資産額は増えも減りもしない。

 別の書き方をすると、家計の銀行口座から、一般企業の銀行口座にお金が移るだけの話に過ぎないのである。国債を購入している銀行が、

「これは家計の預金だから、国債を買う。これは一般企業のお金だから、国債を買わない」

 などと、区別しているとでも言うのだろうか。もちろん、ありえない。家計の口座から企業の口座にお金が移ろうとも、運用難に悩むマネーすなわち過剰貯蓄が拡大している限り、銀行は普通に国債を買い続けるだろう。

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著者プロフィール

三橋 貴明(みつはし・たかあき)

三橋 貴明作家、経済評論家、中小企業診断士
1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業ノーテル、NEC、日本IBMなどでの勤務を経て2008年に中小企業診断士として独立、三橋貴明診断士事務所を設立した。現在は、経済評論家、作家としても活躍中。2007年、インターネットの公開データを詳細に分析し、韓国経済の脆弱な実態を暴く。これが反響を呼んで『本当はヤバい!韓国経済』(彩図社)として書籍化され、ベストセラーとなった。既存の言論人とは一線を画する形で論壇デビューを果たした異色の経済評論家。ブログ「新世紀のビッグブラザーへ」の1日のアクセスユーザー数は4万人を超え、推定ユーザ数は12万人に達している。2010年参議院選挙の全国比例区に自由民主党公認で立候補したが落選した。『日本の未来、ほんとは明るい!』(ワック)、『いつまでも経済がわからない日本人−「借金大国」というウソに騙されるな−』(徳間書店)など著書多数。



このコラムについて

三橋貴明 暴論?あえて問う! 国債増発こそ日本を救う

 日本がギリシャの二の舞になる? 冗談じゃない。そんなのは日本経済の構造を正確に把握していない人たちが言っていることだ。日本の真の問題とは財政赤字なんかではなく、将来への成長の道筋が見えないことである。そして、日本経済を再浮上させるのはこれまでの“常識”をうち破る成長戦略しかない。そのための国債ならばどんどん増発すればいい。そのプレッシャーを補って余りある底力が日本経済にはある。最も恐れるべきは、見かけの財政赤字に惑わされてダイナミックな政策を打ち出せなくなることだ。

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