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「最低賃金800円」でワーキングプアは解消されるか

【第15回】日本型雇用慣行の綻びと雇用の“規制”を考える(2)

  • 澤井 景子

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2010年10月8日(金)

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 今回は、雇用の規制強化の動きについて考えたいと思います。

 民主党が2009年のマニフェストで掲げているのは、非典型雇用問題の解決といえます。例えば、「月額10万円の手当付き職業訓練制度における求職支援」があります。今、問題になっているのは、前回お話したように、非典型雇用の人が、職業能力を向上させる機会が乏しいことです。自民党政権の時も、暫定的には同じような制度はありました。

 失業した場合、能力を高めてスキルアップし、条件のより良い職に就きたいと思うでしょう。しかし、職業訓練を受けている期間、収入がなければ生活できません。このため、職業訓練中に手当を付けて生活を支えながら、能力を向上させるための制度です。この制度を恒久化しようという話です。

 「雇用保険の全ての労働者への適用」についても自民党政権時代から始まっていたものです。従来は、いわゆる雇用保険は雇用見込み期間、すなわち働いている期間が1年以上ないと適用されませんでした。非典型雇用の人の場合は1年も働かない見込みのことが多いですから、失業しても、失業手当はもらえず、何も収入がなくなってしまう場合があります。

 麻生政権で雇用見込み期間は半年に短縮されましたが、これをさらに短縮し、2010年4月から、雇用見込み期間が31日、約1カ月に短縮されました。

 また、「製造派遣労働の原則禁止など、派遣労働者の安定」があります。これは、実際に派遣法改正案が国会に提出されたのですが、まだ成立していません。

 そして「最低賃金の引き上げ」と「ワークライフバランスと均衡待遇の実現」です。これらの政策については、新成長戦略および雇用戦略対話で推進していくことが盛り込まれました。

最低賃金の引き上げと派遣労働の禁止の効果は?

 雇用保険の全ての労働者への適用、派遣労働の禁止、最低賃金の引き上げなどは、非典型雇用の人の労働条件を上げ、彼らが失業した際の生活を保障するための政策と言えます。

 最低賃金の引き上げや派遣労働の禁止は、政策の手法としてはどちらも規制強化です。規制強化はどんな効果を持つのでしょうか。

 最低賃金の引き上げについては、現在の政権はかなり力を入れています。この最低賃金の引き上げについての雇用戦略対話の資料2に、「2020年までの目標」の設定についてとあり、「目標案としては『できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1000円を目指すこと』が考えられる」とあります。

 ただし、条件として新成長戦略で掲げている「2020年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」を挙げています。

 では、実際の最低賃金はどうなっているでしょう。「最低賃金に関する資料集」の5ページを見てください。「地域別最低賃金と全国加重平均額の推移」が載っています。最低賃金には2種類あります。地域ごとに決まっているものと、業種、産業別賃金という、業種によって少し上乗せして決まっているものがあります。ここでは話を簡単にするために地域別の最低賃金に絞りたいと思います。9月11日の日経新聞の朝刊に全国平均で時給730円と、前年度に比べて17円上がったことが書いてありましたが、2010年度の最低賃金の改定状況については、こちらを見てください。

生活保護の支給額より低い最低賃金は問題

 さて、最新の最低賃金の改定状況を見ると、最も高いのが東京で821円となりました。ただ、沖縄など最低額の地域は2009年度ではまだ629円なので、これを800円にしていくというのは、170円ぐらい上げなければならず、かなり道のりは厳しいと言えるでしょう。ましてや1000円にするとなると、割合として考えたらかなりの賃金アップになります。

 最低賃金の引き上げの背景にあるのは、ワーキングプアの問題です。特に問題視されたのは、生活保護の支給額より最低賃金が低い場合があることです。

 「最低賃金に関する資料集」の6ページに「生活保護と最低賃金の比較」が載っています。生活保護は都道府県によって結構違います。東京は家賃が高いから生活保護の金額も上がっていますので、最低賃金は生活保護支給額より低くなっています。

