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途上国並みのワクチン行政

定期接種化で子供の病気防ぐべき

  • 内藤 眞弓

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2010年10月26日(火)

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 医療費が日本の財政を蝕むとばかりに、医療費を抑え込むための施策がこれまで行われてきました。自己負担割合の増加や高額療養費の上限額のアップ、制限回数を超える治療や長期の入院は保険から外すなど、患者の負担を大きくする制度改革が進んできました。結果として、GDPに対する日本の医療費はOECDの中で22位という最下層グループにいるにもかかわらず、患者の自己負担は突出して高い国となっています。

 医療費を抑えるための施策が、不幸にして患者になってしまった人に重い負担を押し付けるというのでは、社会の安定という視点で考えてもあまり得策とは思えません。一方で、効果が科学的に検証されないまま、また精度管理が十分にされないまま、各自治体ではがんの集団検診に巨費が投じられています。

 医療費を抑えるには病気にならないことが重要だと思うのですが、そのための有効な手段の一つがワクチン接種です。しかし、日本のワクチン行政はほとんど発展途上国並みと言える状況に置かれています。ワクチンで予防可能な疾患(Vaccine Preventable Diseases=VPD)はワクチンで予防するのが世界の潮流ですが、日本はその波に完全に乗り遅れています。その犠牲者は、ワクチンを打っておけばかからなくてすんだ病気にかかり、死亡したり後遺障害を負ったりする子供たちです。

先進国で唯一定期接種しない国に

 たとえば、細菌性髄膜炎は多くの国で過去の病となっていますが、日本では毎年約1000名(推計)がかかっていると言われます。原因の6割強はヒブ(Hibインフルエンザ菌b型)によるものです。欧米で既に定期接種化されていた1998年当時、世界保健機関(WHO)が主にアフリカ等の国々を念頭に、ヒブワクチンの無料接種化を勧告しました。そのためか、現在94カ国で定期接種化されていますが、日本はその勧告を無視し、先進国で唯一、ヒブワクチンを定期接種しない国であり続けています。

 ヒブ以外に細菌性髄膜炎を引き起こすものに肺炎球菌があります。2つを合わせると約9割です。いずれも自然界に存在し、くしゃみなどで感染します。おもな症状は発熱、嘔吐、頭痛ですが、すべてがそろわないことも多く、血液検査でも特徴的な数値は示しません。風邪や胃腸炎と診断されることが多く、早期発見は非常に困難です。約百例の細菌性髄膜炎の子供の発熱早期症状や血液検査所見を調べた医師も、「どんなに慎重に診察しても、発熱後2日以内だと70%は分からず、重症化するまで診断は難しい」と言います。

 たとえ迅速な治療を受けても、ヒブの場合は3~5%、肺炎球菌の場合は10~15%が死亡し、10~20%に脳・神経等に重大な損傷が生じ、重篤な後遺症が残ります。たとえば、水頭症や脳性まひ、けいれん、てんかん、難聴など。傾向としては肺炎球菌のほうが予後が悪いと指摘されています。たとえ後遺症が残らなくても、高校入学時の学力が有意に劣るとの海外のデータもあるようです。

 ヒブワクチンは2007年1月に承認され(米国は1987年)、翌2008年12月に販売開始、7価肺炎球菌ワクチンは2009年10月に承認され(米国は2000年)、翌2010年2月に販売が開始されました。販売は開始されたものの、定期接種化に至っていないため認知度が低く、しかも高額であることから接種はなかなか進みません。

 日本の予防接種には「定期接種」と「任意接種」の2種類が存在しますが、その二つを分ける明確な基準はありません。どういう条件がそろえば定期接種になるか、誰も分からないというのです。

コメント6件コメント/レビュー

下のコメントにもあるので、極端ですがヒブワクチンの接種に年間100億、ヒブで年間1人亡くなると仮定します。自分にかかわりがなければ100億は無駄であり、関係者(ヒブで子供を亡くされた両親や医療関係者)にしてみれば100億は有効であったことになります。両者の視点は絶対に交わることはないので、国が決めて進めるほかありません。筆者が、ファイナンシャルプランナーということならリスクをヘッジする(保険をかける)ことの意味を含めてワクチン行政を取り上げてもらえればよかったと思います。(2010/10/26)

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いただいたコメント

下のコメントにもあるので、極端ですがヒブワクチンの接種に年間100億、ヒブで年間1人亡くなると仮定します。自分にかかわりがなければ100億は無駄であり、関係者(ヒブで子供を亡くされた両親や医療関係者)にしてみれば100億は有効であったことになります。両者の視点は絶対に交わることはないので、国が決めて進めるほかありません。筆者が、ファイナンシャルプランナーということならリスクをヘッジする(保険をかける)ことの意味を含めてワクチン行政を取り上げてもらえればよかったと思います。(2010/10/26)

小児科医です。素晴らしい記事、ありがとうございました。ヒブ、肺炎球菌ワクチンの定期接種化は小児の中耳炎、髄膜炎、肺炎、敗血症を減らします。さらに(肺炎球菌ワクチンは)集団免疫もあるので、成人の肺炎も減らします。ワクチンの費用は、予防しうる病気の治療費より少ないです。つまりみんなに打ったほうが得ということです。重篤な副作用もありません。(2010/10/26)

私たち夫婦は,一年間米国で過ごし,子供を現地の託児所に預けましたが,託児所に入る条件として様々な予防接種を受けたという証明書が必要でした。私たちは日本の出国前にそれを知り,色々な予防接種を受けて行ったの安心でしたが,もし,渡米する予定がなかったら,日本の予防接種は貧弱であることを知らないまま暮らしていたのでしょう。また,日本で不活性ポリオワクチンを接種しない理由が全く分かりません。自分で希望すると受けさせられることも知りませんでした。どうして良いワクチンがあるのに,それを使わず,しかも隠してしまうのでしょうか。理由を知りたいです。(2010/10/26)

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