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日本がたちまち元気になる経済政策はあるか

政権交代1年後の経済学

2010年9月27日(月)

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 政権交代が実現し、2009年9月に民主党政権が発足して約1年が経過した。私は、研究仲間たちと一緒に、この日経ビジネスオンラインで「民主党の経済政策を点検する」という趣旨でコラムを連載し、さらにそれをまとめて『政権交代の経済学』(2010年6月)を出版した。

 こうした中で、私はほぼ一貫して民主党の経済政策を批判してきた。このため、私に「民主党批判者」というレッテルを張る人もいる。しかし、私は「民主党」を批判しているのではない。「民主党が打ち出してきた経済政策」を評価してきただけなのだ。その結果、批判ばかりが目立ったのだとすれば、それは、民主党が批判されるような政策を次々に打ち出してきたためである。

 しかし、民主党の経済政策は時間が経つにつれて次第に変化している。そこで本稿では、政権交代後1年間の民主党政権の経済政策の歩みを振り返ってみたい。

 以下では、便宜上、「政権発足直後の時期」「2009年末から鳩山内閣退陣までの時期」「菅内閣発足から現時点までの時期」の3つに分けて考えることにする。

政権発足直後 経済無策の時代

 2009年9月に鳩山内閣が発足した。私は、発足直後の鳩山内閣には、まともな経済政策は「なかった」と考えている。経済政策は、日本経済がどのような状況に置かれているのかを正確に認識し、そこから現れてくる短期的、長期的な諸問題に、正しい処方箋で臨機応変に対応していくことが求められる。私が「なかった」と言うのは、そういう意味での経済政策が「なかった」ということだ。

 経済政策がなかったのは、マニフェストの実施が何よりも優先されたからだ。発足直後の鳩山内閣は、とにかくマニフェスト実施に忙しく、前述のような意味での「経済政策はどうあるべきか」という議論は全く行われなかったのだ。

 特に、長期的な成長をどう考えるかについては、その方針が全く示されていなかった。この政権が中長期的にどの程度の経済成長を目指し、そのためにどんな政策を取るのかが全く不明だったのだ。「成長戦略がない」という批判が多く出されたのはこのためだ。

 もちろん、当時の鳩山政権も経済成長を無視していたわけではない。2009年10月の鳩山総理の所信表明演説では、経済成長について次のように述べられている。

 「子ども手当の創設、ガソリン税の暫定税率の廃止、さらには高速道路の原則無料化など、家計を直接応援することによって、(中略)個人消費の拡大を目指してまいります」

 つまりマニフェストで約束した政策を実施していけば、家計に余裕が生まれ、消費が拡大して内需中心の成長が実現するというわけだ。

 しかし、これは「後付け」の議論だったと思う。つまり、内需中心の成長を実現するための戦略を考えたら子ども手当の支給などに行き着いたのではなく、まずはマニフェストの実現が至上命題であり、それを実行すれば結果的に内需中心の成長が実現するだろうという理屈を後から考えたのだと思われる。

 このマニフェスト至上主義は、財源面から大きな制約に直面することになる。マニフェストでは「無駄の削減」によってマニフェスト実現のための財源を捻出することになっていたのだが、単なる無駄の削減ではとても十分な財源は出てこないことが明らかになってきたからだ。

 こうして、「マニフェストの実行という制約からいかに逃れるか」「成長戦略をいかに打ち立てていくか」が新政権の大きな課題となっていった。

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「日本がたちまち元気になる経済政策はあるか」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師