 働いているのに、生活保護より低い金額の賃金しかもらえないのはあんまりではないか、少なくとも最低賃金の水準を上げた方がいいのではないかということで、最低賃金を上げることになりました。

コメント2件コメント/レビュー

思うんだけど、昔はそれぞれの会社内で賃上げ要求がされ会社を潰さないレベルでの妥協点をそれぞれで探っていた。それに対してデモもストも無く労働組合が形骸化した現在、政府主導での目の粗い制度設計での賃上げを行おうとしている。そりゃ潰れる会社が多数発生するでしょ。スタート位置が根本的に間違ってる気がする。賃金を抑えて利益を上げる。会社の利益は株主のもの。って考えがこの事態の基底じゃないか?やるなら社員へ一定比率の持ち株の義務付けをして給料か配当か何れかのルートからキチンと利益を還元するルートを作るとかの方が良いのでは?労働組合で自社株保有もありと思う。制度化するなら自社株取得への税制優遇(法人を除いて個人限定とした優遇)とかやる方が良い。これならば潰れる会社も無く、会社の体力の範囲内で労働者への利益へ回るでしょ。また、所属する会社が利益を出せるかによって賃金格差が広がるだろうけど、利益を出せない会社の退場を促したり、下請けの淘汰と賃上げが生じたりとかして自然なバランスに戻り健全化すると思う。一律XXによる効果云々とか社会実験は百害あって一利なしでしょ。(2010/10/08)

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思うんだけど、昔はそれぞれの会社内で賃上げ要求がされ会社を潰さないレベルでの妥協点をそれぞれで探っていた。それに対してデモもストも無く労働組合が形骸化した現在、政府主導での目の粗い制度設計での賃上げを行おうとしている。そりゃ潰れる会社が多数発生するでしょ。スタート位置が根本的に間違ってる気がする。賃金を抑えて利益を上げる。会社の利益は株主のもの。って考えがこの事態の基底じゃないか?やるなら社員へ一定比率の持ち株の義務付けをして給料か配当か何れかのルートからキチンと利益を還元するルートを作るとかの方が良いのでは?労働組合で自社株保有もありと思う。制度化するなら自社株取得への税制優遇(法人を除いて個人限定とした優遇)とかやる方が良い。これならば潰れる会社も無く、会社の体力の範囲内で労働者への利益へ回るでしょ。また、所属する会社が利益を出せるかによって賃金格差が広がるだろうけど、利益を出せない会社の退場を促したり、下請けの淘汰と賃上げが生じたりとかして自然なバランスに戻り健全化すると思う。一律XXによる効果云々とか社会実験は百害あって一利なしでしょ。(2010/10/08)

ものすごく単純に言ってしまうと、時給730円でも豊かな生活ができる物価水準(例えばアンパンは今140円ですが、プラザ合意前の4~50円あたりをめどに)までデフレが進まない限りは間違った雇用形態(流動性を犠牲にした囲い込み型雇用)や、賃金制度(後払い制年功型賃金)の解体は進まないでしょうね。もっとも、デフレがそこまで進んだら古い大企業が軒並み潰れていくでしょうね。本質的に企業は労働者から労働力と時間を買ってるのだという意識が無い為に、右肩上がりの経済成長が望めなくなった途端に破綻したとしか言えません。もう少し細かく言えば、企業が買ってたのは時間(年功)だけだったということですね。時給という枠だけでしか考えない限り、雇用情勢は良くならないと思います。ここはいっそ、基本の法人税を0~10%にし、年功給制をとっている企業の法人税を50%にしてしまうしかないでしょう。今後は時間ではなく労働力、すなわち、同一労働=同一賃金を徹底させてほしいものです。尤も、その場合は障碍者にとっては就職活動時には不利になるので法律によるきめ細かい調整は必要ですが。(2010/10/08)

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